第5話◆白百合姫・・・改
文字数 2,541文字
確信犯だ。冷静な思考をさせない為の。
気づかれれば、その時点で逃げられてしまうと解かられているからだ。
そして、それはキレても問題無い、後ろめたい目論見が
だが、現状は見事なまでに流されてしまっていた。
国王の目が『間抜け』と語る。
ぷつっと、頭の何処かで何かが切れる音を聞いたラファルドを自制させたのは――。
「お父様!」
重厚に押し開かれた扉の向こうに
「今宵は
口上の
「いや、急に思い立った私も悪い。学びを途上で切り上げさせたこと、許せよ」
「――い、いえ! そんなことはありませんわ!!」
「お――」
扉が閉め切られ、客人の存在に気付いた途端に、何かが地に落ちた。
「父様、こちらは――?」
すかさず、一歩前に出て。
「ラファルド=ルヴァル=セルゲート」
名乗りと共に一礼する。
「……まあ! 公国の
少女は素直な驚きを見せた。
「家の
「初に
「うほん!」
華やかに礼を返す王女に対し、国王は何処までも退屈そうだった。
「して、こちらが――」
「グラディル=トラス=ファナン」
「――まあ!」
少し、
見間違いでなければ、獲物を狙う鷹のように
「――――」
心当たりの無さから来る動揺は、どうにか胸中に留める。
国王は何事も無い
「父君が先代の勇者を務めていた」
「
グラディルも無関心を前面に押し出す。
「どうも」
(何か妙に、ラディに当たりがキツい……って、ああ、もう! すっかり、怒るどころじゃ無くなっちゃった――!!)
「お父様。席を共にする前に、
落ち着いた言葉とは裏腹に、セレナスに微笑みは無い。
ガルナードはため息を返事の代わりとした。
「この者達が今宵の晩餐に同席を許された理由、
「明朝より、お前の付き人となる」
「――――!?」
想像の
「これで良いか?」
「まあ……!」
王女の目つきが少々険しくなったように見えた。
(……婚約、じゃないのは……助かった――けど。……どうしてかな? ラディに負けない
世俗の評判を裏切らない花のように清楚可憐な第一印象と、勇猛果敢で鳴り響く父親によく似た獰猛な
状況が停滞している今が好機とばかりに、ラファルドは思考を巡らせ始めた。
(――この晩餐は、顔合わせ……なら、普通にやればいいだけ。会食を仕組むのはやり過ぎだよね。だって、働く前に豪華な褒美なんて出してどう――、
グラディルも同じような考えに
だが、国王の
「外の世界に興味が有るのだろう? 良家の子女ともあろう者が、供も無しとは行くまい」
「お父様!」
(抗議されちゃったか……。まあ、普通は気心知れた人材を宛がうものって話だけど。この分だと、
「『何時かは、姫様に同道したい』と、警護の者達が
途端に(しかし一瞬)、セレナスの気配が泳いだ。
「…………それは……、
国王を注視し続けるグラディルの目が
(こりゃ相当なお
「何を得ようと何を失おうと、それはお前の自由だ」
「お父様!」
王女の顔が歓喜に輝く。
しかし、少年二人は胸中でげんなりした。
王女様の
「いずれは――な」
「お父様!」
「今はまだ、早い」
(……これなら、家の
やり取りを見守りながら、ラファルドは堅実な結論に辿り着く。
常識的な突っ込みを決めたのはグラディルだった。
「悪い
「……構わんよ、立ったところで。元より、個人の我儘から始まった話だからな!」
王女の父親が面白がる顔を見せたのは、グラディルの不慣れな敬語にばかりではなく。
「――!!」
未成年三人の頭脳と感情が一斉に
「誰ですか?! それは――!!」
その人物こそがこんな傍迷惑な晩餐会を
個人的に、是非とも
だが。
「私だが?」
とんでもない黒幕の正体に、一瞬で奈落の底まで
(も、文句なんて付けた日には――終わるじゃないか! 人生が!!!)
それは三者共通の感想であった。
「……どうした? 今日のメニューに、冷めても美味しい物は無いのだが……」
国王は全く要領を得ていない顔で、時間を止められたように動かなくなった未成年たちに首を