第60話◆マイペース~犬と猿(2)

文字数 4,764文字

「――なっ!?

(てき)も味方も(一名を(のぞ)いて)絶句(ぜっく)させた怪異(かいい)な事(しょう)の中心に、グラディルが居た。

「……まさか……、無(きず)――?」

公国(さい)強の英雄(えいゆう)である国王が呆気(あっけ)に取られていた。

(えい)兵の装備(そうび)こそボロボロだが、グラディル当人には負傷(ふしょう)(かん)じさせる空気も身体(しんたい)兆候(ちょうこう)も存在しない。
強度においても、耐久(たいきゅう)(せい)においても、基本、金(ぞく)(おと)る生身の肉体が無事、というのは()常識(じょうしき)範疇(はんちゅう)である。
これが(ぎゃく)ならば、当(ぜん)の結(まつ)
(りょう)で再起可能。そんな状態(じょうたい)で一命を取り()めていたのなら、教官だろうと、英雄だろうと、上首尾(しゅび)だと(かく)実に()める。

「かったりぃ真似(まね)してくれやがって――!」

退屈(たいくつ)そうに不満を(こぼ)し、使い物にならなくなった装備を素手で(・・・・・・)壊し、()ぎ取っていく。

そんな異(よう)(まか)り通る心当たり――が、国王には在った。

「……()いでいたか……! (りゅう)の血を――」

爛々(らんらん)たる光を宿す目、無風の場所で、風に(あお)られるように()き上がる(かみ)
(じん)常とは言いかねる兆候がグラディルの(ずい)所に(あらわ)れていた。

不自由から解放された、そんな風情(ふぜい)の弟子を国王はじっと見つめる。
泣いているのか、笑っているのか。(はん)別に(こま)る顔をしていた。

何時(いつ)からだ?」

国王は()り向きもしないが、答えを持っている人物は一人しかいない。

「半年ぐらい前ですかね。あれが出来るようになった途端(とたん)、勇者試験(しけん)を受験する!! とゴネ始めまして……。散々(さんざん)、反対したんですけどね……、押し切られました。陛下こそ、よく()存知(ぞんじ)で」

ラファルドは、グラディルの(げん)状を”竜の血”の力によるものと確信する理由を(たず)ねた。
当のグラディルからは、家族以外には秘密(ひみつ)だったと聞いている。

顔はともかく、国王の声には感傷の欠片(かけら)も無かった。

「知らいでか。あの力で(もっ)て『俺を勇者と(みと)めろ!』と(せま)って来たのが、()(はじ)めての弟子だ!」

なんて、(こわ)い物知らずな……!! と、ラファルドとセレナスは表情で語る。
(たん)なのか、無(ぼう)なのか、卑俗(ひぞく)なのか。さっぱり、判(だん)が付かないからだ。

勇者試験の主(さい)は公国。れっきとした国家試験の一つなのだから、当然と言えば当然である。
けれど、勇者の公(にん)(もと)めて、国王の元に直(せつ)()し掛けるのは上(さく)ではない。
戴冠(たいかん)から現在に(いた)るまで公国最強の4文字を(わたくし)する国王ガルナードだが、勇者に(ゆめ)を見るのは国主も同じなのか、滅法(めっぽう)きつい(きゅう)()える。
どんな灸なのかは、(だれ)も知らない。
けれど。
ラファルドは知っている。

「もうすぐ勇者試験……か。また、ぞろ、余(けい)――っと。(みょう)な仕事が()えるんだよなあ……」

と、父や兄たちがぼやく声を。そして、兄たちに至っては顔が(かた)い。
縁起(えんぎ)でもないものを見せつけられるのが解っているかのように。
そして。
セレナスも知っていた。
父親から灸を据えられた受験者は、例外なく、受験を()退することを。
加えて、聞くとはなしに聞いてしまったぼやきが在った。

「陛下にも困られたものだ……。お(はら)()ちが解らないとは言わないが……、何も、ああ効率(こうりつ)よく、受験資格(しかく)所持者を壊してしまわれなくても(・・・・・・・・・・・)、良いだろうに……!」

と。

青い顔で視線(しせん)()らしたセレナスに対し、ラファルドは(おそ)る恐るという顔ながら、相槌(あいづち)を入れた。

「返り()ちにはした……、んですよね……?」

国王がグラディルの父親に勝ったという前(てい)で話すのは、知っているからだ。
蟄居(ちっきょ)中の父――血族最強として辣腕(らつわん)(ふる)った先代当主、が、ただ一人認める(親友(けん))武人だという事実。
そして、その実力を、片鱗(へんりん)だとしても、()の当たりにしたことがあった。

思い出となって(なお)(はらわた)()えくり返るのだろうか。
公国の英雄の顔には、(かす)かながら、(いか)りが(ただよ)っていた。

「当然だろう! 脅迫(きょうはく)まがいの真似は、『勇(かん)』とは言わん!!

「ですよね……(もしかしなくても、()た者親子かあ……。返り討ちに()ってなかったら、だけど)」

(しょ)戦で敗退していなければ、(いくさ)(ためし)何処(どこ)かでひけらかしていた確信があったラファルドの何処かほっとした顔に、国王は目を細めた。

「お前こそ何だ!? 何故(なぜ)、あれを放()する!」

「……陛下?」

ラファルドは国王を見上げた。
思う以上に危険(きけん)なものだと考えていることが意外に思えたからだ。

(はな)持ちならない(くそ)餓鬼(がき)として、有名だったからな。(ころ)すつもりで行って、(ちょう)度いい灸になる。そう考えたんだが……殺せなかった。おかげで、弟子として監督(かんとく)する()目になったんだが」

()体的な名詞は出てこないが、グラディル父のことである。

後悔(こうかい)されておわされる――と?」

透徹(とうてつ)したラファルドの眼差(まなざ)しに、国王は苦笑(くしょう)を返した。

(おれ)の親友――お前の親父が居て、そんなことになると思っているのか?」

意外な会話の流れに、セレナスが二人を()り返る。しかし、加わらなかった。

「…………。……いえ、そこまでは――心配してません……けども……」

何を思い出したのか、ラファルドは目を逸らした。

しかし、国王は自分を見(そこ)なった(ばつ)として、拳骨(げんこつ)でラファルドを制裁(せいさい)する。

「……で? お前はどんな(こん)胆で、あれを放置している?」

ラファルドはグラディルに目を向けた。

「異能といえど、力ですからね。神通も、竜の血も。最低一度は、正面から向き合いませんと」

「……ならば、何故、戦の試の初戦で使わなかった?」

グラディルの監督(かんとく)役と看做(みな)していればこその(きつ)問だった。
だが、ラファルドの口元が無自(かく)(ゆる)んだ。

「さあ? 先手(ひっ)勝! しか(・・)考えていなかった(・・・・・・・・)のは(たし)かなようですけれど」

国王は目を(またた)かせた。
()けば終わる伝家の宝刀を使わない――その理由が、まさかそんなこととは、理解し()ねたからだ。
……使っていたらいたで、別種の(きゅう)()えねばならないことに頭を痛めただろうが。

「――では?」

「使えば、レッドブレード相手でも(おく)れは取らなかったでしょう。初戦(はい)退も、れっきとした実力、ですね」

何処か(よう)気で、しかし、間(ちが)いなく獰猛(どうもう)()みが国王に浮かぶ。
機嫌(きげん)のいい時にしか出てこない笑みだと、(むすめ)は知っていた。

「……そうか――!」

『…………ファール……! 手前(てめえ)……!!

(そういえば、あのモードになると、感覚が妙に(するど)くなるんだっけ……!)

回線を通して(とど)いた、グラディルのくぐもった声に顔を(しか)める。
面倒(めんどう)(くさ)い時は徹底(てってい)的に面倒臭いグラディルだ。
こじれの()は的確に()んでおくことが肝要(かんよう)だった。
自分の事情に付き合わせている負い目もある。

『何?』

『また一つ、増えたな。最新ネタで! 処刑(しょけい)(らく)印が!!

名前こそ仰々(ぎょうぎょう)しいが、要は、グラディルが何時か何処かで絶対に報復(ほうふく)しちゃる!! と決めている案件(あんけん)のことである。……正義の在り()は、(かなら)ずしも保(しょう)されていない、のが味噌(みそ)だが。

『……へえ。そんな()大層(たいそう)なもの、()()んでたんだね……』

ラファルドの目が半分になった。

話の通じなさに、グラディルは()()りたくなる。
せめて、「御免(ごめん)ね♪ てへっ♬」ぐらいは(あり得ないと解ってはいても)期待したかったのだが。
国王――師匠(ししょう)が(グラディルにとって)悪(らつ)な事を(たくら)んでいるのが明白だったからである。
余計な事を、余計な(やつ)とくっちゃべってんじゃねーよ!! と言えなかったのが敗(いん)だった。

『ぐあっ(自覚無しかよ)……!! ……手前……っ! 俺は(わす)れてねえからな! お前が俺に働いてくれた、非道の数々……!!

『はあ――?』

そんなこと、したっけかな? が、ラファルドの本音である。

『――俺様を雑魚(ざこ)(あつか)いする(つみ)は重いっ!!!』

いよいよ、不(おん)の暗雲を(まと)い始める(声にだけ)グラディルとは対(しょう)的に、ラファルドの中では、何かがすとん、と落ちた。

「なんだ、そっちか――」

俺の扱いをもっとマシにしろ!! という要求なら、いつものことだった。
()に受けては割に合わないこと(はなは)だしいので、(きゃっ)下以外の選択肢はあり得ないのだが。
ピンと来なかったのは、何故、このタイミングで? だった。
しかし、それも、戦(とう)開始のカウントダウンに待ったを掛けているだけの現状では些末(さまつ)疑問(ぎもん)()ぎない。

「?」

思わず、声に出してしまい、(せん)用の回線の存在を知らなかった国王と王女が疑問()を投げる。

(心配して、(そん)した……!)

「なんだとはなんだっ!!?

ラファルドの本()にキレたグラディルが回線を放()して、肉声を選択(せんたく)する。
逆立(さかだ)ちしても届かなかった父クレムディルが、(おこ)らせないように、慎重(しんちょう)に立ち回っていた相手、それが現師匠の国王である。
中々実力を見せてはくれないが、ヤバい!! ということだけは解っている。……本能で。

戦場に居る現状を忘れて私情に走るから、「なんだ」扱いになるんだとは、ラファルドは言わない。

「それじゃあ、最短記(ろく)(こう)新、頑張(がんば)ってね?」

笑顔をおまけしておいた。

当然、グラディルはキレる。

「――んの野(ろう)っ! 俺様()めてっと――」

ラファルドは(きば)()ぐ代わりに、笑みを(ふか)くした。

「きちんと(おぼ)えてるからね! 君が散々に()み上げてくれた(しゃっ)金の数々――」

「――えっ?!

??

(こう)直するグラディルと、疑問符の数をさらに増やした国王とその娘。

ラファルドは遠(りょ)なく(たた)みかけた。

「その(ほとん)どを、(ぼく)肩代(かたが)わりしてる、ってこと、忘れてないよね?」

「――――」

「一度は、(やかた)(にわ)崩壊(ほうかい)したっけね――。あの時は肩身が(せま)かったなあ……! 弟たちからも顰蹙(ひんしゅく)を買ったし、兄さんたちからは小言(こごと)(もら)って、父さんには灸を据えられたっけ――」

「――え、……あ、いや――それは、!! つか、こんな場所でバラすな――」

グラディルは(あわ)を食っているが、戦闘はとっくに始まっている。
怪物の攻(げき)、その(ことごと)くを不可視の(かべ)――ラファルドの結界、が(しゃ)断しているのが現状だった。
ちなみに、グラディルは(かま)え一つ取っていない。勿論(もちろん)、立()()し――借金、の積み上げだった。

「そっかー、借金に返済期(げん)(せっ)定できる日が、ついに来たんだね――。ほんと、(うれ)しいよ」

ラファルドは((とど)めとばかりに)にっこり(わら)う。

「――――」

呆然(ぼうぜん)としているグラディルの目の(はし)に、(なみだ)(にじ)んだ。

「……()ってあげてもいいよ? ラディが、どうしても!! って、(たの)むなら」

グラディルは間髪入れずに反応した。

「無利子でお(ねが)いしますっ!! どうしても!!!」

そして、ラファルドは傲岸(ごうがん)(そん)な支配者に()けおおせたのである。

「だったら、解ってるよね? あれをどうするべきか」

仕草で、結界相手に格闘戦を続けている怪物を指し(しめ)す。

怪物が滑稽(こっけい)な一人舞踊(ぶよう)めいた真似を続けているのは、()げ場――()物を別に見出すこと、すら、ラファルドの結界で閉ざされているからだ。

「はいっ!!!」

「…………」

国王は処置無し、と二人に呆れ、王女は(がく)然と二人を見つめていた。

「もし、成長の見えない真似をしたら――」

(せい)心誠意! 全力で(……くっそー……っ)!! (いど)ませて頂きますっ!!

(ぜん)身全(れい)でしょ、そこは……!」

敬礼(けいれい)する負け犬に、勝ち犬は面倒臭かったとため息を(こぼ)す。

「……お前達……!」

呆れた日常を()かし見つつも、目の前の怪物を出汁(だし)にして(さら)なる成長を(うなが)し、実力を(はか)ろうとする意図を()んだ国王は呆れるだけで済ませたが。

「でしたら――、とっとと! お片付けあそばしませっ!!

そのすぐの(かたわら)の間(けつ)(せん)は盛大に(ふん)出したのだった。


「……だっとよー……、畜生(ちくしょう)っ……! 増えるばっかりで、一(こう)()らねえじゃねえか! この借金!!

(すさ)んだ空気を纏い、うんざりした表情で、(あらた)めて怪物を(にら)みつけた。

「雑魚が……!! ()様が生贄(いけにえ)の手始めだっ!!

(じゅう)毛がより合わさって細く(とが)り、幾筋(いくすじ)もの(やり)となってグラディルに走る。
攻撃を(はば)んでいた壁は、消えていた。

グラディルを(つつ)むような(かがや)きが生まれ、全身の輪郭(りんかく)が一(しゅん)(ゆが)んだ。

怪物の()り出す槍が――グラディルの背後から(せま)っていた物まで、一本(のこ)らず破壊される。

!! …………っ!!!」

(うな)る怪物を前に、グラディルは(ゆう)然と(たたず)んでいた。

「精々、()えろ。どう足掻(あが)こうが……、木っ()微塵(みじん)だ(俺様の、せめてもの()()らしにっ)!!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み