第8話◆勇者試験(2)・・・改

文字数 5,053文字

「――では、陛下」

「うむ。くれぐれも、頼んだぞ」

しかつめらしい顔でいつも通りの威厳を籠める。
跪拝(きはい)する臣下を残して玉座から立った。
空が白む早朝から始まり、昼直前まで続いた朝の執務が終わりを告げた瞬間である。
その背中に。

「くれぐれも、城下へお忍び――などは、なさいませぬように」

タイミング的にも完璧で、可愛げも何も無い釘が()さった。

(ええい――口やかましさと来たら、まるで(じじい)のようだな! 宰相!!

腹立ちを籠めて一瞥(いちべつ)した先には、何食わぬ雰囲気(ふんいき)でシュヴァルト=グレスケール公爵(68)が(ひざまず)いている。
厚顔無恥を(つらぬ)けるのも、誰が差した釘か判らないようになっているから――と言いたいが、国王にはお見通しだった。
なぜなら、臣下には一人しかいない。
国王を前にして頬が紅潮せぬ者は。言葉が震えない者は。何より、目線を合わせて真っ()ぐに見つめ返してくる者は。だから、解る。
憎々しさを視線に籠めたのも一瞬、尊大な足取りで玉座の間の真上に在る国王の居室に戻った。
ちなみに、当然のように脱走を決行する予定で居たことは秘密である。
そして、グレスケール公爵が代表したものの、苦言が満場一致の(かん)言であることもまた秘密だった。

()自愛下さいますかなあ……?」

誰からとなく(つぶや)かれる。

「さあて。陛下の御心底は陛下だけのものに御座いましょう」

グレスケール公爵に浮かんだ笑みは自嘲(じちょう)的であり、何処(どこ)(なぞ)めいているようにも見えた。



「まったく、可愛げの無い爺だ」

扉が閉まるや否や吐き捨てたが、国王ガルナード=アストアルの口元は笑っていた。

大粒の宝石に黄金の鷹が鎮座する王(しゃく)をベッドに放り、豪奢(ごうしゃ)な真紅のマントは無造作に()ぎ取ってお気に入りの椅子(いす)に被せ、王冠は寝酒のボトルの隣に置いてしまう。
国王というのは中々因果な商売で、慣れが身につくとどうしてか、どうしても気晴らしが手放せなくなる。いっそ、日常用の複製(レプリカ)王冠(ただし、素材は宝石と貴金属である)のように、もう一人の自分を置けたら――などと思ったことはない。国王という身分のまま楽しむのが大事なのだ。あの辣腕(らつわん)の宰相が国王に苦言を突きつけることを、貴重にして非常な楽しみとしているように。

「いい加減、出し抜かれていると気づく者がいても良さそうなものだがな」

苦言を突きつけるとは突き付ける相手の前に立つこと。すなわち、目線を対等にすることである。
王の恩寵(おんちょう)を求めて争うのに、何故それに気づかないのか。
理由は考えるまでも無かった。
不興が(こわ)いのだ。
領主として人民の上に立つ貴族であれば、恐れる。
領民を路頭に迷わせることを。家が()たれることを。
けれど、それは理想的な良識を持ち合わせているから、ではない。
人の上に立つ以外に出来ることが無いから、だ。
貴族の本能というべき根源的な恐怖に負けて、目を()らす。
セレル=アストリア公国の王権は強大である。
国主たる王は最高の英雄であり、最強の武力を持つ武人だ。
その威光に(こうべ)を垂れるという口実に飛びついて、自ら最高の好機を不意にするのだ。
反逆の二文字に問われることなく不遜(ふそん)を成し遂げる、唯一無二の機会を。
そして、そこがあの爺――シュヴァルト=グレスケールの可愛くない部分だ。
もう一歩踏み込んで来るのなら、股肱(ここう)の臣として、持ち前の辣腕を今よりも自在に(ふる)う機会を得られようものを。
娘と自分の距離が縮まらないことを嘆くくせに、彼我(ひが)の距離を巧みに測りながら大貴族の(のり)を離れようとしない。何時(いつ)でも超えられるだろうに、私は安くはありませんぞ? とばかりに腹の立つ笑顔で(たたず)んでいる。
苦言が貴族の総意――内に籠る不満、だと筒抜けにしながら、言質を取らせようとはしないのだ。
苦言の真実が何処(いずこ)に在るにしろ、腑抜けの泣き言に耳を貸す器量は持ち合わせるつもりが無い。大胆不敵な諫言ならば、心の一隅(いちぐう)に留めてもおくが。
迷いの無い足取りでバルコニーのガラス窓を開け放つと。

「――む」

忍び寄る不届き者の気配を(とら)えて、国王は楽し気に微笑(びしょう)した。



待つこと数分。

「はて……? 近頃の(ねずみ)贅沢(ぜいたく)が身についた、ということか?」

「……誰が鼠だ! 面倒臭過ぎなんだよ、曲者返しが!! ――よっ!」

テラスの欄干(らんかん)ににゅっと手が生え、グラディルが現われた。
にやり、と笑いかける。

「久しいな、トラス」

「……朝飯以来だろ。つか、本当(マジ)に国王だったかよ、師匠」

ガルナードはわざとらしくため息をついた。

「弟子に取ったのは父親の方、なんだがな……」

産声を上げた瞬間は知らないが、グラディルに物心がつく頃にはふらりと現れてふらりと消える、妙に品のいい所がある小父さん――家族の一人、として認知されていた。

「うるせえよ。だったら、暇潰しだとしても、武芸の面倒なんて見んな!」

「はっはっは! 師の言動にケチをつけようとは、弟子失格!!

グラディルの足元を蹴りで払い、飛び上がって逃げた所に鉄拳を見舞う。
グラディルは伸びて来る腕を足場にして肩まで駆け、一気に国王の私室に転がり込んだ。

「……ぶねえ! 此処(ここ)、何階だと思ってやがんだよ!!

城内に案内板などつけてないし、生活の場だから考えたこともないが、地上数百メートル程度の高さはあるはずだった。
グラディルの抗議に物騒なものを潜ませた笑顔を返す。

「これでくたばる玉なら弟子に取る甲斐(かい)も無い。仕事はどうした?」

「暇になったから、(かわや)を口実に抜けた」

(……ふむ。てっきり、裏切者! だのなんだの、()ねられるかと思ったが――)

心底(しんてい)はため息に紛れ込ませた。

「――で。正面から突っ込んだそうだな?」

「……まあ、初戦だったしな。派手に景気づけしよう! ぐらいのつもりだったよ」

うんざりさ加減からすると、誰も彼もが同じ事を話題にする! といったあたりか。
ガルナードは丁度いいと思うことにした。

「それで、返り討ちを食らった――か」

途端に、グラディルがむくれる。

「何なんだよ、あれ!! 聞けば、俺だけだっていうし!」

「世間知らずの、利かん坊に据える(きゅう)だ。丁度良かっただろう」

「……あんたの仕業(しわざ)なんだな? 師匠!」

(ほうほう。魔物相手だったから、負けた――と?)

「知らんぞ、生憎(あいにく)とな」

白い目でロックオンされているのが、妙に加虐(かぎゃく)心を刺激する。
突き放した所で問題は無いが、()えてひけらかしてみることにした。

「……まあ、灸と(ためし)を兼ねたいと相談が」

「それ、黒幕って言うんじゃねえのか!?

詰めよって来るグラディルに笑顔を向ける。

「はっはっは。……だったら、どうする?」

一転して真顔になると、グラディルは嫌そうに顔を(ゆが)めた。

「別に……どうもしねえよ。どうせ、どうにかされてくんねえだろ?」

(――む! 無謀を良しとする訳ではないが……、覇気に欠けるのはなあ)

ガルナードはため息を形にするしかなかった。

「……ま、いずれにしろ今のお前じゃ受からんな」

報告を受け取っただけで、観戦していたわけではない。それでも、不適格だと思った。「勇敢」の二文字からは――。
そして、やはりと言おうか、面白くないらしい。子供っぽい不満がグラディル目に宿った。

「何でだよ!」

(おい――此処で糞餓鬼丸出しになるのか……! こりゃ、本気で落第判定を食らわすしかないか――?)

胸中を覗かせぬよう、大人気(おとなげ)ないくらいの真剣さを剥き出しにした。

「答えられるのか? 勇者とは、勇気ある者の意。しからば、その本質たる勇気とは何ぞ? 応えられぬならば――」

何を言い出すんだ、この親父! という目を向けてくれてから。

「……死ぬわけねえだろ」

と、(心理的に)そっぽを向いた。
まさか、命を賭けて導き出さねばならない答えだと、露とも思っていないとは。

(……よくある話、とはいえ……。落第だ。たとえ、(いくさ)の試を最優秀で通過していたとしてもな)

「最低限、答えられるようにしておけ」

「あっそ」

本当は教えてやりたかった。
勇者試験の主催は公国。国王が勇者試験の監督、試験、裁定のどれを務めても、問題は何も無い、と。
加えて、戦の試の直前に聞かされているはずだった。
『ギブアップしても成績には影響しない!! ただし、加算も無い』
と。
戦の試が勝ち抜けシステムを採用しているとは言っていないのだ。
『勇者』試験である以上、最重視されるのは「勇敢である」こと。それを忘れられては困る。
今日、軍学校の教官を通して通知したのは初戦の戦闘経過と結果。
死亡による脱落を許すつもりは無いので、特例と知っていて救護を手配をした。
二戦目以降の参加を禁止したのは、カウンターを(もら)ってK.O.された無様に対する罰。
試そのものに落第したとは、通知していないのだ。
……まあ、灸を据える意味もあったので、脱落の二文字を使いはしたが……。

(まあ、これで最後という訳でもないし、頼りに出来る監督……どちらかと言えば遣い人(テイマー)の方、が居るしな。口出しする必要はあるまい)

自分の中の結論をため息に変えると、そっぽを向いたままの不肖の弟子の首根っこを掴んだ。

「用事はそれだけか?」

試験が終わっていなかったことにも気づいてない不甲斐(ふがい)なさに対して怒りが(あふ)れたが、幸か不幸か、グラディルには通じなかった。
ガルナードの手首を払おうと、手首を(つか)んで来る。

「――む。あんたから切り出すべき話が有ると思うんだけど!」

「……(むむ! この握力は?! ……ここまで出来て、初戦敗退――ふむ。戦いの機微を読む感覚が(にぶ)い、ということか)……」

(しか)めは内心に留めたが、握力で外されてしまうとは思わなかった。
しかし、もう用は無いし、この現場を他の誰かには見られたくない。
下手に知られたら、関係が壊れてしまう。だから、今までだって正体を明かすことが出来なかったのだ。『裏切者!』と拗ねられなかったのは、望外の幸運と言っていい。
(すで)にもう世話の焼ける甥っ子のようなものだが、(かな)う限り大切にしたかった。
だから、放り出す。灸を据える意味も込めて。

「娘をよろしく頼む、それ以外に何があると?」

「……で?」

それを今此処で言い直せ。そう言いたかったのだろうが通じなかった。
それは取りも直さず、セレナスの婿に立候補するということでもあるので。

「――ん? 何だ? セレンちゃんの婿に立候補したい、と?」

割と本気の殺意が籠った笑顔を(ひらめ)かせる。

「お断り! だよ。世界最強の親父なんて、もっと割に合わねえ!」

間髪入れない返答が、本気の怒りゲージを急加速させていく。

「……ほほう」

首根っこを掴み直し、ずりずりと引きずって元来たテラスへに移動していく。
グラディルはその手を剥がそうと掴みに来るが、何度も無様を見せる気は無い。
グラディルの手が襲ってきたら、一旦(いったん)離して掴み直す。何度繰り返そうとも、歩みが鈍ることは無かった。

「ていうかだな、何なんだよあれ! 一々突っかかって来やがって、大迷惑だ! あんたがどうにかするべきなんじゃないのか!? 父親だろ!!

余計なお世話!! である。

「はっはっはっ。それはお前の相方と相談しろ! 本命には(しゃく)な玉だが、今のお前などより余程不遜で不逞(ふてい)だぞ。遊んで楽しむにも不足は無いと来るのだからな」

「――は?? んだ……って、まさか! それ――」

おっと、口が滑った! という本音はバレるわけにはいかない。
なので、駄目押しに()える。

「おまけに、現状はセレンちゃんの方がよっぽど勇者に近いからな! 心して付き合えよ?」

絶句する不肖の弟子に父親としても落第点をつければ、ゴール(スタート地点)に到着していた。

「――ちょ、ちょっと待て師匠! それって俺には関係ない話じゃ――」

学習能力の無さに、説教ゲージ+5。

「お前のレッドブレードベアを狩って来たのはセレンちゃんだからな! この、幸せ者め!!

「はあっ――?! ざっけんなよ、この」

「はっはっはっ!」

そして片手で、重量など無い物のようにグラディルを放り投げた。

「――――ちょ、し、師匠――っ!!

洒落(しゃれ)にならないという悲鳴は視線で届けられる。

「この程度で命を落とす玉では、到底、セレナスの婿にはなれんからな!」

普通の玉ならともかく、グラディルは受け身が取れなかったとしても死なない。そう解っていればこそ出来た無謀(※良い子じゃなくても、真似してはいけません)だった。

「――ちゃ、ちゃんと説明させるからなあああああ――――!!!」

残響は風に溶かされるように消えていく。
国王は清々したように背を向けた。

「ふう。とりあえずは、性根から(きた)え直し!! だな。師を超えようとしない弟子なぞ、育てる意味が無い! ……後、セレンちゃんは当分、嫁になどやらん!!!」
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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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