第84話◆様相

文字数 4,895文字

ドラゴンを王都内部に押し(とど)め、人(じち)奪還(だっかん)して捕縛(ほばく)する為の作(せん)(げん)場は、戦場さながらの()()合を(てい)していた。

まずは、(きょ)人も()(さお)威容(いよう)(ほこ)る白いドラゴンが、人質を片手に(あば)れている。
ついで、増援(ぞうえん)(おぼ)しき魔族(複数(ふくすう))が、(ちゅう)空や(たて)物の(おく)上等から、攻(げき)魔法を手当たり次第(しだい)にぶっ(ぱな)しまくってくれていた。
思しき、なのは、ドラゴンと魔族の関係が今一つ()めないからだ。
公国の包囲(ほうい)(いや)がっている点では一()しているのだが、魔族の攻撃魔法の(なが)(だま)が、結構(けっこう)、ドラゴンにも命中しているし、ドラゴンはドラゴンで、(せっ)極的でこそないものの、巻き()えを()けられない魔族を手に()けることに躊躇(ちゅうちょ)が無い。
ただ、一方で、両者は意図的に連携(れんけい)しており、魔族を増援と看做(みな)しても問(だい)の無い状況(じょうきょう)だった。

「……、おのれ! ちょこまかと!」

苛立(いらだ)った現場指()(かん)の一人が歯軋(はぎし)りをする。

作戦本部は、作戦領域(りょういき)を二つの半円に見立て、それを(たが)いに(せっ)近させ、(せつ)合させることで包囲(もう)(かん)成させようとしていた。
王都の大通りを(しっ)走して()げようという、ドラゴンの目論見(もくろみ)は、作戦成立の為の時間を大(はば)(けず)ってしまう。
多少無理矢理でも、障害(しょうがい)物となり得る建(ぞう)物が(みっ)集する方向――居住区に押し(とど)めたかった。

ちなみに、捕縛部(たい)以上に(いそが)しいのが、民(しゅう)避難(ひなん)誘導(ゆうどう)に当たっている裏(かた)だ。
捕縛作戦は公国の都合(つごう)であり、人民に(そん)害を出すわけには行かない。
ドラゴンと作戦の被害が(そう)定される区域となる前に、全住民(ホームレス込み)の避難を完(すい)させなければならなかった。
(こく)一刻と()動する対象(たいしょう)と、変化する作戦領域に(おう)じて。

魔族達がゲリラ戦(じゅつ)的な攪乱(かくらん)を重()するのは、嫌がらせに(てっ)する為だろう。

二つの作戦領域の内(がわ)に相当する空間の宙空を飛び回る者、騎士団の(じん)地よりも若干(じゃっかん)外側で、比較(ひかく)的高めの建(ちく)物の屋上を飛び歩く者。
そのいずれもが攻撃魔法を乱(ざつ)にばら()いてくる。
(まった)くの(てき)当に見せかけながら、疑似(ぎじ)的な(はさ)()ちを何か所にもわたって作り出し、神(けい)をかき(みだ)すような(こん)乱を()み出そうとしていた。

〈結(かい)〉に魔法能力を制限(せいげん)されていなかったら――(しゅん)間移動同(ぜん)の高()動力と、(ゆう)に5倍以上の(せい)能差をひけらかす攻撃魔法の(あらし)、である。
()以外の何物でもない。

そして、さらに現場が荒れる原(いん)となっているのは、〈結界〉の効果(こうか)(はん)囲の限度を(しめ)す大城(へき)が、見上げなければならないほど間近に(せま)っていることだった。

(くそ)っ! これ以上、城壁への近接を許せば――作戦が破綻(はたん)する!!

実働部隊として(じゅう)事する(だれ)もの胸中に、同じ(あせ)りが在った。

そこへ。

「そこ! 陣形を(くず)さないで!!

ラファルドの叱咤(しった)(とど)いた直後。指揮官の目の前で、攻撃魔法が着弾した。

「……あ、(あぶ)ない――」

無自(かく)に、味方の防御(ぼうぎょ)魔術の効果の外へ足を()み出していたらしい。
(あや)うく(なん)(のが)れて、指揮官の騎士はため(いき)をついた。


「全く、あ(やつ)は……! 何をしておるのだ……!!

人質でありながら、()用にも、戦(きょく)に干(しょう)してくるけったいな少年。
さっさと()げだして来いと愚痴(ぐち)る国王ガルナードは現状の戦況を一(ぼう)可能な建物の一つに、(わり)とこっそり目に陣取っていた。
公国(さい)強の武人とはいえ、居場所が簡単(かんたん)()れては、(べつ)(きゅう)地を()きかねない。
……だったら、現場に押しかけずに、玉()で大人しくしていろ! という苦情(くじょう)も当然のようにあるのだが。
苦情を押し切ってまで最前線に近接するのは、王都の城下が自分の(にわ)だという自負と、見逃してはならない、見届けなければならないという義務(ぎむ)が在るからだ。

(……あの、白い(りゅう)……)

その正体がガルナードの予感(よかん)通りの()であるならば――それは、不(きつ)にして、(ゆる)されざる存在。

(クレム――、お前の遺言を(・・・)忘れた日は、一日も無かったつもりだが――)

苦情を押し切る代(しょう)として押し付けられた、総勢(そうぜい)12人の騎士達(近衛:7、騎士団:5)の気忙(きぜわ)しそうな視(せん)にも気づかずに、戦場を(ぎょう)視していた。

ちなみに、騎士達が緊張(きんちょう)()()めているのは、(げん)重な〈視覚偽装(ぎそう)〉を(ほどこ)してなお、何時(いつ)(とう)に巻き()まれるか(わか)らない不安(2割)と、何時国王が現場に雪崩(なだれ)れ込む決(だん)を実行するか不明(りょう)である現実(8割)がごた()ぜになっているからだ。

(おそ)らくは、あの竜のせいかと」

声を掛けることさえ躊躇(ためら)われるような国王の集中に割り込んだのは、クリスファルトだった。

割と異彩(いさい)を放つ普段(ふだん)着から、動きやすさを重視した丈夫(じょうぶ)な戦闘装束(しょうぞく)に着()えている。

「〈飛(しょう)〉による空中機動と建物の高低を利用した魔術による(ぼう)害は、包囲を(おく)らせる為だけではないでしょう。陛下もお気づきのはずです。あの竜は、〈吐息(ブレス)〉も魔術も撃てないわけではありません。撃たないのです」

「……ふん。けったいな(くつわ)役よな(まさかとは思うが……クレムの遺言(ゆいごん)を聞いていたりしないだろうな)……!」

神とは、時に人間の良心の(ぐう)意となる。
そして、その力を〈契約(けいやく)〉に(もと)づいて借り受け、行使する神祇は、良心と共に在る者と看做(みな)される。
神祇(じんぎ)の力は良心によって媒介(ばいかい)されるとも言われ、良心は時に悪心を(きゅう)弾し、(とが)める者となる。
良心が悪心を咎める時に生まれる(ざい)悪感を(もっ)て、意図的にある種の行動を結果的に(・・・・)()害する現(しょう)、それを、冒険(ぼうけん)者は〈罪悪(ギルト)〉と呼んで、状態異(じょう)の一種と看做す。

クリスファルトは、ラファルドが人質にされることで、竜が〈罪悪〉状態に置かれているから、〈吐息〉も魔術も出てこない(・・・・・)のだと言っているのである。

「……では、魔族(ども)が対象の、目(そく)、半(けい)5m以内に近づかないのも……?」

声を掛けるタイミングを(うかが)っていたのだろう騎士の一人が出て来る。
戦闘経(けん)においては(あろうことか)国王の方が豊富(ほうふ)であり、監督(かんとく)役という役目が無ければ、色々話をして知見を(ふか)めたい(しょう)動を誰もが持っていた。
戦場に立つ騎士は名()(しょく)ではない。戦闘職種である。

国王がクリスファルトを一(べつ)する。
応対は(まか)せたということだ。
(しょう)は胸中に留めて、クリスファルトは(うなず)いた。

「はい。巻き込まれて、魔術や魔力を失いたくない(・・・・・・)からでしょう」

加えて、国王がさっさと逃げて来い! と愚痴りたくなるにも、理由が在った。

竜はかれこれ30分近く、近衛(このえ)と騎士団の混成部隊を相手に、暴れ回っている。
ラファルドはずっと手に(にぎ)られたままであり、竜の(うで)の動きの応じて、ずっと()り回され(つづ)けているのだ。
(きゅう)(そく)が在れば急ブレーキも在り、()本は円周()道だが、半周だったり、一周半だったり、適度な長さを(えが)くことはまずない。おまけに、軌道が直線になることも、ジグザグに()さぶられたことも二度や三度ではない。
(不可(こう)力だとしても)好き放題振り回されても(しっ)神の一(びょう)もせずに戦況を俯瞰(ふかん)して把握(はあく)し続け、時に指揮(ぼう)さえ振れるのは、見事と()めるしかなかった。

というか、普通、気(ぜつ)する。下手(へた)をしたら、(くび)(ほね)()かされてしまう危険性(リスク)すら()定しきれない。
それを(ふせ)ぎ切れるほど鍛練(たんれん)()かしていないのなら、(すき)の十や二十、見つけ出せないはずがない! という、国王のなりの(かく)信が在ったのである。

どうせなら、手綱(たづな)まで(うば)って()しい。そんなことまで愚痴りたかったが、それは流石(さすが)に内心に留めておいた。

騎士とクリスファルトの対話は続いていた。

「では、魔族が離脱(りだつ)もせずに援護(えんご)を続けるのは……?」

竜を(おとり)にして逃げてしまえばいいのでは? という可能性である。

晩餐(ばんさん)会での嫌がらせに失敗した意(しゅ)返しでしょう。(けしか)けるタイミングを(ねら)っているかと。〈結界〉を機能不全に()い込めば、逃げるのも自由、でしょうしね」

クリスファルトの推察(すいさつ)に、国王が(きょう)味を示した。

「見()もりを聞こうか?」

轡が無かったら、という()害予測を指している。
そして、自身が指揮官だったら、状況をどう動かしていくのか? という判断材料(ざいりょう)(きょう)出をも(もと)めていた。

どうやら、国王もその線が()いと見当をつけたらしい。
クリスファルトはそう判断した。

「あれが成竜だとしたら――ですが。半径10㎞相当の区画(くかく)は、灰燼(かいじん)に帰して不自然は無いと」

「――――?!

過激(かげき)以外の何物でもない予測に、聞き耳を立てていた騎士達が絶()する。

現状の作戦区画は半径1㎞(てい)度。()り物となるはずの荒事の()台は数百mに想定している。
さらに、作戦区画の5倍の同心円を(さく)定して、市民の避難誘導を同時に(かん)行していた。

それが。まさか、想(ぞう)()えて(じん)大な被害の危険性を(かか)えていたとは。

しかし、国王は顔色一つ変えなかった。

(……セレナスめ……! とんでもない(くぎ)(もら)って来おってからに……!!

『その竜は、(かな)う限り、(ころ)さずに仕留(しと)められますよう!』とは。

現状、押し切られが目前の忸怩(じくじ)たる有様なのに、戦況は公国に有利で(ぜん)戦を達成しているという。
しかも、白い竜を()援する魔族の狙いがクリスファルトの仮定通りである可能性は小さくなく、結果はどうあれ、速攻で片してしまうことが肝要(かんよう)に思える。

だが、それは悪手だと親友は言う。

そして、「殺さずに仕留める」目(さん)が立たないわけでもない。

ラファルドを握らせたまま、対象を制(あつ)してしまえばいいのだ。
(ぞく)がラファルドを握っている限り、親友の助言を生かす好機は(かなら)(おとず)れる。
来なければ、(ごう)引にでもこじ開けるまで。
その為に必要な増援も、前線に近接中だという報告(ほうこく)が届いていた。

()人的な感情を言うならば、殺してしまいたい。(あだ)()つことにもなる。

「……とんでもなく、けったいな轡よな……!」

ただ、現状を()持しているだけではじり(びん)だ。王都の(しき)地を()えられては、(とう)走を許すばかりか、少なくない人的被害も確定してしまう。
(おっ)手を振り(はら)う為の目(くら)ましに強大な破(かい)力を()めた一撃を見()う、のは、常(とう)とも()べる手段だ。
騎士達は死力を(つく)くしてでも、竜を逃がすまいと(すが)りつくだろう。それが、犠牲(ぎせい)を不可避にする。
かと言って、適度な地点で見切りをつけ、逃げられてしまったことにするのも上策ではない。
神祇の異能は、悪用された時が(とく)(こわ)い。
おまけに。

(魔族放(ちく)が裏目に出ているな……。魔王級魔族が先刻のフォルセナルド一人だけ、という確(しょう)が取れない。……まあ、魔族の陛下、という手(ふだ)も在るには在るが……出来れば、な)

(たよ)りたくはないが、魔王である。
魔王級魔族だろうと、歯()にもかけない実力を持つ強力な札に(ちが)いは無い。
全く生かさないという贅沢(ぜいたく)は出来そうになかった。
現状の公国には魔族に対して豊富な経験と知(しき)を持つ人材が(とぼ)しいのである。

(公国にとっての最善を追求(ついきゅう)するなら――この轡を見逃す手は無い――か)

ラファルドはガルナードにとって、心を許せる貴重(きちょう)な知()の一人。
国王という商売の因果(いんが)さを()みしめる破目になろう――

「陛下!!!」

「――――、!!

クリスファルトの(けい)告で我に返った瞬間、真っ()(せん)光が炸裂(さくれつ)した。


「……猪口才(ちょこざい)な……!!

クリスファルトの張る防壁に守られて無事で()んだが、考え事に集中し()ぎたらしい。
(あや)しい()所が在る、と、魔族に見当をつけられてしまったようだった。
(ねん)の為で、中規模(きぼ)商店が入居できる建物が半壊する(ほど)の攻撃魔法を放り込めるとは、中々に過激。
手加(げん)は無用と判断せざるを得ない。

「…………!!

国王の存在に気付いた宙空の魔族は、(さら)なる追撃を目論んだ。

だが、騎士団が容赦(ようしゃ)の無い反撃を間(ぱつ)入れずに()びせかける。

魔法、(やり)、(投(てき)用の)短剣(たんけん)(じゅう)弾、矢と、飛び道具の集中(ほう)火が(きば)()いた。

「――――」

最初こそ、結界の中で(した)なめずりをしていたものの、あっという間に青ざめ、驚愕(きょうがく)し、結界が破壊される瞬間を目撃する破目になった。

!!!」

悲鳴(ひめい)すらも破壊されて、落下する。

更に(とど)めの集中砲火を見舞われた後、騎士団の捕(りょ)回収部隊が残骸(ざんがい)(さら)って(()生可能かどうか、判別する為)、あっという間に後方へと離脱していった。

「……やれやれ、だな……」

新たな”(かく)()”を今から(さが)し出さなければならない手間を思って、ガルナードはため息をつく。
よくもやってくれた。そんな忌々(いまいま)しさを()めて、適当な、宙空に陣取る魔族の一人を(にら)みつけた。

「――む?!

「……如何(いかが)され――、――あれは!?

様子を(うかが)って、国王の視線の先を追いかけたクリスファルトも、(すべ)てを俯瞰するように一人で宙に(たたず)む、(なぞ)の人物に表情を(けわ)しくした。
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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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