第85話◆介入

文字数 5,175文字

(ちゅう)()かぶ外套(がいとう)の男は冷たく世界を睥睨(へいげい)していた。

「とんだ茶(ばん)よな……。せめて、我らの役に立つといい……!」

(しっ)黒の(とばり)が、作(せん)(かく)を押し(つつ)むように()りた。


「――?!

ぐしゃり。

(たて)物も、人も、道()も、植木も。あらゆるものが一斉に押し(つぶ)される。
悲鳴(ひめい)すら無いほど一(しゅん)で、粉々(こなごな)にされた上に()(たいら)()された。

「……さて。何時(いつ)まで、何処(どこ)まで、()(かく)れが出来るものやら――」

フードを(かぶ)り、仮面をつけた男が(つぶや)く。
目にこそ感情(かんじょう)が無いが、声には何処か(さび)しさに()た何かが(ただよ)っていた。

そこに。

「ほう? 生憎(あいにく)と、()()びていたのはこちらも同じでな?」

好戦的な、若さを(のこ)す男の声が(とど)く。

「――!?

(はじ)かれたように顔を上げた瞬間を、(ぎん)色の光(だん)(ねら)()たれた。

光弾は(あやま)たず頭部に命中し、その正体――初老の魔族を、狙撃(そげき)者――魔王ゼルガティスの前に(さら)け出す。

「…………成程(なるほど)? ジェナイディン。(きば)()くのが()様とはな……!!

魔王の声には明(かく)(にが)い物が在った。


(……なぜだ? フォルセナルドはともかく、サティスといい、ジェナイ、貴様といい。――なぜ、(おれ)に牙を剥く――!?

晩餐(ばんさん)会場でフォルセナルドが言い放ったように、ゼルガティスは信(ぽう)されない魔王だ。
一つは「王」の血統(けっとう)()がない魔王であること。
一つは正確な(うじ)素性(すじょう)が不明(りょう)であること。
一つは”王位継承(けいしょう)”の(さい)、先代魔王を(ころ)したと(ささや)かれていること。
反発される(おも)な理由は上記三つだが、一方で、ゼルガティスを高く評価(ひょうか)し、親身にとまではいかなくとも、サティスのように、心を開いてくれた魔族も存在していた。

ジェナイディンは高位魔族の一人として、親魔王ゼルガティス(せい)力を取りまとめ、(しつ)事のような立場で動いてくれていた人物だった。
内においても、外においても気()まりがちなゼルガティスに、花(よめ)(さが)しを口実に”もっと外を見て来い”と(けしか)けた(はん)人でもある。

それが――、なぜ?

(だれ)の許しを得て、こんな勝手な真似(まね)をしでかす?!

「……ぃ、おお、これはこれは! とんだ粗相(そそう)をお目に掛けましたかな? 陛下。しかし。なぜ、許可が必要なのです? 人と魔は(あい)()れぬもの。私以外の許しを得る必要(ひつよ)など、何処に?」

悪意と(きょう)気が(にじ)台詞(せりふ)をゼルガティスは冷たく見()えていた。

「……そうか。だが、王命はただ一つ。――退(しりぞ)!!

「――――!! ……、ぉぐっ、……!!

(かみなり)()たれたように(こう)直、痙攣(けいれん)し、しかし、(おに)(ぎょう)相で()(とど)まる。

「聞こえなかった((あらが)う、)か?」

(げん)(せま)ると、(つか)の間、ジェナイディンは苦悶(くもん)(あえ)ぎ。

「…………っ、ふぅ、ふぅ、……、――――ふ、ふ、ふふ。その(てい)度か……、その程度で――!!

全身を(はげ)しく(ふる)わせ、不可()の何かを力(まか)せに()(はら)う仕草を見せた。

「――――?! (……(なみだ)?)」

在り得ない物を見る目で、ゼルガティスは昨日までの(・・・・・)配下を見る。

魔王の()光が、高位とはいえ、一(かい)の魔族に(くつがえ)された瞬間だった。

「思い知れ! ゼルガティス!! 貴様(ごと)きは()早、我らの王にあらず――!!

黒い光の柱が、茫然(ぼうぜん)と宙に(たたず)む魔王を(おそ)った。


「……助かった……?」

空中で火(ぶた)を切って落とされた戦(とう)。その真下で、(さら)地同然だった残骸(ざんがい)の下から、人間達が続々(ぞくぞく)と出て来る。
雨後の(たけのこ)も真っ(さお)状況(じょうきょう)だ。

「……、助けられた――でしょうね」

まとわりつく塵埃(じんあい)(たた)き落としつつ、クリスファルトが近衛(このえ)騎士の(つぶや)きに(おう)じた。

(出現に気付いてから帳が下りるまで、一分も()かっていない。(あらかじ)め解っていなければ、対処(たいしょ)のしようが無いレベルだ。おまけに、初見になる術――か)

(みと)めたくはないが、自身だけでも守りきれたなら、上出来! という状況だ。
それが、土(まみ)れでも、無(きず)な人間達で(あふ)れかえっている。
自分でもラファルドでもない、外から作戦状況を俯瞰(ふかん)していた術者が介入してくれなければ在り得ない現状だった。

「……だな」

「陛下!!? ()無事で――?!

声の正体を(さっ)した人間達が()色に包まれる。

そして。

「――っ、だあああっ!!!」

(ごう)快に瓦礫(がれき)()退()けて、国王ガルナードが姿(すがた)を現した。

自身の出現の巻き()えを()らった数人を助け起こし、自分にまとわりつく土砂を払う。

()程の状況にならない(かぎ)りは、魔族が(から)んで来ても静観(せいかん)(ねが)う。そう(たの)んでおいた甲斐(かい)が在った――ということだな」

(かん)声も束の間、続々出て来る人間――騎士団員、衛()達、の人(いん)(せい)理が始まる。

クリスファルトが国王の身体(しんたい)チェック(怪我(けが)異常(いじょう)が無いかどうか)を始めた上空で、黒い魔術光が炸裂(さくれつ)した。

「しかし、”仲間()れ”とは――」

ちらりと上空を一(べつ)し、(はた)迷惑(めいわく)だと不満を(こぼ)す。

公国の英雄(えいゆう)微笑(びしょう)で応じた。

「一枚岩ではない――魔王陛下自身の言だったか? 『真実で御座いましたな』宰相(さいしょう)(やつ)なら、他人(ごと)めかせて感心したろうよ。(とし)を食ってるだけあって、可愛気(かわいげ)()けるからな」

「……宰相殿を()ねさせる()らず口が叩けるなら、大丈夫(じょうぶ)で御座いますね!」

チェック完了(かんりょう)(心身共に(けん)常)の合図に、クリスファルトは国王の(かた)を叩いた。

「そんなことより、(りゅう)(ほか)の魔族だ!! ”(くつわ)”を取り(もど)さないことには――」

国王の言葉で、騎士達が一気に活気づいた。

そして。

「――――!!

人間達の大集団から(すう)m(はな)れた場所で、瓦礫の(ふん)火が発生した。
その中から、咆哮(ほうこう)(とどろ)かせながら白い竜が出て来る。

!! ――、……あ!? 人(じち)が――居ない?!

「何だと!?

騎士の一人が(さけ)んだように、竜の両(うで)は空っぽだった。

そして、人間の注目が集まるのを(いや)がるように、白く光る、不可思()な形状の図面のようなものが(あら)われる。

「陛下!!! (みな)の者――!!

クリスファルトの絶叫(ぜっきょう)が合図だったように、図面から(まばゆ)い光の(ほう)弾が(あらし)のように撃ち出された。


(…………誰? ……誰? ……誰が――誰が…………)

(ふか)い水の底に横たわるように動かない身体で、誰かの声を聞く。

その声は遠くから(ひび)くようであり、耳の(そば)で囁かれているようであった。

『――おお! 我が君よ!! 口()しきは、口惜しきは我が身の不甲斐(がい)なさ、力の無さ……!!

耳に(とど)くもの、それは――(うら)み。そして、(なげ)き。

そして、声を聞く者は一人ではなかった。

水中のように光が()らめく、しかし、暗い空間には、(かべ)()り掛かるように身体(からだ)を投げ出している(くっ)強な男が居た。

(あきら)めろ。それは”(うん)命だ”。どれほど()がれようと、届くことは無い」

ぼろを(まと)う、半()の男らしき人影が何かを、誰かを、何処かを見つめていた。

黄金に(かがや)く目には感情が無く、顔はあらゆる嘆きと(いか)りと絶(ぼう)とが()り切れた名残(なごり)のような気配を(ただよ)わせている。

『……るものか、なるのものか、なるものか! このまま、我が君の()心に(くも)りを(のこ)したまま、食い千切(ちぎ)られてなるものか!! 我が(ちか)い、無(ざん)にも踏みにじられてなるものか!!!』

(……今、……のは……?)

大事な何かが聞こえた気がして、()切れ途切れの意(しき)で耳を(かたむ)ける。

「小(ぞう)、お前も(ねむ)れ。()いたことろで間に合わぬ。届かぬまま終わると『決められた』嘆きよ。耳を(けが)すな」

男は遠くを見ているようでもあった。

(……今、のは……ねが、い…………?)

『なるものか! なるものか!! なるものか!!! このままの終焉(しゅうえん)など――!! (かなら)ずや、我が君に(むく)いねば!! たとえ、それが――我が君の手にかかる結末(けつまつ)、であろうとも……!!

(……これ、は………これは、………こ……れ……は……)

明確にはならない意識。さりとて眠るには気がかりで、声に耳を傾ける。

ぼろを纏った男がいつの間にか傍に立っていて、踏みにじられてなお途()えることを知らない(ぞう)悪を(たぎ)らせたような顔で見下ろしていた。

「眠れ。さもなくば、去れ! この嘆きは……、この絶望は――、この、願い(・・)!!

聞こえる声の正体に気付いた。

(ああ……これ、は……、い……の、り……!)

(かな)えられては、」

(いな)!!!]

(じん)な言葉と共に「世界」が()れた。

揺れの(おさ)まりと共に、「世界」の明るさが()す。
真夜中が夜明けを(むか)えたように。

「貴様?! ――――、なにゆえ、此処(ここ)!!

男の声には絶()と共に、忌々(いまいま)しさが宿っていた。

(なんじ)、――――よ。足掻(あが)くが良い。()ける願いが在るのならば。(ほこ)るべき誓いが在るのならば! 何に置いても代え(がた)(いの)りを宿すならば!! 聞き届ける者ならば、これに]

「誰か」が、死体のように横たわる――を指し(しめ)す。

しかし、それが見えることも、それに気づくことも無かった。

「馬鹿な!! 此処は()えねば。忸怩(じくじ)たる汚辱(おじょく)を被ってでも、耐えねば――!!

(とが)める声で、やる(かた)無い憎悪を叩きつける顔で、男は迫る。

声は何処までも落ち着いていた。

[あれが(よく)を欠かねば、な。貴殿の言う通り、万難(ばんなん)(はい)してでも耐えるべき(とき)だろう。だが、あれは手を放した。(おさ)えねばならぬ手を開いたのだ]

――は、声に願いを掛ける。祈りを(かさ)ね合わせる。

(……い……の……り……、どう……か――、とど……き、ま……す――――よ……う……)

「――――」

泣き()らした目と顔で、男は水の(そこ)に佇むように眠る――を(にら)んだ。

[ならば、(まっとう)うせねばならぬ。全うされねばならぬ。貴様、――――よ。もう一人の――よ。我ら共に願いを聞くもの……祈りを聴くもの……!]

「助かることは無いぞ? 願う者は消える。祈りの(みなもと)は――、()ちる」

男は不本意だと言わんばかりだった。

だが。

『解っている……! あれは――、あれは、我が手には()えぬもの。(いく)万、幾(おく)(つぶ)()り集まろうとも太刀(たち)打ちなど叶うまい……。だが!! それは理由ではない! 理由にはならない!! 踏みにじられることを甘受(かんじゅ)するなど、甘受させられるなど! ……それを、押し付けられて、異議すら(とな)えられぬ理不(じん)を、()まされねばならぬ理由になど!! ならぬ!!!』

男は打ちのめされたように、我に返る。
(わす)れていたものを()みしめるように、忘れていたことを()いるように、(くちびる)を噛んだ。

「…………仕方ない。許そう。我らは共に、祈りを聴く者。だが――! だからこそ、許さぬ!! (のろ)いなど()()らしてみろ――その(たましい)、生まれたことを幾度悔いても()()らぬほど()()いて、()びとさせるぞ!!

そして、男は元の位置に戻り、もう、何の関心も無いとばかりに目を閉じた。

『……ああ、我が君よ……! 惜しむらくは、我が命。我が命はもう――! ……いや。まだだ!』

[そうだ……! 足掻き、願い、祈れ……!! 生在るならば、生在る限り……!!

「世界」の明るさが増していく。夜が明けていくように。

『まだだ!! 我が誓い、(いつわ)りなどではないと(あかし)立てねば――! それこそ、それこそ――!!

ただじっと、ただそっと。声を聴いた。

(……だ……い……じょう、ぶ……あ……せら……ない……で。……と……ど……く、から――)

「世界」が(くら)くなる。意識が(やみ)へと呑まれていく。

『我が一()……! 必ずや、報いて見せる……! 我が君に悪意為す(かたき)――我が怨敵(おんてき)の姿――! (さら)け出して御覧(ごらん)に入れましょう!! ……ああ、どうか、我が君よ……! 我が(つい)なる(ほう)公を……どうか、お許しくださいますよう……! ……ああ、我が君、ぜ………る』

そして、声は聞こえなくなった。


「……まさか、な。(そむ)くからには相応の覚悟(かくご)が在るとばかり……。本気で、この程度か……?」

魔王ゼルガティスは、ジェナイディンの一撃を(かわ)さなかった。
その身で(もっ)て、受け止めたのである。

しかし、結果は――無傷だった。

(……()(ごま)だ。これも(・・・)、捨て駒だ。(やいば)は、届かねば意味が無い。刃を向けるからには傷を負わせられねば意味が無いのだ。つまり……、ジェナイを差し向けてくることこそが俺への――。誰だ……? 誰が俺に、悪意の弓を()いている――!?

「………ぐっ!!

ジェナイディンは魔力で黒い(けん)を作り出し、(しゃ)二無二()りかかる。
けれど、どれだけ(ふる)おうとも魔王ゼルガティスにはかすり傷一つ、つくことが無いのだった。

顔面を狙って、大上(だん)()りかぶった瞬間。
ゼルガティスの指先に銀色の光が(またた)いた。

「ぐぁっ――!」

光弾が(かす)っただけで、ジェナイディンは()き飛ばされる。
だが、宙には踏み止まった。
ジェナイディンが体勢を立て直そうとする一瞬で、ゼルガティスは間合いを()める。

(さい)後だ。黒(まく)は、誰だ?」

そして、(ごう)然と見下ろした。

「――――!」

魔王の(がん)光に当てられたのか、ジェナイディンは眩暈(めまい)に呑まれたようにぐらつき。

「……世迷言(よまいごと)を……! 此は我らが(そう)!!

またしても魔王の威光を覆し、魔力の剣で魔王の左(むね)を狙った。

異様なまでにギラつく目で、魔王ゼルガティスに迫らんとする。

「……そうか(一思いに殺せ、と――?)」

呟きに宿る感情は()せていた。

ゼルガティスの(てのひら)に銀色の光弾が生まれ。

(はなむけ)に、くれてや、――?!

掌の光弾が(こつ)然と()き消される。

そして。

魔王の驚愕(きょうがく)を待ち(かま)えていたようにジェナイディンは(わら)い、(じゅん)然たる悪意を曝け出した。
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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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