第2話◆待ち伏せ・・・改

文字数 6,171文字

下校時間の学校は生徒で(あわ)ただしくなる。
友人と雑談に(いそ)しむ者あり、一人速足で去る者あり、歩きながら読書に(ふけ)る者もいた。
王立大学付属の高等学院エクセラル=アカデメイアは公国首都でも屈指の規模と生徒数を誇る大学校の一つである。
共学を(うた)いながらも現実には別学である軍学校とは異なり、級友の半数は本当に異性。武骨を地で行く軍人の学生服には在り得ない格好良さや華やかさが性別の同異なくちりばめられている。
着て歩くだけで人目を()ける制服が自慢であり、人気の秘訣の一つである学校の校門が今日は何処か不穏な空気でごった返していた。

「よう」

「…………?!

挨拶(あいさつ)されただけで周囲が動揺する。
退屈そうな空気を(まと)った、だが同年代とは思えないほど(たくま)しい体格の少年が校門に寄り掛かっていた。



「――――」

正直な話、ラファルド=セルゲートは呆れていた。
昨日の今日ならぬ午前の午後で、よく顔を出せたものだと思う。
勇者試験を受験すると半年前に知ってから、散々に反対した。今はまだ早い!! と。
そう遠くない何時(いつ)かは合格するとしても、今はまだ無理だと考えていた。
勇者になる為の関門の一つである。腕っぷしに秀でているだけで、相手にされるものではない。
だが、反対が鬱陶しかったのだろう。試験開催まで一週間を切ってからは本気で逃げ回られた。
何処をどう探しても見つからないので、不本意ながらも軍学校の教官、グレゴール=セドライドと共同戦線まで張った。
それを押し切って、強引に出場しておきながら……結果はあれだ。小言(こごと)の百や二百を(もら)うことなど解り切っているだろうに――。
ラファルドが笑顔を選んだのは、敢えてである。

「やあ、久しぶり! 午前中は、中々見事な返り討ちだったね――」

笑顔の下の青筋が見えないのなら――(きゅう)はただ熱いだけでは済ませない。
けれど。
不良然とした少年――グラディルの憤懣(ふんまん)はラファルドの不機嫌を上回った。

「うっせえ! 用があんなら呼べばいいだろ!? 回りくどい真似しやがって――!!

「――はあ?!

素っ頓狂(とんきょう)なラファルドの顔面に、グラディルは書面を押し付けた。
()ぎ取った書面に目を通すと。

「……休学……? グラディル、君、何をやらかしたのさ!」

(たしな)められた腹いせに教官を襲撃(しゅうげき)した――そんな事実を白状されても、不思議はないと思った。
だが。

「俺が知るわけねえだろ!!

「え? ――(だから、こっちに来たのか……。まあ、(うたが)われるのが自然だよね。前科なら、山のように有るし)」

書類を折り(たた)んでグラディルに返し――ようやく、自分達が周囲の学友からドン引きされている現実に気が付いた。

「しまった――!!

「――おい?!

やっぱり犯人はお前か! という誤解を買ってしまったが、今はそれどころではない。さっさと穏当に話が出来る場所に避難しなければ。

「……ねえ、あれが不良って奴よね……!?

「――あ!? だっ?!

不本意な言われように反射的に(すご)んでしまったグラディルの後頭部を(はた)く。

「ファル、手前(てめえ)――」

「君、真っ()ぐ軍学校からこっちに来たでしょ?!

「だから、何だよ!」

「だから、だよ」

教練用の暗色のズボンに、白のタンクトップ。
軍学校では普通でも、良家の子女が集まる大学校に軍人仕様は存在しない。
おかげで、実用一点張りの飾り()の無さと異物の違和感が生む不自然さが威圧感となって悪目立ちを誘っていた。
しかも、着古された結果のくたびれに軍人見習いの荒々しい雰囲気がベストマッチしてしまっている。
ラファルドの級友の(ほとん)どは陰口を(こぼ)してしまった女生徒たちのように、話に聞く不良とはこれかと納得するだろう。
おまけに、一人だけの敗者という現実が軍人見習い不貞腐(ふてくさ)らせ、雰囲気(ふんいき)の荒さに拍車を掛けていた。

「軍人の卵なんて、滅多に見ない生き物なんだよ? きちんと正装してればまだしも、そんな気崩した格好してたら解んないよ。生徒だなんて。タンクトップの下、包帯だらけだし」

「む」

「体格だって運動部の生徒とも違い過ぎるから。だから悪目立ちしてるし、勘違いもされるの! これが噂の不良か、ってさ。行こう。談話室借りられるから、話はそっちで聞くよ」

「おう。……何か、悪かったな。その、迷惑になったみたいで――」

「いいよ、別に。勇者試験の受験を見送ってくれたら、もっと文句無かったんだけど?」

「うっせ。今更(いまさら)四の五の抜かすんじゃねーよ。――あ。それとこれとは別の話だからな!」

グラディルは折り畳まれた紙片をひけらかした。



事務室でグラディルの入校手続きを済ませると、小中高大一貫の教育が受けられることも売りの一つである大学校が等級の(こと)なる生徒同士の交流用に用意している部屋の一つを借りた。

上品な調度がさりげなく配置された立方体の空間。その中央に位置するのはテーブルと一対のソファ。

「…………」

グラディルは興味津々(しんしん)な顔で、しかしやや乱暴な態度で腰を下ろし。
跳ね返った反動――凄くふかふかした感触、で顔を(しか)めた。

「……。話の前に、怪我を見ようか?」

「おう。頼まあ」

ラファルドは慣れた手つきでタンクトップを裂き、グラディルの身体を(おお)う包帯を丁寧(ていねい)に剥ぎ取っていく。
そして、地肌に残る怪我(けが)(あと)に呆れと感心を()ぜた。

「……流石(さすが)。鋭利な刃物でも、此処(ここ)まで綺麗な痕にはならないかな」

「まあ、ブレードベアだったからな」

ぷうんと漂う膏薬(こうやく)(にお)いに、ラファルドは顔を顰める。
グラディルは平然と胸を張っているが、何時(いつ)血が再び(にじ)んで来ても不思議はないように思えた。

「教官は、なんて?」

殉職(じゅんしょく)の墓碑銘行きだ、ってさ。……手配が無かったら」

(……まあ、この怪我じゃねえ……。ん? この半端な手当ては『しっかり反省しろ! この馬っ鹿(もん)!!』って意味も在るのか……!)

普段通りの元気さに対する(かす)かな笑みは、一瞬でため息に変わった。

「そっか……。じゃあ、さっさと済ませよう」



白く温かな光が消えると、ラファルドはグラディルの背中を(たた)いた。

「はい、手当て完了! じゃあ、包帯はこっちで処分しておくから」

「おう。ありがとな、いつも」

適当に避難させていた包帯を巻き取って行くラファルドを横目に、グラディルは教練用の外套(がいとう)を羽織り直す。
そして、包帯を(かばん)に仕舞いこんだラファルドとテーブル越しに向き合えば、第二ラウンドの始まりだった。

「んじゃ、説明して貰おうか! 何を企んでやがるんだよ。停学を休学に、勝手に拡張しやがって!」

「その件は、僕は本当に知らない。関わってないんだよ。でも――」

「でも?」

「心当たり……というか――、予感がある……と、言うか――」

正直な所、確信と言っていいものがある。けれど、不用意に口にするのは躊躇(ためら)われた。
聞かせれば、巻き込まれる。まず、間違いなく。

「ほう? だったら、白状してもらうぜ。お前の予感が(ろく)な事だった(ためし)は殆どねえし? 条件次第じゃ力を貸してやらねえこともねえ!」

尊大な態度のグラディルに、ラファルドは一度は引っ込めた青筋を持ち出した。
腹立ちのせいで、声は自然と低まっていく。

「ラディ、君ねえ……。受験会場に姿が無かったから、(いくさ)の試の詳細は知られてない――なんて、思ってるの?」

体格差では圧倒的に優位に立つグラディルが、ぎくり、と気圧(けお)された。

「それは今――」

「関係無い? だとしたら相当おめでたいよ。ねえ、負け犬君。君がその紙片の意図を知りたがっていたように、僕も今日は、どうして、あんな結果になったのか――を、知りたいんだけど?」

「む! それは、」

グラディルは反射的に席を蹴立てる。

「ほら、忘れてるでしょう? 今日が実は一週間ぶりくらいだってこと。口を酸っぱくする僕から散々に逃げ回ってくれたよねえ? ねえ、ラディ」

おどろおどろしい空気を纏い、白く光る眼で見上げて来るラファルド。
グラディルの背筋を冷たい汗が流れ落ちた。

「それは――」

覚えていなかったわけではない。
勇者試験受験の邪魔なので、意識の外に蹴り飛ばしておいてはいたが。
しかし、試験会場から保健室に送還されて以降は綺麗さっぱりに忘れていた。……間違っても、白状は出来ないのだが。

眼前の低気圧は急速に黒雲を湧き上がらせ、雷を放電し始めるほどに成長していった。

「そりゃ、反対してたよ? でもね。君が勇者を(こころざ)してるのは知ってる。だから、どうしても出場したい理由をきちんと聞かせてくれたなら――考えたよ? ちなみに『出る! 俺がそう決めたから!!』の一点張りは理由じゃないからね。なのに、まあ、逃げ回ってくれちゃって……! そうまでして出たかったんだから、きっと、きちんとした結果を引っ()げて帰って来てくれる――せめてそう思おうとしたのは、無茶だったかな? ねえ、ラディ。どう思う?」

(……やべえ……、マジ切れだ――! ひょっとしてこれ――、明日の朝日は拝めないコース、確定か?!

グラディルは真剣に明日の自分を(うれ)えた。
腕力、筋力で言えばグラディルの方が圧倒的に上だ。素質、(現在の)実力、技量共にかけ離れていると言っていい。
しかし。
ラファルドはグラディルを蹂躙(じゅうりん)し、制圧するのに物理的な身体能力は、一切(いっさい)、使わない。
俺の事を何だと思ってるんだ! と逆切れし、大魔王降臨を招いたことは20年にも満たない人生の最大の汚点の一つ。その二の舞を演じる度胸は――無い。
何時の間にか、脂汗を掻きながら黒雲から大魔王が召喚されなことを願いつつ、正対する破目になっていた。

「……せ、先手必勝で、な、何が悪いって――、そ、それに!! 勝負は、時の運――」

「ふうん? 自分を貫いてカウンターをもらった――ね。油断は?」

油断の二文字を耳にした途端、グラディルのビビりが吹き飛んだ。

「してねえ! するわけがねえだろ!! あれは――今更言っても泣き言だけどよ、完璧過ぎたんだよ! こっちの行動が予め解ってたとしか思えないくらいだ!!

(ふむ……。褒められた物ではないとしても、落第点レベルでもない――かな?)

ラファルドはわざと冷たく突き放す。

「本気? それ。魔物に学習能力が無いって、思い込んでたんじゃない?」

「おい――!!

憤懣が一気に険悪に変質した。
こうなった時のグラディルは、大の大人さえ縮み上がらせる迫力を出す。
ラファルドの冷たさに変化が無いのは、付き合いの長さゆえでもあった。

「在り得ない、って現実に食らわされてこの(ざま)じゃない? それはどう説明してくれるのさ?」

「俺用に調整されてたって、可能性」

「自意識過剰だね、それ。観客には騒げる口実でも、勇者試験(これ)、れっきとした国家試験だから。他国でも自他共に認める鳴り物入りを試すならまだしも、試験デビューを果たしただけの、半人前にも程が在る素人(しろうと)を特別扱いする程暇じゃないよ」

「…………もっと、言いようねえのかよ…………」

ため息さえつかないラファルドに、意気が綺麗に削がれてしまったグラディルである。

「君が、もう少し真剣に反省の二文字と友人付き合いしてくれるなら、考えても、いいかな?」

じろりと(にら)んで来るのは、グラディルが本気で落ち込んだらどうなるか、を良く知っていればこそだった。
グラディルだって、自分自身が未だ未熟者の範疇に入る自覚を失くしたわけではない。

「これだから、古馴染みってのは性質(たち)が――って、何でもねえよ!!

「じゃあ、何? 本当に気が付いてない、ってこと?」

最後通牒は(きょく)力さりげなく告げる。
引っ掛からないのは、見え見えだと言える程度には長い付き合いだからだ。

「…………。俺と似たタイプの奴が捕らえて来た――からだろ」

灸が必要なさそうな事を確信してから、ラファルドは空気を緩めた。

「試に使う魔物の調達は冒険者に依頼することも珍しくないし。カウンターは捕縛された時の経験が生きていたからだろうね。単純に運が悪かっただけ――かな」

お、という感じでグラディルの表情が明るくなる。
けれど、慎重さは忘れなかった。最後の最後に罠を仕掛けている可能性も十二分に在るからだ。

「…………じゃあ、お仕置きとかは――?」

「勘弁してあげるよ。運不運はどうにもならないからね。試ではあっても、れっきとした勝負事でしょう」

「――(ビビらせやがって)――」

グラディルが胸を撫で下ろした瞬間に、ラファルドは落第点をつけた。

「でも、笑えないからね。見事なカウンターが来たってことは、君の『先手必勝』が数段、『誰かに』劣っていたってことだから!」

「ゔ」

「勿論、教官殿には報告しておかないとね」

グラディルの脳裏には、喜び勇んでいる癖に凶悪なグレゴール教官の笑顔が降臨していた。
割と暑苦しく、狡猾さと脳筋ぶりとが矛盾なく同居する、悪夢のような鬼マッチョ……。
気分的には早半泣きである。

「……だったら、休学なんて回りくどいことすんなよ!」

蒸し返されるのは、ラファルドも流石に鬱陶しかった。

「だから、それは僕は関係してないって――!!

「……嘘だ。お前ならやり兼ねねえ! 絶対!!

座り直したグラディルが、白い目でラファルドを覗き込んで来る。

「それ、は――」

ラファルドはため息をつきたかった。

(前科があるから、反論に説得力無いんだよなあ……)

「んん?」

白状するなら今の内だ、とでも言いたげな態度は癪だ。
けれど。

(……うー……、(やかた)の事情がバリバリに絡んでるからなあ。ラディに手を回したのは、『逃げるなよ。逃げられないからな!!』っていう釘だろうし……。怪しいのは、クリス兄さんあたり――かな。……そっか。もう、巻き込んでる――。だったら)

ラファルドは覚悟を決めた。

「話したくない、って言っても無駄なんだよね?」

「おう!」

威張られると、胸中の(やま)しさが少しだけ軽くなる。

「じゃあ、共犯ってことで。それが条件」

共犯――つまりは、ラファルドにも何がしかの意図が在るということ。
加えて、確信犯として(ラファルドの側に)加担させられる、ということだ。
真相を質すつもりで、早速厄介事に首を突っ込んでしまったグラディルだった。

「――げ」

露骨に早まった!! と断言されては、流石に気の毒になる。

「……逃げるなら、今の内だけど?」

それなのに、掛け値無しの仏心を出したら頭を叩かれた。

「たく。相っ変わらず、可愛げの三文字が足りてねーな、ファル。俺様を見損なおうなんざ、百年は早えんだよ! 厄介事を厄介事認定しただけだっつの!!

その時浮かんだラファルドの苦笑は、無自覚の産物だった。

「――そ。だったら気が楽でいいや。実はね――」

そして。
その瞬間を狙い澄ましていたように、談話室の扉が開け放たれた。

?!

踏み込んで来たのは武装した騎士。それも、芸術と呼べる程華やかな意匠を施された装備に身を包んだ。
特に胸や肩に装飾された紋章――剣を差し、槍を構えた騎士が二本脚立ちの悍馬に(またが)る様を図案化した物、は王都民なら誰もが知る意匠の一つだ。

(マジか?! こいつら――近衛じゃねえか!!

それも、直接国王に指揮されることを許された、精鋭中の精鋭。

開け放った扉の両側に剣を前面に構えて待機する二騎。その真ん中を堂々たる所作で突っ切って来た騎士が、事もあろうに、少年達の前で膝を曲げた。

「ラファルド=ルヴァル=セルゲート様、グラディル=トラス=ファナン殿、お迎えに上がりました。どうぞ、(わたくし)と共に参内(さんだい)下さいますよう。陛下直々のお召しに御座います」


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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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