第113話◆幽けき世界~祈り

文字数 6,328文字

「殿下?」

一番年配の騎士が、場を代表して問いかけてくる。
このままで、大丈夫(じょうぶ)なのか? ということだ。
()めたラファルドは、騎士団(いん)苦労(くろう)(かさ)ねて(ふせ)いでいた激突(げきとつ)余波(よは)を苦も無く完封(かんぷう)して見せた。
それが、突(ぜん)(たお)れてしまったのである。
倒れた理(ゆう)(つか)めていない騎士団員では不安なことこの上ないだろう。
(じき)な所、理由についてはセレナスにも(さっ)し切れていない部分が在る。気持ちはよく解るのだ。
けれど。
セレナスは(おぼ)えていた。
(がん)(おか)された騎士団員を片っ(ぱし)から正気に(もど)して回った半(とう)明のラファルドを。
だから、(かく)信できた。

「……どうやら、神祇(じんぎ)には神祇の戦場が在る、ようですわね……!」

「では?」

「今は、(たたか)いの帰(すう)を見(とど)けましょう」

「しかし、戦闘(せんとう)の余波は如何(いかが)します?」

戦闘が(はげ)しさを()している――余波の強度と破壊(はかい)力も増している、ことを騎士は遠回しに示す。
それは、(ぜん)員が実(かん)している事実だ。

けれど。

「それは大丈夫。此処(ここ)に、神様のお墨付き(・・・・・・・)が在りますもの!」

「……は、あ……」

神祇が神に関わる者だというのは、解る。
公国の騎士ならば知らない人間の方が少な()ぎるくらいだ。
けれど、「お(すみ)付き」とはどういう意味か?
()伽噺(とぎばなし)聖典(せいてん)の中にしか出てこない、名前だけの伝(せつ)上の存在が、何の意味を持つというのだろう?

「聖なる()式とは、神を仲立ちにして行うもの。この聖(どう)が現役の施設(しせつ)ならば、この場での出来(ごと)(すべ)て、神の知る所です。神祇とは神と人の仲立ちとなり、両者を(てき)切に(けん)全に取り(むす)ぶ者、でもあります。私たちの行動が神の意に(かな)(かぎ)り、お墨付きが私たちの安全を保(しょう)するお守りとなるのです! ですから、大丈夫」

王女の微笑(ほほえ)みを見せると、セレナスはラファルドを膝枕(ひざまくら)して、目の前の戦闘に意(しき)を向けた。

そして、セレナス以外の全員の視線(しせん)がラファルドに集まり。

「……はあ……」

(あきら)めたとも、(なっ)得したとも取れるため(いき)(こぼ)した。


「――!?

ラファルドが()ね起きると。

「お帰り。結構(けっこう)、早かったね?」

変わり()えがしなくらい何も無い世界と、(とが)める意図を明(かく)に伝えて来る、(みょう)威圧(いあつ)的な挨拶(あいさつ)()っていた。

(…………ああ、そういえば……!)

思い出したくなかった。出来れば(わす)れたまま無かったことにしたかった。
けれど、戻ってきてしまった。思い出してしまった。しかも、神様の機嫌(きげん)は妙な方向に(ねじ)じれている。
(おそ)る恐る、ラファルドは声のした方向を()り返った。

「…………」

貫禄(かんろく)たっぷりに胡坐(あぐら)をかいている神様と、その()ん前で土下()? (小さ()ぎる(なり)+真っ黒+輪郭(りんかく)曖昧(あいまい)、なので、判別(はんべつ)がしづらい)をしているらしい「何か」が居た。

(……うわあ……、身も(ふた)も無い……)

時間を(かせ)ぐとは言っていたが、ここまで(そっ)直な手(だん)で、だとは思わない。
とはいえ、相手は()がりなりにも神様である。
その場しのぎの美()麗句(れいく)(みつぎ)物で機嫌が取れるとは、ラファルドも考えてはいなかった。

(でも、あれが(ぼく)にも最善(さいぜん)の手かなあ……?)

ラファルドとしては、最後の手段として、自分も土下座するべきかを検討(けんとう)したに過ぎない。

しかし。

()びかけられたようにラファルドを見た神様の目がギラりと光った。

「ならぬ! ()様の土下座は謝罪(しゃざい)看做(みな)さない。()()問に答えよ!!

(くぎ)差し((けん)駄々(だだ))のあまりのタイミングの良さに、ラファルドは直感する。

「(この、間(ぱつ)入れずな感じは)……もしかして、心の声が聞こえる、とかですか?」

「…………」

沈黙(ちんもく)した神様は、何故(なぜ)か顔をラファルドから()らした。

(……ええと、この沈黙は――図星の(あかし)として……、…………?)

何故か妙な心(しょう)()き上がるのは、神様が不貞腐(ふてくさ)れているように見えるからだ。

(不貞腐れている……として。その理由は――多分、心を()んだことに「気づかれた」こと。でも、現(じょう)粗相(そそう)をしでかしたのはこっちが先。……なのに、不貞腐れる……。(よう)するに、粗相した(がわ)が粗相された側に、作法について説教(せっきょう)をかますような状(きょう)が出来た、ってことか。そして、心を読む読まないには、当事者の合意が(から)んでいる、と。でも、僕にはそんな取り決めをした記憶(きおく)はない。つまり、うっかりやらかしてしまった――ってこと? そして、それは(じょう)歩を引き出せる(たね)になる……?)

ラファルドの(きょう)中は、()人の直感に(もと)づく類推(るいすい)でしかない。
神様の(ひたい)(あせ)が見えたとしても、もう少し確(しょう)()み重ねたい状況だった。
なのに。

?!

ラファルドの目の前で、赤く光る丸が明(めつ)した。
『正解です!!』とでも言うように。

そんな真似(まね)をするのは勿論(もちろん)、神様などではなく、(はん)人は最初から一(ぴき)しかいない。

(……成程(なるほど)。でも、あっちも同じなのか。……ひょっとして、意思の()通に肉声が必要ない空間……だとか?)

ラファルドの見当は、神祇として修業(しゅぎょう)を積み重ねた日々が与えた賜物(たまもの)である。
決して、好悪の(かたむ)きが形になったものではなかった。
しかし、()ねる神様は、好悪の天秤の傾きが無自覚に表れた結()だと解(しゃく)してしまったのである。

『……ぐむっ!?

?! ……あ」

土下座中の何かの頭に(なまり)(せい)分銅(ふんどう)らしきものが乗っかっていた。
おまけに、分銅には何故か「5t」と(きざ)まれている。
本当にそれだけの重さが在るのだろうか?
(てのひら)(つつ)()める(てい)度の大きさに過ぎないのだ。

『――ぐ、ぐ、ぐぐっ、ぐぐぐぅ……!!

プルプル(ふる)える頭が反発するように持ち上がろうとする。
当然のように、神様はそれを見咎めていた。

「不満が在るというなら――、直々に膝を追加してやろうか? ん??

(ずい)分、小さなスケールの恫喝(どうかつ)だったが――。

『ぐう……!!

震えが止まって、頭が土下座の位置に戻る。

「最初から、そう、大人しくしておけ」

(なぞ)の存在は服従(ふくじゅう)(えら)んだらしい。

「――で? 貴様はどうする?」

拗ねた視線がチクチク突き()さって来る。

(……うーん……、落とし前を(もと)める威圧は在るけど……どう(ころ)んでも処刑(しょけい)! とかでは無さそうだよね……。求められてるのは妥協(だきょう)、って感じだし。向こうの「粗相」を突破(とっぱ)口にする――のも、有り、ではありそうだけど……)

ラファルドの勘案(かんあん)を見()かすように、妙なテロップが頭の中で明滅した。

『不機嫌入っちまった神様(なだ)めんのも……、(おれ)様達の()上の命(だい)だったりするか……』

犯人は現在絶賛(ぜっさん)お仕置き中の、『(しか)られ仲間』に(ちが)いなかった。

(しょうがない……! 覚()を決めますか――!!

ラファルドは呼吸(こきゅう)(ととの)えてから、現在進行形で拗ねている”神”様に(のぞ)んだ。

「これを、神祇に(くわ)しくない人に話すと(おどろ)かれるのですが――、神祇にとって、神様とのか……いえ、遭遇(そうぐう)、ですね。この場合。(とく)に、予定に無い出会いは、有難(ありがた)いとは言い()ねます。だから、先程、聖堂の御文(おふみ)を『読み上げてしまった』ことを不味(まず)いと感じ、考えました。……多分、命()けになりますから」

「……ふむ?」

「神祇とは神の声を()く者。そして、神の声を聴くとは、しばしば、その身に神を呼び()ろすことに通じます。相(しょう)が合えば――、〈契約(けいやく)〉に取り決められていれば――、無事に()むこともあるでしょう。けれど、大(てい)の場合には対価(たいか)――代(しょう)、が在ります。感覚を(そこ)なおうとも、生を引っ()られなければ重畳(ちょうじょう)で、(かる)い対価だと(だん)言できる。大(がい)の場合は――」

ラファルドは一度言葉を途切(とぎ)らせたが、神様は相槌(あいづち)も打たなかった。

「おまけに、聴くとは無しに聞いてしまった「声」だったとしても、それを()ける(すべ)は無い。(おきて)だと言わんばかりの融通(ゆうづう)の無さ。心にその事実を()めておく、それは不()然なことでしょうか? そして、一人の神祇が神をその身に呼び降ろせるのは――()(うん)(めぐ)まれない限り、一度。歓喜(かんき)や至(ふく)よりも躊躇(ためら)いや後(かい)が勝ることが在るのは……無理からぬ話だ、と、考えて来ました(……もし、例外が在るとしたら――それは)」

「それは、その方らが、その方らの”神”と、そういう形の契約を()したから――ではないのか?」

神様が合いの手を入れる。

「それは家伝の()事ですし……今(さら)、関われるこ、と――、――?! 今、何と!?

ラファルドは真っ青になって、神様を見つめ返した。

「それは、その方らが、その方らの”神”と、そういう形の契約を為したから――ではないのか?」

(ごん)半句(たが)わない(げん)
それが、ラファルドを衝撃(しょうげき)滅多(めった)打ちにする。

「……そん、な――、まさ…………か――!?

そこへ。
余計なものが余計な台詞(せりふ)を差し込んだ。

「……あり? もしかして――お気づきでない?? もしかしなくても、(べつ)(じん)”なんですけど――むぎゅぎゅっ!!

神様は問(どう)無用で、それを()(つぶ)した。
爆笑(ばくしょう)(だい)(だん)へと発(てん)することが確実だったからだ。

しかし、今のラファルドに、そんなものは見えてすらいなかった。

「……あな…………た、様――は……」

「言ったはずだ。初めまして、とな」

(そんな、馬鹿な――!!! ……許されるのか!? 許されていいのか?! こんな強運――!!! こんな幸運――!!!!

ラファルドは恐怖(きょうふ)にも()た感(じょう)で打ち震えていた。

(ゆい)一の(れい)外、それは(たが)いの遭遇が過去(かこ)においても未来においても初めてであること。
その時のみ、神祇は無事を原則(・・)約束(やくそく)される。
そして。
(じょう)であれば到底(とうてい)(かな)えることができない(ねが)い――(いの)り、を掛けることが出来るのである。

「……やっと、話が出来る状況になったか……。不機嫌になるなんて、()定外だったからなあ。本当、冷や冷やした……!」

「――――」

(ぼう)然と神様を見つめるラファルド。
神様の足元では、何かが必死(ひっし)藻掻(もが)いていた。

「覚悟は在るな? ラファルド=ルヴァル=ナジェルム=セルゲート」

「はい」

ラファルドは当然のように(ひざまず)き、そして、気が付く。

「その前に、一件苦情をよろしいでしょうか?」

神様が目を丸くした――気がした。

「…………苦情……?」

「足元の……それ、なのですが」

足元に視線を(うつ)すと、神様は(そん)したとため息で表現する。

「見なかった――いや、存在しなかったという方向で、いいんじゃないかな? 恩赦(おんしゃ)したところで()りないし、恩に着てもくれないんだけど」

()とばかりに、足元の抵抗(ていこう)が激しくなった。
そして、ラファルドに(まよ)いは無い。

「いえ、此処(ここ)は恩赦一(たく)でしょう。神の(ふところ)が広く、(ふか)い物であって問題は何もありませんから」

今度は(あき)れられた。

「……君、結構神(けい)太いよね……」

初対面時の気の()かなさ、臆病(おくびょう)っぷりとは打って変わった配(りょ)積極(せっきょく)性。
それを指されても、ラファルドは特に思うことは無い。
(たん)に、(ゆず)れないからだ。
神祇として、一生に一度在るかどうかの、在れば奇跡(きせき)と断言するしかない、(ちょう)(いくつ)つついても足りない幸運。それが、目の前に在る。
(あらかじ)め来ると解っていたならば、正(そう)をバッチリ(すき)無く決めて、体調(ちょう)(ばん)全に(ととの)え、()起きから着()え、食事、対面する為の作法(いた)るまで、(かつ)げる(げん)徹底(てってい)的に担ぎまくって待ち受ける一大イベント。
それが、神との邂逅(かいこう)である。
なのに、神様の片足の下には絶賛お仕置き中の何かが居る(しかも、激しく抵抗している)、では()まりに()ける。
ぶっちゃけ、雰囲気(ふんいき)にも威(げん)にもコメディ要()が持ち込まれてしまって、気分が()り上がりに欠けてしまうのだ。
それは、あんまりだと思う。
一生に一度でも在れば、超が幾つついても足りない幸運なのである。神との邂逅は。

「感動や空気を大事にしたいだけです。……まあ、可愛気(かわいげ)()りないとかなら、よく言われますが……」

神様は意外そうに目を丸くしてから(・・・・・・・・・・・・・)、くすりと(わら)う。

「だ、そうだよ? どうしようかなあ?」

退屈(たいくつ)そうに、踏んで居たものを(つま)まみ上げ、これまた退屈そうに息を()きかけた。

「やかましいわ!! 大体! 貴様の狭量(きょうりょう)さをいたいけな俺様に転嫁(てんか)しやがっただけの話だろうが!! 絶対に、恩になんて着ないからな!!!」

予めの言葉通り、感(しゃ)も反(せい)も無い態度で、それはびしり、と”神”様を指さす。

「……ほらね?」

しかし、神様はラファルドの要(せい)通りに解放してやる。
それはふわりと、ラファルドと神様の中間地点に着地した。
同時に足元を(おおう)(けむり)がそれの周()()けるかのように退()いたので、見(うしな)うことは無い。

「まあ、神前とはいえ、魔ですから。むしろ(たの)もしい気性の持ち主だと思いますが」

ラファルドに魔と指(てき)された謎の存在が赤く光る()(またた)かせた。

「……あーあ! 解られてやがったか……! けっ、つまらん!! 楽しく遊べるのならいざ知らず、退屈でかったるい仕事なんぞに用は無いわ! 勝手にするがいいっ!!

放言すると、何故か、”神”様の懐に(もぐり)り込んだ。
仕方がない(やつ)、とため息で零したのは神様である。

そして、ようやく一人と一(はしら)の構図が出来上がった。
一人は平(ふく)し、一柱は立ち上がって一人を見つめる。

「では……、問おうか」

下問の開始と共に、ラファルドは身体を起こす。
平伏したまま許しを待つのは主従に在る場合の掟。
初の対面であり、(つみ)(おか)したとして引き出されたのではないので、きちんと目線を合わせるのが作法である。
目線を合わせられない――それは此岸(しがん)()岸が対等ではないことの意思表示であり、罪(けが)れに心身が()まっている証。神前に立つ資格(しかく)無しと断じられて終わってしまう。

「――――」

(おく)することも、()じることも無い見つめ合い。

神様は満足して(うなず)き、そして、ただそれだけで様変わりした。
曲がりなりにも存在した人間らしい輪郭が光に()まれて不明(りょう)となり、()(そそ)ぐ光の中に(たたず)む人影となる。

「…………」

ラファルドは人影を見つめながらも、(まぶ)しい光(げん)(のぞ)き込んだように目を細める。
居る。目の前に居る。そこに、確かに存在している。
確信を持つことは出来るのに、確かなものは何も見えない。
存在も、姿(すがた)形も、何もかもが曖昧で、下手(へた)をすれば確信を失った所で不思()はない。

世界も変わり()てた。
広がりを感じ取れる。
何も無い世界であることは変わりないのに、果てを見(きわ)められないほど遠くまで広がっていることを感じられる。
光を得た空は白い雲を気ままに遊ばせながら、()い込まれるような深みを(たた)えた青から、夕()け直前の黄金を()て、薔薇(ばら)色へと染まった。
不思議なことに太陽は存在せず、降り注ぐ光の光源を見極めることは出来ない。
(あたた)かくない代わりに冷たくもない風が()(おど)るように強弱を変えながら、ラファルドの(ほほ)(さら)う。
変わらないのは足元で立ち込める煙だけだ。

幾度も(まばた)きを()り返しつつ、ラファルドは待つ。
ただ、待つ。何一つ、迷うことなく。

ふと、光の中の人影が頷いた――気がした。

[神の御座(みくら)に立ち入る者よ、願いとは何ぞ? 声と答えを祈りに変えて(ひび)かせよ! 何処(どこ)までも遠く、何処までも高く! 何処まで明らかに!! その時――(なんじ)(のぞ)みも叶うだろう]

心に響く声を受け止め、それでもラファルドは驚かずに居られなかった。

(……神の御座――、此処が……!! ならば――()けるべき願いは…………、命を()すに(あた)うもの――!)

命と引き()えになる(可能性が在る)――と、気が付いたのに、ラファルドは自然に笑うことが出来た。
(いは)く、『神が手ずから作りたもうたこの世界』に、無駄な物は何一つ無いのだという。
神祇が好む、神祇としては一番ありふれた心の持ち方。
その通りだとするならば、今、自分が此処に居ることには意味がある。
グラディルが『現実の』聖堂で戦っていることにも。
自分は居るべくして、此処に居る。そして、それは――神様も同じ(・・・・・)、なのだ。
だから、ラファルドは迷う必要が無い。
懸けるべき祈り(願い)を懸ける為に、今、この時、この場所が在り、そこにラファルドは居るのだ。

(きっと、上等だ!! って、開き直るだろうな、ラディなら。……有難う、ラディ。君に(かなら)ず叶えたい願いが在るように――僕にも、命を賭してでも形にしたいものが在る。それを、今――)

ラファルドは光の中に佇む”神”の前に平伏し、(しず)かにその目を閉じる。
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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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