第55話◆物や思うと

文字数 5,410文字

幻想(げんそう)的な黄金と水晶のシャンデリアに見下ろされる大広間が、無数の男女が(はな)やぐ()空間と化している。
()る者は(だん)笑し、或る者はグラスを乗せた(ぼん)を持つ給仕(きゅうじ)を呼び止め、或る者は壁際(かべぎわ)に(しかし、壁とは(せっ)さぬよう)配置された円(たく)の銀盆に盛られた食事(()子、軽食、果実など)に舌鼓(したつづみ)を打つ。
また、或る顔は感(げき)興奮(こうふん)()い、或る顔は平(せい)(よそお)いながら意中の(だれ)かを待つように周()(うかが)う。

王宮主(さい)晩餐(ばんさん)会初夜。
(まく)()げる国王の宣誓(せんせい)を合図に、(つど)う王族たちが招待(しょうたい)客をもてなしに掛かる夜である。
本命たる晩餐は二日後。
今宵(こよい)即席(そくせき)の社交場だった。

中央(おく)よりに位置する玉座めいた(だん)を背景に、五つばかりの人だかりが半円を(えが)くように形成されていた。

壇を背景に出来る位置に居るのが、国王より主(ひん)の役(わり)(たまわ)った第三王女と一(ぐん)の人々である。

「いやはや、何とお美しいことか! 白百合(しらゆり)も二つ名に使われることを、きっと(ほこ)りに思うことでしょう!」

すらりとした印(しょう)の初老の男性が満面の笑みで()めちぎる。

「まあ、大使様……。お上手(じょうず)ですこと」

()じらいの生む初々(ういうい)しい華やかさが、微笑(ほほえみ)と共に広がった。

その少し後ろ。
(また)の数歩でセレナスを()()ける位置に、(やり)を片手に(けん)()びた近衛(このえ)(えい)兵たち(に、()けたラファルドとグラディル)が(ひか)えている。

(かざ)った男女ばかり(給仕を(のぞ)いて)が集う晩餐会場には異(しつ)な存在だが、誰も意(しき)()かない。
物々しい武(そう)は王家の()光であり、同時に、優雅(ゆうが)に人々がごった返す晩餐会場での居場所を示す(はた)代わりだ。
勿論(もちろん)、”虫”()けとしての役割も職務(しょくむ)の内である。

「……ねえ、お兄様。どうして、こんな場所に、あんな方々が――?」

「しっ! あれ(あの装備(そうび))は、近衛の衛兵だ。つまり、」

「まあ!? では、(うわさ)で聞いた通り、姫様方が出座なさっているのね?!

「そういうこと。……お、軽食があるな。腹ごなしに行くか」

「――えっ? お兄様……!」

「あんな人だかりじゃ、お姿(すがた)一つ(ろく)に見えないじゃないか。タイミングを()とう((うち)の身代で目通りに(あずか)ったら、破滅(はめつ)させられるよ)……」

王族を名前でしか知らない人々でも解る。
無粋(ぶすい)(とが)められるはずの存在が儀礼(ぎれい)として(まか)り通る、その特別が意味することを。ものを。
そして、この兄妹(きょうだい)のような反(のう)(いた)ってまともで、マシな反応だった。
(あや)しい人物の接近は元より、予定に無い賓客の来(ほう)には槍を(もっ)て応対するのが基本の態度になるからだ。
役に立つために配置されながら、役に立たないことを期待される矛盾(むじゅん)
しかし、第三王女の衛兵はそんな深刻(しんこく)葛藤(かっとう)とは無(えん)だった。

(……おうおう。物分かりのいい兄妹で何よりだ。でもよ、そんなに見たいもんかねえ……?)

(これだから、田舎(いなか)者は……。王都生まれの王都(そだ)ちなのに、「王家の()威光」も解らないの?)

(るせっ! 現物を目の当たりにしたら、誰だって、一発で食傷(しょくしょう)するだろうが!)

無言、無表情、無動が基本性能の衛兵である。会話は成立していても、ラファルドとグラディルは肉声を使っていない。
日々(きび)しく(きた)え上げられる本職ならばいざ知らず、急ごしらえの間に合わせである少年二人には、衛兵の基本性能を()持し続けるのも(いばら)の道だった。
加えて、グラディルが話したくなる気持ちは理解できる。
なので、ラファルドが特別に回線を(せっ)定し、肉声に(たよ)らずとも意思の()通を可能にしてある。
だから、傍目(はため)には無(なん)に衛兵を(つと)めているようにしか見えていないのだった。

(……多分、それ、ラディだけじゃないかなあ……)

(どういうことだよ!?

(当たらないで()しいな。理由は知らないけど、ラディ以外の人には大体、(おだ)やかで常識的な態度なんだよね。ほら、今だって――)

時間に応じた持ち回りだった「(きょう)応役」を終えて、予定通りの位置に(じん)取っている王女様方(さまがた)を取り()く人(がき)(あつ)みは圧倒(あっとう)的で、中央に位置しているセレナスの数倍は在る。
遠目といえど、王女の姿を一目にすることすらままならず、下手(へた)に近づこうものなら、あっという間に人垣の秩序(ちつじょ)――(じゅん)番と身分に応じた()法を守れ! という無言の(あつ)、に()()まれ、身動き一つに難(じゅう)する破目になる。

そんな他所(よそ)の盛(きょう)ぶりを、無意識を(よそお)って目に入れさせ、あざとく嫌味(いやみ)を投げかけて来る無粋(ぶすい)(かく)(はん)たちをも丁寧(ていねい)にいなし、本物の笑顔を振舞(ふるま)っていた。

グラディルと回(せん)(つな)いでいる最中なのに、ラファルドはふと、物思いに(ふけ)る。

権勢(けんせい)(きょう)味無し。事前に聞いていた通りだね……。不(ぐう)からくる(ひね)くれなのかと考えたけど。()(あい)楽ははっきりされているし、(ねこ)完璧(かんぺき)(かぶ)り切れるタイプでもないし。気(じょう)なのは性格だとしても、それだけじゃあの笑顔は無理だ。さっきだって――、……()目だ! 顔が、笑っちゃう!)

ラファルドの(()人的な)悲鳴(ひめい)が聞こえたのかは解らないが、グラディルが憤然(ふんぜん)と割り込んできた。

(……だから、どうしたってんだよ!)

(嫌味にさえ、本気の笑顔を返してるでしょ? 仕掛けた方が腰を抜かして、世間知らずめ! って結論に()げ込むしかなくなってる。――ラディ。今のお馬鹿さん達の顔、押さえておいてね。後でだけど、まとめて陛下に(そう)上するから)

(ライ、ライ。……って、どうすんだよ、そんなの?)

(さあ。陛下が上手にご利用になる素材(・・・・・・・・・・・)だからね。けど、ラディだって嫌でしょ? 第三王女に(つか)えてるってだけで、変なとばっちりが飛んで来るの)

(そりゃ、まあ……。で、(おれ)様の憤懣(ふんまん)は?)

(それは……ラディに心当たりが無かったら(しょ)置無し、かな……、……当面)

(――ざっけんな。慰謝料(いしゃりょう)として、俺は給金倍(がく)請求(せいきゅう)するぞ!!

(それは、君のお師匠(ししょう)さんに掛け合って。でも、良かったじゃない)

(あ!?

(さっきの、ナスカラナン(こう)よりは(ぜん)然マシでさ!)

(ああん?! ……って、あれか。あれはまあ――笑うしかねえけども)

平素から仲が悪いと評判(ひょうばん)(グラディルの幼馴染(おさななじみ)からレクチャーされた事前情(ほう))の、ナスカラナン侯(しゃく)は接近からして見物(みもの)だった。
独特(どくとく)の美意識と嗜好(しこう)で”奇妙(きみょう)な猫”と評判を取る、初老の男性の接近に気付いた段階(だんかい)で、表情が痙攣(けいれん)する(ほど)露骨(ろこつ)嫌悪(けんお)(さら)け出したのである。
その時点で手を打てれば良かったのだろうが、向こうは()族でセレナスは(ちょく)命を賜った王族である。作法(マナー)()反は出来ないし、国王の顔に(どろ)()るわけにもいかない。
(ぼう)にも(?)、気づかれずにやり()ごそうとセレナスは考えた。
しかし、侯爵は(ねずみ)()る猫の(ごと)く、好()を待ち()けていたらしく、むしろ、嬉々(きき)として()っ込んできたのである。
誰も得をしない嫌味と皮肉の応(しゅう)が始まったのだが――そこで、侯爵の仕込みが炸裂(さくれつ)した。
漫才(まんざい)の流れ上、セレナスが侯爵を(おうぎ)(たた)いてしまったのだが、それに合わせて侯爵の両目が飛び出し、頭から(けむり)が上がって、奇妙に(おさな)さを感じさせるデザインの造花(ぞうか)()いたのである。
(しゅく)女に、あるまじき悪徳(大爆笑)を強(せい)した(つみ)を以て、満場一()顰蹙(ひんしゅく)を買い、強制お色直しの(けい)と数週間に(わた)る第三王女への接近禁止令を食らわされた侯爵だが、()りたようには到底(とうてい)見えない退(たい)場だった。

「よくもまあ、ぬけぬけと挨拶(あいさつ)に来ましたこと……! (つら)(かわ)(あつ)い! 正に、言葉通りでしたわ!! 地下(ろう)にでも放り込んで、半年ほど、本気で反省でも(うなが)せばよろしくてよ!」

誰もが失笑を(きん)じえなかった後ろ姿に、セレナスは一人だけ、真面目(まじめ)に悪態を付いていたのである。

(つか、あんなのと俺様の腹立ちを一(しょ)にすんじゃねえ!)

(……(一緒でいいと思うけど)よくまあ、腹を立てる元気が(のこ)ってるよね……)

(おう! 腹が()ったとて、(いくさ)はでき……、思い出しちまった……! 折角(せっかく)(わす)れてたのに!!

(……ラディ)

(だって、生殺しだぜ? 美味(うま)そうな(にお)いがするのに、伸ばせば手が(とど)くのに、晩餐会が終わるまでお(あず)け。日暮れ前から我慢してるのに、日付が変わってしばらくまで続くお預け……。殺生(せっしょう)だ。そんなの殺生だあ……!!

(……我慢(がまん)だからね! 後で、きちんと食べられるから!!

グラディルに雷を落としたくなった気持ちが伝()したのか、不意に、二人はセレナスの一(べつ)を受け取ってしまった。

!?

無表情、無言のまま、ぎくり、とする。

「…………」

何事も無かったように談笑に戻ったセレナスに、二人は胸中でため息をついた。
何か声を掛けられることになれば――落第。(こわ)くて熱い(きゅう)――騎士団精鋭(せいえい)()る、居残り試験、が確定する。
とりあえず、危機(きき)は回()されたが、お(しゃべ)りタイムは一時終(りょう)
王女の衛兵本来の職務に(もど)った。

とはいえ、出番が来ない(かぎ)りはそれとなく周囲を観察(かんさつ)し続ける以外にやることが無い。
窮屈(きゅうくつ)と退屈が一緒になった職務というのはラファルドも初めてだった。
自然、考えることが多くなる。

(権勢に興味が無い……王家を出(ぽん)する覚悟(かくご)が在る――ということだろうか? ……やりそうな気がする。それも、びっくりするくらいスパッと。もし、その時にこの仕事が続いていたら――ん?)

ふと、()線を感じて、目だけを動かす。
視界に、セレナスを忌々(いまいま)()(にら)む男達の姿が引っ掛かった。

(さっき、ラディに顔を覚えて貰った連中)

ラファルドがさりげなさを意識して頭を動かすと、男達はそそくさと人()みに(まぎ)れて、姿を消そうとした。
グラディルなら、解っている。その程度では、ラファルドの「目」は(あざむ)けないと。

(……ふうん。サラスフェリア様の方に、動くんだ……)

”現実に”()行しているわけではないので、彼らが第一王女から差し向けられた人間かどうかは解らない。
裏を取るべきか逡巡(しゅんじゅん)した所に、招待客として紛れこんでいた近衛騎士の姿が(うつ)り込んだ。

!!

王族付き衛士(えじ)のA to Zを(たた)き込んでくれた教(どう)役の一人である。
彼の目が彼らを追っている。ならば、ラファルドの出番はない、ということだ。

体裁(ていさい)(ととの)えて見せたところで、王族に喧嘩(けんか)を売るような真似(まね)をしたことに変わりはない。チェックが掛からないはずも無いか……)

それでも、今一度、王女たちの様子を(なが)めておくことにした。

(……どうしてかな。一番後ろ(だて)(うす)く、権力に(えん)が遠いと確定しているセレナス様が、一番無難(ぶなん)にお(つと)めを(はた)している気がするなあ……あんなに、お転婆(てんば)な所をお持ちなのにねえ……)

ラファルドが目を付けたのは、王女を(かげ)から支える侍女たちの空気と動きだ。

日常的に(はな)(ぱしら)がややお高い第一王女は五人の王女の中でも一番厚い人垣を(きず)いているが、(つか)えの侍女たちは主人の不用意で、高飛車(たかびしゃ)な言動が何時(いつ)悪い方向に炸裂(さくれつ)するか、はらはらしながら神(けい)(とが)らせている。
王女の中で一番男性に免疫(めんえき)が無い第二王女は、侍女たちが殿方の接近を()止することにばかり注意を(かたむ)()ぎて、少なくない客人たちに(まゆ)(しか)められていた。
セレナスと二つしか(ちが)わない第四王女は場数がまだ少ない割に意地っ()りで、緊張(きんちょう)の為に言動が(かた)い。助け(ぶね)を出したくても出せずにいる侍女頭に笑いを(さそ)われてしまう。
10代になったばかりの第五王女に(いた)っては、年(れい)からくる自然な(おさな)さが物(そう)爆弾(ばくだん)も同然で、主人よりも周囲の仕えが緊張し過ぎていて、勤めがぎこちなくなっている有様だった。

一番自然に、集中して勤めを果せているのは、第三王女()下の侍女たちだ。
侍女頭が一歩距離(きょり)を取って見守っているが、細々(こまごま)と動き回る侍女の顔に不安の色は無い。

(人垣が一番薄いから? それとも、王女では父親によく()た分け(へだ)てを作りたがらない人(がら)のせい? ……いや、(みな)不安なんだ。今宵から始まる晩餐会に、何かがあるのを()ぎつけているから。()段なら(かく)し通せる(あら)()けてしまっているんだ。必要のない人員には(しょう)細を()せている。場合によっては、殿下でさえ知らされない。……でも、判るものが在る、ってことか。そう考えると……、主人が仕え人をどう見ているか、仕え人にどう見られているか、が出て来ちゃってる部分がある、のかも。それにしても――)

侍女に補佐(ほさ)されながら、続々(ぞくぞく)と挨拶に来る客人をあしらっていくセレナスは、何処(どこ)からどう見ても、清楚(せいそ)可憐(かれん)な王女だった。

(陛下――小父(おじ)上に、良くも悪くもそっくりな(むすめ)()……か。今のところは父さんの人物評通り、だけど)

ふと、(すえ)の、腹違いの弟が()んだ”星”を思い出した。

(ちゅう)天を(めぐ)る白と黒の諸星(もろぼし)が落ち、黒白(こくびゃく)の影が(しの)()る。星が影もろとも消え去る前に、(たお)やかなる百合(ゆり)を花開かせ、目()めさせよ。さもなくば(いさ)ましき竜を見出すべし。()なりし(うた)が、異なりし水を(みちび)く前に。さすれば、破滅(はめつ)退()くだろう』

(……とてもとても、そんな星の(めぐ)りが似合う人には――)

ふと、(せい)裁を食らった(しゅん)間がフラッシュバックする。

もう、(いた)んではいないのに、何故(なぜ)かラファルドはお腹をさすりたくなった。

(……うう、こんな時に……。まあ、お転婆だとは思ってるけど、どうしてお転婆なのかは知らないんだよなあ……)

清楚で華やかなセレナスの笑顔が、ふと、遠くなった気がした。

(そうだ。(ぼく)は知らない。まだ何も、知らない)

いずれ、爪弾(つまはじ)きになる(うん)命。そんな風に陰で(ささや)かれていることは知っていた。

けれど。

ラファルドは知らない。

セレナスの()(あい)楽を知らない。
彼女が何を思い、何を(わずら)い、何を(ねが)い、何と戦っているのかを知らない。

(……お見合い、か――)

主にクリスファルトが陰でこそこそと目()んでいる(ろく)でも無いイベントを、少しは検討(けんとう)する価値(かち)が有るのかもしれない、と思おうとした――。

ぐううぅ、きゅるる……!

大変()命的な(ざつ)音が、耳に届きさえしなければ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み