第25話◆魔王参上・・・改
文字数 3,490文字
ラファルドの呟きに、国王が厳しく目を光らせる。
ところが。
「おう! 少々手間取ったが、無事に片付いたぞ」
一握りの人間以外には覚えの無い声が合槌を打った。
「!?」
クリスファルトと宰相が国王を
玉座の間が騒然とする中、視線で声の正体を問う国王に、ラファルドは
「うほん!!」
咳払いで場を鎮めると。
「どちら様かな?」
「?!」
悠然とした態度に泡を喰った宰相とクリスファルトを視線で下がらせ、あくまでくつろいだ態度で、国王は玉座の
「む!
「はっはっは!」
非難の声には醒めた笑いで応じ、悠然と
そして、ラファルドは落第点をつけた。
「……なるほど? 世間知らず振りにおいても、我らが公国の
冷静に見せかけても、ラファルドの
短慮に振舞おうとする国王にも、国王の影に隠れてしまっている臣下にも、勿論、もう少し慎みと遠慮が欲しい魔族の王様とやらにも。
「ぬ、――「貴様」」
「自称、魔王……陛下?
ラファルドは冷静に突っ
「むう! 言うに事欠いて――」
「そうでないと言い張るのであれば、
「……客にも言い分が有ると思うのだが?」
往生際の悪い訪問客に、声を一段冷たくした。
「此は国の主たる王が住まう城。作法の弁えも無く押しかけるのは厚顔無恥――もしくは、世間知らずのみ。よくぞ、客を自称出来たものです。
ラファルドは
「陛下。短気は損気と申します。世間をこれから学ぶ子供じみた真似は、
割と容赦の無い物言いを選んだ。
国王には国王のやり方が在るとは承知している。
意外なくらいの成功率を誇る手腕だとも。
此処に家臣一同が控えていなかったなら、止めなかった。
威厳ある国王しか知らない家臣が巻き込まれるには
余波といえど、公国最強の武人の剣技を前にして肝を冷やさぬ臣民などいない。
忘れられてはならない事実であった。
「がうっ!! 貴様――! 直れ! そこへ!! 申し開き次第では、即刻剣の
「……陛下……。言わせないで頂きたいですね。
家臣の面前で世間知らず扱いされて、面白い王はいない。
大人の男であれば、尚のこと。
そうと承知していて、刺す。
公国最強の武人とは、公国が切れる最強のカードの一つ。
切り札は最も効果的な場面まで隠し持っていてこそ、価値を高くできる。
軽々にひけらかされては――自分の主義ではないと腹の探り合いを放棄されては、困るのだ。
知らねばならないのは、玉座の間に居合わせる人間すべての義務である。
現国王が魔族を放逐してから、
それを補うことの出来る場を、勝手に廃棄されては困るのだ。
家臣の経験不足は、主君の首を絞める真綿となって返って来る。
だから、ラファルドは
王として家臣に投げ渡した物、を。
「この
国王は
諫言の裏に在る、言葉にされたならかえって
「……、知るか! 声も
渋々という顔で腕を組んだ。
そして。
「……仕方ない。大人しく
(おや? 随分と聞き分けのいい――?)
人間の王を
決裂はともかく、ある程度の勘気はひけらかされるものだと予想していた。
まさか、人間の主従のやり取りから学んだというのか。
ラファルドはそう考えかけた。
「
高らかに宣言すると、セレナス達の左手5mほどの空間に、突如としてつむじ風が発生する。
「――(これは)――!?」
つむじ風はあっという間に育って、しかし、自然の風には在り得ない球体を形成し始めた。
「?!!」
生まれた光は一瞬で
風が治まり、目を開けられるようなると。
「我が名はゼルガティス=ルガルフ=シュグルフト=ガルドラー! 大陸ガルドラにて覇を唱えんとする魔族の王である。公国の方々、是非に、見知り置き願おうか!」
黒い装束に身を包んだ偉丈夫が堂々とそびえていた。
(……何て、傍迷惑な登場の仕方……!)
ラファルドの胸中は人間の確かな本音だった。
「――――」
押し殺せないざわめきが波紋として、玉座の間に広がる。
魔王は不満
「……何だ? 人間共の口は飾りなのか?」
表立った応対が無いことを指しているとは、ラファルドにも解る。
だが、相手は魔族の王であり、魔王を自称していた。
先触れの文が在ったとしても、対応に困るのである。
(……やれやれ。困った気性に変わりは無し、か……)
ただ、向こうも「王」という立場が付く大物だ。曲りなりでも客である分には、だんまりを続けることもできない。
かと言って、いきなり本丸である王を出陣させては、臣下として
頭が痛いのは、人間の世間に魔王にまつわる大変有名な風聞が
(……仕方ないですよね……)
厚かましさを承知の上で、異能の血族の末席であり、この場では立場が軽いラファルドが応対役を買って出た。
「先程は、結構な手土産を頂きまして。かような
魔族の王は悠然とラファルドを振り返る。
「む。……ああ、先程の小僧か。俺をまだ、世間知らずだと言いたげだな?」
(見る目が有る――よりも、蒸し返してでも会話の糸口が欲しい、といった所でしょうかね)
ラファルドは努めて冷静な対応を選んだ。
「人と魔族の間には、中々幸福な歴史がありません。慎重になるのも当然のことでしょうね」
「ほう?」
魔王は不機嫌そうに眉を閃かせる。
しかし、恐れ入るつもりも、会話の主導権を渡すつもりも、無い。
「けれど。下心はどちらのものでしょう? 公国の主が魔族を追放したのは、金輪際顔も見たくない! と、迷惑がったから、なのですが。花嫁は
「断る! 花嫁は、頂く」
ラファルドは会話を落し所に持っていく。
「ならば、誠実で在ることです。信用に
「……ふむ(
魔王はラファルドの前に立った。
「では、どの辺が世間知らずだと思う?」
意趣返しを狙っているのか、単に後学を求めてのことなのか。
意図は測り兼ねたが、正対すると、
黒ずんで見える瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
「人間に広まる、迷信が有ります。
しかし。
「……いかんなあ。争うことにばかり
腹を立てるどころか、かんらと笑って見せる。
ラファルドにとっても、少なからず意外だった。
(結構、
「此
「……迷惑?」
国王の