第35話◆兄弟・・・改
文字数 2,161文字
顔を輝かせた10代前半だろう白い服装の少年が、すっくと席を立ってラファルドに駆け寄る。
グラディルの半分程度の
「フィル――、どうして?」
満面の笑みを見せる弟に、兄は
第三王女が客人を迎える為の応接室で待っていたのは、少年とそのお目付け役の
「今日は兄上とお昼を一緒に! と、思いまして」
元気一杯な弟の返事だったが、兄はかえって困惑を深めてしまう。
(いや、もうおやつ前なんだけど……。というか、修行も昼寝もほったらかしって、どういうこと?!)
実のところ、すぐに家に帰りなさい! が兄の本音だった。
弟もまた
幼い頃から厳しい修行が欠かせないのは、異能の発動と感情が結び付きやすいからだ。
不用意な事故を防ぐ意味も込めて、外出はあまり歓迎されない。
加えて、ラファルドとその兄弟はセルゲート家の正統になる血統。
幼いといえど、
(でも、
異能を使って「今日、兄上とお昼を食べるには
自然、
「宮城に来てはいけない、ということは無いはずです。僕だって――」
兄が突然の来訪に否定的だと解るからだろう、必死に言い
精一杯背伸びをしているのが解る
「ソラス様」
「何? レテビル」
「ルヴァル様は、”貴族の体面”を得る為、という
家の名前を出すことは、
そして、存在することで発生する一定の責任を負うことを了承することになる。
ラファルドよりも(三歳)幼い弟にはまだ早い、という判断なのだろう。
しかし、兄の解釈は少しばかり違っていた。
遠回しに薄情者と非難されたことを直感したのである。
(……援護射撃に来たか……! しっかり仕えてくれてるのは嬉しいけど、昔よりも皮肉がきつくなってる気がするなあ。……まあ、館が窮屈なのは間違いないけどね)
「……えー……」
不満気に御付きを見上げるフィルの頭を、ラファルドは優しく
「
「……はあい。でも、いいや。兄上と一緒だし!」
怒られなかった=自分の言い分――一緒にお昼を食べる、が通った、なのである。
「随分、元気が有るのですね」
落ち着いた声と、華やかさが漂う笑顔のセレナス。
しかし、フィルグリムのあどけない表情は緊張に染まった。
「――あ。えっと……」
「フィル。こちらがセレナス第三王女殿下。白百合の姫君と言えば、解るね?」
「はい! フィルグリム=ソラス=セルゲートと申します。どうぞ、お見知りおきを!」
年相応の顔を紅潮させて、王女を見上げる。
セレナスはくすぐられるように笑みを深くした。
「セレナス=アストアクルです。こちらこそ、よろしくお願いしますね」
そして、流れを作るようにグラディルに視線を移す。
けれど、グラディルは態度も声もぶっきらぼうに返した。
「俺はもう顔見知りなんだよ。つか、後ろのおっさん、誰だよ?」
セレナスが眉を
「この
途端に、見た目から重そうな金属っぽい
「……あら、まあ」
「こら! フィル!」
「だって――!!」
「駄ー目!」
厳しく言ったつもりは無いが、フィルグリムの目に涙が
「……
「えっ――?」
てっきり、こんな場所では部外者だと思い込んでいた。
グラディルは頭の重りが無くなったことにも気づかなかったのである。
セレナスが
「……解った、悪かったよ。俺はグラディル=ファナン。兄上の友人だ。よろしく頼む」
十代の少年としては武骨な手を差し出すと、フィルグリムはにっこり笑ってグラディルの手を取った。
「はい! よろしくお願いします!! ――やった! 出来た、出来たぁ!!」
はしゃぐ弟に、兄はため息をついた。
「……フィル?」
「あ、いけない。行儀良くしなさいって、言われてたっけ」
「本当に、それだけ?」
むっとする顔にも可愛らしさが
「解ってます! ……えっと、後ろで控えているのが」
すっと、一歩前――しかし、フィルグリムと並ばないギリギリの位置、に出た。
「レテビル=スラウフェン。フィルグリム様の
一礼すると、すぐさま一歩下がった。
あまりの飾り
「……申し訳ありません。無愛想ではあるのですが、」
「構いません。
「はい、
元気のいい一礼が空気を