第10話◆怪気炎・・・改

文字数 6,339文字

「それで!? これは一体どういうことなんですか?! 兄さん!!

「……そう怖い顔をしないでくれ、ヴァル! 少し落ち着こう。な、話をするから」

鬼気迫る形相で肉薄する弟を苦労して引き()がし、応接間に備え付けの椅子(いす)の一つに押し込む。

(……やれやれ。我が弟ながら、この気迫――。一体、誰に似たのやら……)

クリスファルト=セルゲートは弟ラファルドを前に冷や汗をかかされていた。



グラディルが国王の私室から放り出される少し前。
朝食を摂り終えたラファルドは自分達に与えられた待機室――(ほこり)こそ積っていないが物置同然の部屋、で沈没の底に居た。

(……何か、もう――考え事とか、したく……ない――なあ……)

『本日の朝食も、お父様と御一緒します』

というお達しが在った。それはいい。
でも、てっきり国王とその娘、王女の食事をその背後で立ち尽くして見守る仕事だと考えていた。
国王と多少の会話をするかもしれない。それぐらいは予想していた。
グラディルとの関係を探りたい意図もあったし。王女が何故(なぜ)グラディルに険しいのか、糸口を(つか)めたら上出来だと思っていた。
なのに。
普通に食べてしまった。朝食を。王女の隣の席で。
テーブルの向こうには国王が座っていて。
そして。
どういうわけかその背後に、宰相、騎士団長を初めとする文と武の重鎮が付き人よろしく(ひか)えていたのだった。

(終わった……きっと、何もかも――終わっちゃったんだ……。(はかな)い夢だったなあ……一人暮らしとか。夜更(よふ)かしとか。……仕事でなら徹夜したことあるけど。自由な生活――かあ。してみたかったなあ……。……まあ、苦労と背中合わせだったりもするんだろうけど)

「……もし?」

(縁談――そんな話は聞いてなかった。喧嘩(けんか)して家を飛び出したけど。三行半(みくだりはん)(たた)きつけて来たけど――絶縁はしなかったんだよなあ……兄たちに泣き付かれて、弟たちには脅迫されて……。家からは距離を置くけど、家族とは距離を置かないってことで決着したんだっけ……。学生の間だけだろうけど、「普通の」生活が出来るって――。それが――あ、今、鳥が飛んでった!)

「もうし!」

(殿下は激怒されてお部屋に閉じ(こも)られちゃうし。ラディは――花を摘みに? だっけ?? よく、そんな小洒落(こじゃれ)た言い回し知ってたなあ……。メニューは好物が(そろ)ってたけど、味なんて全然しなかった――。百官の前で、国王と共に、王族の隣で、食事。それは――ん? あれ? ラディはどういう関係だっけ……? まだまだ全然育成途中なんですけど――でも、きっと何処(どこ)かで、絶対、バッくれるよね。王族として国家の要人に名を(つら)ねる。――うん、全然似合わないってことは無いけど、蹴飛ばすね。……そうか! それに乗っかって当ても何も無い旅に出れば――)

「おほん! も・う・し!?

(……ん? 咳払(せきばら)い――って、ああ侍女頭……、って! うわっ!! やらかした――!!

青筋を浮かべている侍女頭ミラルダに、ようやく我に返ったラファルドは立ち上がった。
今現在の立場は下っ()。第三王女に仕える人間達の中でも一番の新入りである。
一方、侍女頭は言うなればベテラン監督。主人たる王女の信頼厚い、現場の総元締めだ。
てっきり、雷が落ちてくるものだとばかり思っていた。

「……えっ? 客、ですか?」

セルゲート家の王宮窓口は、当主代行に就任する以前から三番目の兄、クリスファルトが担当している。指名してくる誰かが居るとは(つゆ)とも思わなかった。



ばんっ!! と、両手でテーブルを叩く。

「じゃあ、説明して頂きましょうか!! (いくさ)(ためし)が終わってから、今日までの流れ――どういうことですか!?

客の正体が兄のクリスファルトだと知った途端、縄張りを(おか)された獣のような剣幕で迫って来るラファルド。
クッション役を期待にしていた侍女は、お茶と菓子を用意してさっさと逃げてしまった。
……口は挟まなくて構わない。ただ、同じ部屋に居てくれるだけで。
それだけで、弟の剣幕にもブレーキが掛かるのに。

「……そう怖い顔されると、話そうと思っていたことも話せなくなるだろう! ――あ、ラディ君は落第が決まったらしいぞ?」

さりげなさ=往生際の悪さである話題の転換を狙ってみた。あの剣幕で押しまくられたら、数分でも心身が持てば上出来と自分を褒めてやれる。
ラファルドは意外そうに目を丸くした。

「え? ……その話、古くないですか?」

「さっき、陛下から(じか)(うけたまわ)ったんだが……?」

弟の空気を慎重に伺いつつ、クリスファルトは首を傾げる。
ラファルドはまだ要領を得ないようだった。

「さっき、直に――?」

「おいおい。勇者試験の主催は」

「解ってます。でも、ラディが来た時の感じは……」

伝えてくれと頼まれていた単語を差し込んだ。

「脱落、の二文字を使ったそうだが?」

途端に、ラファルドは納得が行った顔になった。

「――ああ、なるほど。大怪我が原因で陛下の勘に障りましたか。……愛されてるなあ!」

この弟と国王の関係は今一つ(なぞ)な所がある。何を納得したのか突っ込みたいが――先程までの剣幕が復活されるのは、困る。
とりあえず、模様(なが)めを選ぶことにした。

「残念だったな」

「……自業自得です。試から叩き出された時点で、落第したものと勘違いしてたみたいですし」

「おや?」

「腹いせに来ましたよ。……巻き込まれてくれましたけど。――で!?

期待もむなしく、あっという間に鬼の気迫が復活してしまった。

「は、ははは……。なあ、頼むよ! 頼むから!! 俺に当たらないでくれないか? 黒幕ってわけじゃないんだぞ」

心底(しんそこ)うんざりして懇願する。
五番目の弟のラファルドが一番父によく似ている――それは、事実だ。
激怒した時は特に、雰囲気(ふんいき)とか面立(おもだ)ちがよく似る。兄弟の誰にも一目置かれる父に。

「では、さっさと白状して下さい。内容次第では、罪一等、減じて差し上げなくもありません!」

弟の剣幕の原因に、ふと思い当たった。

「――おい。朝のことをまだ、根に持ってるのか!? あれは、陛下のちょっとした嫌がらせで!」

「……やっぱり……!」

ラファルドが凄みの籠った呟きを吐き出す。

(うあ、不味(まず)ったか……? でも、本当の黒幕は白状できないからなあ。……怖いし。まあ、朝食に関しては陛下の嫌がらせでもあることだし――下駄は預けてしまった方がいいな)

保身を胸中で計算しつつ、宥め透かしを試みた。

「別に、今すぐお前に結婚しろってことじゃないんだから!」

「当然!! でしょう?! そんなの!!

方向性を間違えたことが確実で、落雷の予感がひしひしと背中に迫り始める。

「……なあ、陛下のおちょくりが入ったとはいえ、ただの顔合わせの何が気に入らないんだ?」

「気に入らないも何も――!! ……って、兄さん。まさか、乗り気なんですか? 自分の縁談云々(うんぬん)からは逃げ回ってるくせに!」

思わぬ藪蛇(やぶへび)に、クリスファルトは本気で泡を喰った。

「はあ!? ヴァル、それこそ今は何も関係が――」

(ぼく)だって同じです!! 気がついてないなんて、言わせませんよ!? 今朝のあの状況――絶対、婚約の根回しです! 殿下だってあまりに性急だとお冠で、引き籠られてるんですから!!

紛れ込んだ泣き言に腹が立って、つい、本音を滑らせる。

「……気づいてないも何も、既成事実にして押し切るのがこっちの……」

「兄さん!!!」

!!! っと(ヤバい)!! すまん。お前話し出すと長いし。俺は俺で考えることがあるからさ!」

幸いにも、本音は伝わらなかったらしい。
とはいえ、剣幕は激しくなる一方だ。
目を合わせられずに居ると、弟の顔がずずいっ、と迫って来た。

「長い話をさせてるのはどっちですか!! いいですか?! 婚約云々は、絶対に!!! お断りですから!!

押されているとはいえ、ラファルドの兄である。
転がり込んで来た反撃の好機を逃したりはしない。

「……解った。婚約以外の件は承諾(しょうだく)した、と報告しておく。父上にも陛下にも、な」

「ちょっ」

「聞いてない、は無しだぞ。第三王女殿下にまつわる星詠みを、父上の耳に入るように手配したのはお前、だろうが」

「……知っておくべきだと思いましたから。ですが! どうしてその話が、こんな事に!!

剣幕の隙間からボロボロ泣き言が零れて来るのは、可愛げというものだろう。

「そりゃ(そば)(はべ)って見極めるのが一番いいから、だろ? 婚約の体裁に似せるのは我らが小父上――陛下、のお遊び兼嫌がらせだよ」

「――――」

本当に!? と無言で迫って来るラファルド。
ここまで来たらもう、自棄(やけ)でも開き直るしかない。

(ちか)う! 親父だって(陛下の仕組んだ嫌がらせは)、知らないよ」

「……まあ、嫌がらせだけってことも無いでしょう。可愛くて仕方がない娘に、男を近づけるんですから。婚約以外に都合のいい口実なんて、ありませんよね」

ひとまずでも剣幕が鎮火し始めて、クリスファルトは少しだけ胸を撫で下ろした。

「まあなあ……(惜しむらくは、体裁の二文字こそが実は口実だってことで)。ま、お前の心配するようなことにはならんさ。どうせ」

「兄さん?」

ラファルドの白い目線に気がついて、(あわ)ててその先は口の中に仕舞いこむ。
自分も弟も神祇であることを失念してはならなかった。
事態は何も動いていないのに、どうして、剣幕が治まるだけで胸を撫で下ろせるのか――。
そこから何か、閃いてくれたらしい。

「ま、まあ、なれない王宮勤めに、勘ぐられの嵐と、大変な事ばかりだとは思うが、任務に(はげ)むのが一番だぞ! 精勤する姿を見せることが一番効く薬だ。解ってるだろ?」

「何か、妙なこと――(たくら)んでるでしょう?」

無表情で、目だけを光らせて、クリスファルトを(のぞ)き込んで来る。
不味い! と、思ったのは一瞬で。
そして、人に()まれているという点ではクリスファルトの方が圧倒的に場数を重ねていた。

「……そりゃ、ね。お前にはまだ内緒にしてたけど、最近、ソラまで(きざ)しを見始めたしな」

「ソラスが?!

ラファルドが目を丸くし、表情から剣幕が抜け落ちる。
六番目の弟、フィルグリム=ソラス=セルゲートは現時点における血族最強。ラファルドといえど(あだ)(おろそ)かには(あつか)えない。

「……そうですか……、では、いよいよ星詠みが形に――」

「だろう? もう、手をこまぬける状況じゃない。企まずに居られるかよ!」

最後の言葉には少なくない本音が籠った。
だからだろうか。

「兄さん」

久し振りに見る、可愛い弟の顔だった。

「解ってる! 親父に話は通しておくよ。読み解きじゃあ、(いま)だに太刀打ちできないしな」

蟄居したとはいえ、長らく辣腕を揮い続けて来た父ディムガルダの影響力は今尚健在である。

「お願いします」

話が一段落したと判断して、今度は自分の愚痴に付き合ってもらおうと思った。

「……なあ、ヴァル。俺達は――いや、我々神祇(じんぎ)は、元より異能の血族。国の為に役に立つことを宿命づけられている」

なのに。

「迷惑です! 止めて下さい。家を出た以上は、関係ありませんから!」

兄の気持ちをちっとも斟酌(しんしゃく)しない弟に、流石(さすが)に青筋を抑え切れない。

(……お前なあ……。家を出た程度で、俺の弟だという現実から逃げられたと思うのか? だとしたら――甘い。激甘だ! 天が許し地が許し、親父が許したとしても、この俺が! 許さん!!

神祇と認められる異能者はただでさえ数が少ない。
けれど、セルゲートの家が負う役割と責任は減らない。(ゆる)められることも無い。
減れば減るほど残された一人一人に掛かる圧は重くなる。
そんな状況で勝手に家を出ておいて、後は知りませんなんて屁理屈は通らない。
家を離れても兄弟ならば、家を離れても助け合うべきだ。
だから、容赦(ようしゃ)なく、引きずり込む。
ただ。
かつて血族最強として才覚を発揮し、セルゲート家を統べていた父ディムガルダ。
弟ラファルド=ルヴァルが一番よく父親に似ていると評価されるのは、気性や容貌に関してだけではない。
館内(やかたうち)における実務能力にも若さからは不似合いなほど卓抜した部分があり、館を出る前から太刀打ちを許してくれない弟だった。
館を出て半年になる今尚、許してくれない弟だ。
そして、一番鳴り響く評判が可愛(かわい)げの無さ、である。

「……しかし、なあ……。なあ、ヴァル」

「クリス兄さん」

クリスファルトは本能的に居住まいを正した。

「何かな?」

「了解して頂きますから。今回の件は体裁だけで、縁談では、断固! ない!! と――。いいですね?」

(断る!! 館を出たら出たで、セルゲート一門を支えていく責務がお前には在る!! ――と、面と向かって言えたらなあ……。喧嘩して親父の心労を増やすわけにも、なあ。さて……、どうするか!)

可愛いけど可愛くない弟を丸め込むための算段を(めぐ)らせようとして。
想定しない横槍が、盛大に命中した。

「――?!

応接間の扉が爆発したような勢いで開けられ、ドアノブが壁に激突してめり込んだのである。
作法が(はば)を利かせる宮城内部で発生した作法を頭から無視した異常事態に、兄弟揃って絶句してしまった。

「大変だ――! ファル!! 緊急事態!!!」

緊急の案件が発生した、それは解ったが――。それを持ち込んできた少年――弟の悪友として見知っているグラディルの(なり)もまた、凄いの一言(ひとこと)に尽きた。
腕に身体に、幾人もの侍女や騎士がしがみついている。それらを引きずりながら、なお仁王立ちが(くず)れないとは。
さっきまでの弟に負けないくらい興奮した状態で、地獄から()い出ようとする亡者の如く弟に迫っていく。
当のラファルドは事態が呑み込めなくて、ドン引きしていた。

「――え? そ、――ええ? な、なんなの?? き、きんきゅ――、って、何?」

「あの、馬鹿王女!!!」

作法をガン無視した入室の阻止(そし)に失敗した侍女と騎士が真っ青な顔で逃げていく。
私(俺)はこの暴言は聞いてません!! という自己主張だろうか?
いや、クリスファルトの存在に気付いた途端、ほっとしていた。
つまり、下駄を預けて行った――責任を押し付けて行った、訳だ。
困る。非常に、困る。
兄は弟に下駄を預ける訳にはいかないのだから(預かってもらいたいけれども)。
そして、流石にラファルドも顔を青くしていた。
というか、初めて見た気がする。泡を喰った顔なんて。

「ちょ、ちょっと――いきなりどうしたの(流石に馬鹿呼ばわりはよろしくないんですけど!! フォローが難しいし!!?!

「一人で!! 王宮からとんずらかましやがった――!!!」

「な、何だって――?!!」

確かにそれは一大事で、緊急事態だ。
そっと、弟を(うかが)う。
……あれは間違いなく、キレた顔だ。

「急ぐぞ!! 馬鹿王女捕まえて、引きずり戻して、説教だ!!

「そうだね!! ――あ、でも、ちょっと待って。あと少しで兄さんから言質(げんち)が獲れ――」

「んな暇は()!!!」

ラリアット同然の勢いでラファルドの首に腕を回し、あっという間に連れて出てしまった。
挨拶(あいさつ)する(すき)さえ、(ろく)に無い。
(あき)れるべきか感嘆すべきか判断に困る、聞きしに勝る猪突猛進ぶりだ。

「……あれが、勇者の忘れ形見(がたみ)か……。言質を取られずに済んだのは礼を言いたい、かな?」

けれど、嵐の直撃を受けたような応接室の惨状(さんじょう)からは目を逸らしたい。
(みずか)らに非は無いが、賠償(ばいしょう)請求窓口はクリスファルトで確定である。

「クリスファルト=セルゲート様、陛下がお召しに御座います」

近衛の隊章を着けた騎士が部屋の惨状を無視して、クリスファルトに一礼した。

「承知」

無風の水面のように沈着した返答には、弟に押されていた兄の顔は無い。

「申し訳ないが、着衣の乱れを直す時間を頂きたい。なので、伝言を願えるかな?」

(かしこ)まりました。先導を(たまわ)っておりますので、お直しは迎えに戻るまで、にお願い致したく」

「了解した。では――別件共々、状況は走りだした――と」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み