第42話◆昼食を摂りながら(2)・・・改
文字数 2,820文字
畳みかけようとするラファルドに、国王は渋い表情を変えなかった。
「いいや、まだだな」
「……まだ、ですか?」
ラファルドの問い返しに答えを出したのはクリスファルトである。
「状況が違うからな。先日は先方の
「あれ……?
グラディルの指摘にクリスファルトは苦笑した。
「返信が出来たなら、正しいよ。殿下の御提案は公国が能動的に動くということだ。
兄が視線で話を振ると、弟は醒めた表情になる。
「……そんなに大した問題ですかね? 矢
ラファルドの率直な皮肉を笑みという形で
最終決定権を持つ国王に変化は無い。
「
異能を誇るセルゲート家だけでは足りない。
つまり、魔族に詳しい(頼れる)協力者が欲しいということだ。
「それも、問題ありませんわね?」
セレナスが
「はい。
「何?」
「では、お父様。魔王陛下に反抗する勢力が先日の失敗で
「それは――、……」
考え始めてほどなく、迷惑そうな顔でラファルドを
解りようがない話に加えて、再襲来を確約されたと気づいたからである。
しかし、ラファルドの澄まし顔は曇らなかった。
「懲りたどころか、かなりの確率で第二弾を仕掛けて来る――と、言えるでしょうね。先日の騒動は先方にも小手調べ。人間の国
クリスファルトが目を丸くする。
「……それは、魔王陛下の動向が敵対勢力に
「帰りがけの釘刺しは、魔王陛下も敵対者の正体を知りたいから、だと」
「……そっか、解ってんならお手打ち
グラディルは納得で終わったが、公国の
「我が国への飛び火もあり得ん! 婚約云々以前に、謝罪と
嫁取りこそが口実で、セレル=アストリア公国を(自身の)騒動に巻き込むことが本命だったと看做されても仕方が無いのである。
ふと、グラディルが首を
「――あれ? なんか、とっくに
クリスファルトは頭痛を覚えたように表情を
「不快だ!! 極めて、な」
国王は断じた。
語れない事情があったとしても、公国に対して不誠実だと見做せるだろう。
「……つまり、
クリスファルトは疲れたようにため息をつく。
先日の会見が見せ始めた別の顔は、想定を超える難事を意味するかも知れなかった。
加えて、第三王女の目論む
「それだけではありません。現状一番の下策は、魔王陛下の求婚は断ったのだから、反魔王勢力が公国に仕掛けてくる理由も無くなったと思い込むこと。ただし、一番厄介なのは魔王陛下に反抗する勢力の正確な動向を具体的に
見透かしているかのようなラファルドの言動に、国王のむっすりがむっつりに進化した。
「そうだ!」
「ならば尚のこと、魔王陛下を出汁にされることをお
「本腰を入れて、魔王陛下と公国の仲を引き裂きに来る……か」
クリスファルトが
「種
グラディルの食事の手が止まる。
「……ひょっとして、魔王に恩を売れる、とか? そういう話――!?」
「そこまで持って行ければ、理想的かな」
「理想……? そこまでやらなかったら、意味が無いだろう?」
首を傾げるクリスファルトに、セレナスがため息を聞かせた。
「問題は、首尾よく釣り上げに成功したとしても、
こればかりは、事前に詰め切ることが出来なかった――と、続くはずだったのだが。
「……なーんだ」
驚いて損したとばかりのグラディルに邪魔されてしまった。
「……猿扱いすら、上等でしたとは……!!」
消火剤を投げ入れようとしたラファルドよりも早く、国王が笑った。
「ほほう。やるだけ無駄だ、と?」
(……うーん……。弟
クリスファルトの関心に気づいたのか、気づかなかったのか。
グラディルは丸っきり動じなかった。
「無駄とは違うだろ。分銅まで揃ってりゃ、完璧だ!
「それで?」
国王が不機嫌にも見える顔と無表情な声でグラディルを促すと。
「……んー……やってみる価値は……在る……、かなあ……もぐ……」
意外にも、歯切れの悪い答えが返って来た。
「価値が無いものをひけらかすほど、暇ではありませんわ! ……猪突猛進でない事は、褒めておきますけれど」
(まあ、決定権は陛下の物ですものね。奥歯に物が
加えて、事前の打ち合わせではグラディルは席を外していたのである。
客観的に評価できるのであれば、現状、文句をつけるほどの事でもない。
主人である
セレナスにとって興味深かったのは、場を
(理論と
てっきり、ふんぞり返ると思っていた娘をちらりと一瞥すると。
「……ふむ。時節柄、縁談を
国王の独り
「お! やるんだ? 本決まり?」
だが。
「誰がやると言ったか!」
一番肝心な、公国の最高主権者が