第80話◆迷い家~道標(1)

文字数 5,494文字

「……どうして、そんなことが言えるんですか!? ファルは……一番上のお兄さんを――!」

気色(けしき)ばんだグラディルを、ディムガルダは冷(せい)(むか)()った。

「あいつが、そう言ったのかい? 私のせいで、いなくなった、と?」

グラディルの感情(かんじょう)は一(そう)(なみ)立つ。

「言いません!! 言うわけないじゃないですか!! 天地が(さか)様になったって、あいつは――!!

「……だったら、なぜ?」

「……です。親父(おやじ)の、せいです!! 公国から公(にん)(もら)っていたのに、間に合わなかった!! 行方(ゆくえ)(くら)ませたまま、そのまま――!!

(ちが)!!!」

(いた)みに満ちたグラディルの言葉を、ディムガルダは(はげ)しく()ち切った。

「――――!?

「……それは、違うんだよ。クレムは、()げなかった。立ち向かうべきに立ち向かって、……消(そく)()った」

(さと)すようなディムガルダに、グラディルは(さぐ)るような目を向ける。

「…………、それは?」

「クレムの弟――君の、叔父(おじ)、殿については、知っているかな?」

「知っているも何も、少し前に――」

ディムガルダは(おどろ)きで目を見開いた。

「会ったのかい!?

「……え、ええ。近(きょう)報告(ほうこく)し合ったぐらいで、(わか)れましたけど……」

(まど)いを(かく)さなくてもいいグラディルに(たい)し。

「そうか……((もど)って来ていたとは――。ガルの(やつ)に差しておかないとな)」

ディムガルダは(にが)く思う(きょう)中を隠し切る必要(ひつよう)が在った。

「……、あの?」

「クレムは、ずっと弟()の消息を追っていた。クレムよりも強い〈力〉を持ち、クレムよりも〈力〉を深刻(しんこく)()け止めていたそうだ。喧嘩(けんか)別れして10年になると、私は聞いた」

「父は……なぜ、ディム小父(おじ)さんに? まさか――」

グラディルの声は何かを()感して、何処(どこ)か上ずっていた。

「ああ、自分のことを治せた(・・・・)のだから、弟のことも――、……!!

話を(さい)後まで聞かずに(せき)を立ったグラディルに、ディムガルダは手近に在った椅子を(・・・)投げつける。

グラディルはさっと(かわ)したが、流石(さすが)に、抗議(こうぎ)しないわけには行かなかった。

「――小父さん?! (おれ)相手じゃなかったら、今のは、流石に!!

洒落(しゃれ)にならない、と言いたかったが。

ディムガルダは不満をはっきりと示した。

「人様の話を最後まで聞かずに、逃げ出そうとするからだ。言葉で君を引き止めることが出来た、と言うのなら、()びよう」

自身の短慮(たんりょ)を明(かく)に指(てき)されては、グラディルもばつが悪い。
しかし、反(げき)(あきら)める真似(まね)もしなかった。

「……常識(じょうしき)、を(たな)上げにしていいんですかね?」

引き止め方が()常識だと、遠回しに()せば、ディムガルダはかんらと(わら)う。

「はっは、それは失敬(しっけい)。しかし、ラディ君。君も大分(だいぶ)、失敬だね? 有(てい)に言って、セルゲート家を、クレムディルのことを()()ぎだ。今、君がこの部屋から逃げ出せば、クレムはセルゲート家が持つ()能の意味を何も知らなかった、ことになるのだが? それは(しょう)知の上かい?」

自身の言動が父クレムディルまで(はずかし)めている、と言われては、グラディルも戸惑わないわけには行かない。

「…………、それは。しかし――」

「クレムが勇者になることを、勇者であることを、真摯(しんし)()(もと)めるようになったのは、私が異能を(そう)失したことを、クレムなりに真剣に受け止め、考えた結果(けっか)だと私は思っているよ。ガルには『お前、どうやってクレムの奴を洗脳(せんのう)したんだ!?』とか何とか、()かされたけどね」

「――え。……それは、まさか……!」

いくら何でも、それは不味(まず)!! という地(らい)()み抜いた師匠(ガルナード)
そんな絵面(えづら)が、(いや)に明(りょう)に、脳裏に浮かんでしまったグラディルである。

ディムガルダの()顔は、今までになく、清々(すがすが)しかった。

「はっはっは。容赦(ようしゃ)しなかったとも。(ひさ)()りの喧嘩をしたさ。――ん? ひょっとして、(はつ)耳かな? 何なら、今までの(ほし)(かず)(おし)えてもいいが?」

星の数――勝敗のことである。言うまでもなく。
それも、公国最強の武人と自他共に(みと)める人物が対(せん)相手だ。

グラディルは即答(そくとう)した。

「いえ! ()めておきます! 知りたくありません!! 師匠(ししょう)を見てれば、大体の所は(さっ)しがつきますので!!

神祇(じんぎ)だから、武(げい)者の内には数えられなかった。
それが口実なのか、現実なのかは――語らぬ方が幸せ、なのだろう。
(かく)実に言えるのは、国王ガルナード=アストアルが本能的に居住まいを正すほど畏敬(いけい)する人物がディムガルダ=セルゲートである、ということ。
そして、二人は公私共に親密(しんみつ)な友人である。

加えて、グラディルが知りたがらなかったのは、知ったが最後、ラファルドがもう一人(・・・・・・・・・・)()えると確信したからだ。

「そうかい? ……まあ、あまり楽しい思い出話でもないか。ま、それはさておくとして。常識の話、ならば、聞く耳を持とうとしないラディ君相手じゃなければ、頑丈(がんじょう)椅子(いす)を投げつけるなんて乱暴(らんぼう)な真似、しないよ。私もね」

「…………」

話を()し返されて、グラディルはむっとした。

「さらに言わせて(もら)えば、私の二の(まい)、三の舞を私以外の(だれ)かに踏ませる気は無いし、セルゲート家は異能を(つちか)い、異能と向き合い(つづ)けて来た家でもある。神通に負(たん)()けずに、〈力〉と向き合う手段だって、(いく)つも持っているとも。その(てき)用を考えるのも、いけなかったのかな?」

聞かされた話の真(がん)(わか)らず、グラディルはかえって戸惑った。

「…………」

グラディルが反(のう)しないことを、まだ意固地になっていると解(しゃく)したディムガルダである。

「……うーむ……。これはもう、ヴァルの奴に打ち明けて――」

グラディルはラファルドをファルと()ぶが、ラファルドの家族はラファルド=ルヴァル=セルゲートのルヴァルを呼び名に使う。
(たが)いが使う呼称(こしょう)を互いに承知しているので、齟齬(そご)は起きないのだった。

「すいませんでした!! 勝手に席を立とうとしたことは、俺が悪かったです!!

あまりに(こう)覿(てき)面な切り(ふだ)に、ディムガルダは目を丸くした。

「持ち出しておいてなんだけれど……、本当に、不思()な関係だよね。ルヴァルの奴、本当に友(だち)をやれているのかね?」

(みょう)な方向に、グラディルが(しつ)けられている。そんな可能(せい)()かし見て、ディムガルダは不安になる。

何処か愛嬌(あいきょう)を感じさせる風情(ふぜい)に、グラディルは苦笑(くしょう)させられた。

「本気で(おこ)らせたこと、何度もありますから。(こわ)さは身に()みてます。俺が本気で喧嘩できるのも、ファルだけですし。仲直りをするのも、出来たのも、俺はファルが(はじ)めてです」

孤独(こどく)(ひと)()がりで(がん)(がら)めになった(おり)破壊(はかい)するには、(こま)やかな機微(きび)を後回しにする傲岸(ごうがん)(そん)な、理()めの(ぼう)君が(ちょう)度良かったらしい。

グラディルとラファルド。
どちらの苦(ろう)も透かし見えた気がして、ディムガルダはほろ苦さを味わった。

「そうだったか……。()まなかったね。私もラディ君に(あま)えてしまった。椅子を投げるのはやり()ぎだ」

「俺も悪かったですし、小父さんに失礼でした。椅子云々(うんぬん)は流石に……、ですけれど」

「うむ。以後、気を付けよう」

ディムガルダに頭を下げられて、グラディルは席に(すわ)り直した。
仕切り直しである。

「……クレムは弟御の面(どう)(たの)みたいと考えていたが、(かん)心の弟御の消息がようとして知れなかった。公国が捜索(そうさく)(たい)を組んだこともある」

「えっ!?

初めて聞かされる話に、グラディルは目を丸くした。
公国が動いてくれたことが在ったとは、母からも聞いたことが無い。

「それでも、消息は(つか)めなかった。それが――。魔神戦(そう)開戦の一月ほど前だ。一(ぽう)が入ったんだ。『よく()た人影を見た』という(てい)度だったがね。クレムは(さが)しに行かないわけにはいかなかった」

きな(くさ)い。「一報」が如何(いか)胡散(うさん)臭い話なのか、(ぐん)人見習いであるグラディルにも解かった。

「……なぜ、ですか?」

それでも、父が叔父を探しに行かなければならないと考えていた理由を、グラディルは知らなかった。知りたかった。

「クレムは私に頼みに来た。『俺の〈力〉は、どう足掻(あが)いても手に()えない。二度と使えなくなっても(かま)わないから、(おさ)える手(だん)を教えて()しい』とな。そして、『何時(いつ)か……、俺は、何時か自分の大切なものを、自分で(こわ)すことになる――。そんな(うん)命、冗談(じょうだん)じゃない!! それこそ、(くそ)ったれだ!!!』と。あれだけ大(がら)な男が、()き場の無い子供のように泣きじゃくる……。思わず、(いき)()んだくらいには、強(れつ)だったなあ……」

グラディルから、表情が消える。

「じゃあ――」

「自身よりも強い〈力〉を持つ弟御はもっと大変なことになる、か、なっていると考えたんだ」

「…………俺も。俺も、諦めた方がいいんでしょうか?」

グラディルの声は落ち着いていた。

ディムガルダは何処か(なつ)かし()な笑みを浮かべる。

「クレムは開き直ったぞ? 『〈力〉を抑え()んでくれて、有(がた)くないとは言わない。だが、異能を()らしてくれと頼んだ(おぼ)えもない! いい迷惑(めいわく)だ――!!』とね」

明かされる、いくら何でも、それは不味い!! 第二(だん)

グラディルの悲痛(ひつう)な心情は、がくり、と(なさ)けない方向に(かじ)を切った。

「………最低だ、親父(おやじ)。いくら何でもそれは……(かば)えないよ。俺も」

ディムガルダは(ほが)らかに(わら)った。

「はっは。庇ってもらう必要はないよ。いい思い出だからね。だから、二人のことは、二人で決めなさい」

「…………」

何とも言えない顔で見つめて来るグラディルに、ディムガルダは(おだ)やかな笑顔を返す。

「この話には(つづ)きも在ってね」

「……?」

「その(よく)日、(あやま)りに来たんだ。言い放った時の傲(まん)(そん)大な態度のクレムからは想像(そうぞう)も出来ないほど――、そう、今のラディ君みたいに、(しお)れた顔と態度で、な」

「ちょ、ちょっと待ってください!! (あやま)りに来たんですか?! あの親父が――!?

信じられないものを見たように絶句(ぜっく)するグラディルに、ディムガルダは「そんなに可笑(おか)しなことを言ったかな?」と、(くび)(かし)げた。

「……そんなに、(めずら)しいことなのかい?」

「見たこと、在りません。親父が(だれ)かに頭を下げた所なんて……。母さんだって、無いはずです。夫婦(ふうふ)喧嘩(げんか)だって、()れるのは何時(いつ)も母さんでしたし」

「ほう……。ふむ。私は、ガルの奴に土下()させられるクレムを何度か見たことが有るから。さては、ガルの()回しだったのか? みすぼらしい、と言った方がいいくらい、草臥(くたび)れた(かっ)好だったしなあ」

ディムガルダは小首を傾げる。

ふと、グラディルの脳裏に懐かしい思い出が()かんだ。

「あ。小父さん、親父の顔はどんなでした?」

「顔かい? ……ああ、確か、やけにくっきりした(こぶし)(あと)(ほほ)に在ったなあ」

ディムガルダの返事に、グラディルは確信を()めて(うなず)いた。

「でしたら、母さんですね」

思い出の中の父は、(げん)関の前で()王立ちしていた母に(ほう)告していた。
何かを問い()められて、渋々(しぶしぶ)(じょう)した、という感じだったが。

だが、ディムガルダは驚きで目を丸くした。

「――えっ?!

「?」

「いや、いくら何でも、あんなにくっきりした(にぎ)り拳の痕は――」

「母(いわ)く、父と喧嘩して覚えたそうです。『あれぐらい出来ないと、あの人には何にも伝わらないの!! 頑丈さと無神(けい)さって、どうして比例(ひれい)する関係にあるのかしらね!?』なんて。結(こん)する前からずっとそうだった、と」

おまけ。
ガルナードの拳は破壊力が有り過ぎて洒落にならないから、(ぜん)力で回()するしかなく、奥方の拳は()らっても程度が知れてるから、()えて喰らっていたというのが裏話。
()考。
クレムディルの打(ぼく)(しょう)で一番(なお)りが(おそ)いのは、奥方による鉄(けん)制裁(せいさい)である。

「――はあ。よくできた(おく)殿だと(うらや)ましく思うくらいだったが……そんな昔から(けつ)物だったとはなあ……。いやはや、いやはや!」

感服しきりなディムガルダに、グラディルはくすぐられるように笑った。

「母さんはいつも小父さんに感(しゃ)してます。『あの人が「人()み」になれたのは、(すべ)てディム小父さんのおかげよ!!』って。俺には、あれでも人並み以上に凶暴(きょうぼう)な気がしてたんですけど」

今度はディムガルダが(あわ)てる。

「いや、それは言い過ぎだと思うが? (しつけ)に苦労してたのは、ガルだし。私は、それこそ、ガルの(しり)馬に乗っているだけ、が(ほとん)どだと――」

グラディルは首を()った。

「いいえ、小父さんのおかげです。師匠は――、その、親父の生まれと育ちを上等にしただけ――みたいなところ、在りましたから。物理的に押し切ることは出来ても、(せい)神的な部分をケアするとかは……無理でしょう?」

「それは……、まあ、在った、かな。でも、それでも、全ては言い過ぎだと」

ディムガルダとしては、自説に意固地なクレムディルを、要点を簡潔(かんけつ)提示(ていじ)するのがガルナード((おも)に物理的)で、その不足を(おぎな)うのが自分(主に精神的)という二人三(きゃく)をして、解き(ほぐ)したつもりだ。自分だけが評価(ひょうか)されるのは、(すじ)が違うと思うのである。

「いいえ。親父は……師匠を、師と呼びながらも、何処か、戦友的に考えている部分が在りました。けど、小父さんのことは、一人の人間として、尊敬していたんです。覚えてますよね? 親父が、俺に()を掛けた”()(ぎら)い”だったこと。坊主(ぼうず)(にく)けりゃ、袈裟(けさ)まで憎い! を地で行く人間が――『公国の良心と(うた)われる”貴族”』の家に遊びに行くことを(とが)めなかったんです。()通の父親みたく、『迷惑を掛ける真似は、するなよ』と、言うだけで」

「――――」

何も言えなくなったディムガルダを前に、グラディルは席を立った。

「『有難う御座います』母からの伝(ごん)です。俺からも、この場を()りて、(かさ)ねて――!」

そして、一(れい)をする。

「…………」

ディムガルダはため息以外に返せるものが無かった。

だが。

「『大切な物を自分で(えら)んで、自分で決めて、何が悪いと!?』」

?!

突然(とつぜん)の喧嘩調子――それも、妙に(おさな)い口調に、グラディルはびっくりして顔を上げる。

ディムガルダの穏やかな笑顔が在った。
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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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