第67話◆正体~駆け引き

文字数 5,814文字

悲鳴(ひめい)を発した少女――セレナスを(きゅう)助しようとした反(しゃ)的な行動を()止するように大広間が()れる。

「――!?

人間達の戸惑(とまど)いを(すき)だとでも言うように、(ゆか)から()っ黒な(いばら)が生え、天(じょう)めがけて(きつ)立すると、あっという間に巨大な一本の柱と化してしまう。
その根元より数mの部分に、(とら)われたセレナスの上半身が(のぞ)いていた。

「セレナス――!!

狼狽(ろうばい)する国王を(あざわら)うように、傲岸(ごうがん)な男の(わら)い声が(ひび)く。

「はーっはっはっ……! お楽しみ頂けているようで何よりだ。無(ろん)、これは()が力の一(たん)()ぎん! さあ、どうしてくれるのかね? 人間(くず)!!

(……この声は、最初の――?)

正体を攪乱(かくらん)する為の小細工(ざいく)だと考えていた声の(さい)登場に、両者の関係に想像(そうぞう)(およ)ばなくなったラファルドは仮面の魔族を凝視(ぎょうし)してしまう。

(した)打ちが見えた、次の(しゅん)間。

「ぐっ――!! ……っ、ぁ、あ――、ああ! ああああーっ!!!」

(こん)身の咆哮(ほうこう)と共に、魔族の全身から黒い()動のようなものが(にじ)み出した。

?!(これは…………、――まさか、恩寵(おんちょう)!?)」

驚愕(きょうがく)するラファルドの前で、光の(くさり)粉々(こなごな)になって消(めつ)する。

(と、すると――この男、ひょっとして……直(けい)、ってことに、なる――?)

魔族における「直系」とは、魔王の血を引く者を意味する。

(我こそが、王の()相応(ふさわ)しき者! ってこと――なら、人間にこそ良くある話だけど。人間の(しゃく)度で考えていいものかどうか……、!)

鎖こそ千切(ちぎ)れてしまったものの、仮面の魔族の身体には光り(かがや)(きり)が残ったままだ。
(はい)後の状況(じょうきょう)も気になるが、改めて(ただ)してみるのも一(きょう)、と(まよ)いかけた。
(たん)に王に(したが)いたくないのと、継承(けいしょう)権が(から)んだ(あらそ)いとでは、公国の関わり方も変わらざるを得なくなる。

そこへ。

()りろ! おっさん!! さっきはそれで失(ぱい)したろ!?

「やかましいぞ! 不出来な弟子の分(ざい)!! (おれ)に説教したくば、餓鬼(がき)の一人や二人! こさえてからにするんだな!!

などという、(なさ)けない雑言(ぞうごん)応酬(おうしゅう)が聞こえて、ラファルドはため息をつきたくなる。
とりあえず、グラディルと国王の両方を不可視の拳骨(げんこつ)制裁(せいさい)した。

「何を――」

する!! が国王で、しやがる!! がグラディルだった。

「陛下。()(ちょう)を。……ラディ。もうちょっと上手(うま)(いさ)めてよ。俺に(まか)せろ! とかさ」

国王には冷たい視(せん)()びせ、グラディルにはため息を送る。

「…………」

俺の事を本当に国王と思っているのか?! という、疑惑(ぎわく)眼差(まなざ)しを返してきたのが国王で。

「……言わなかったと思うのか!?

と、()ねたのがグラディルだ。

とりあえず、ラファルドは納得した。

「そっか。だったら、(なぐ)って(しっ)神させる、とかでも良かったよ?」

!! ()様っ!!

「……あー、そこはまだ(こわ)いんだよな。力加(げん)(わか)んねえし。……失敗して柘榴(ざくろ)西瓜(すいか)作っても、(せき)任、取って(もら)えんの?」

「――――」

(おそ)る恐るラファルドを(うかが)うグラディルに、国王は絶句(ぜっく)し。

「…………無理だったか。あと、それは連(たい)責任で(ぼく)の首()飛ぶ(やつ)だからね」

ラファルドは(あきら)めた。
そして、国王の(ぼう)発阻止を(ゆう)先する。

「ラディ、こっちを見て貰っていい?」

「え? でも、あいつは――」

ラファルドの相手だから、こっちは俺が。と、行きたいグラディルだった。
(てき)度に弱らせた他人の()物を(ゆず)られるよりも、HP満タンから攻(りゃく)していくのが好きな(しょう)分である。
しかし、ラファルドはより優先度の高いグラディルの()好を知っていた。

「恩寵は予想(よそう)外だったけど、使いこなせる、ってレベルでもないかな。〈封縛(ふうばく)()〉は(のこ)ってる。(さい)(げん)程度の保証(ほしょう)だけど」

「……いいのかよ?」

グラディルが戸惑うのは、ラファルドはラファルドで、きっちり自分で白黒つけるのを好む(けい)向が在ると知っているからだ。
単純に、魔族の魔力と神祇(じんぎ)()能による(じゅつ)勝負の方が目が在るという読みも在ったが。

ラファルドは(うなず)いた。

「こっちの方がラディ向き……だと思うけど。手加減無用で(・・・・・・)行けるから」

「……!」

グラディルは小馬鹿にされたとでも言うように、ムッとする。
全力を出せる相手だと言ってはいるが、全力を出さないと勝てないよというニュアンスも()ぎつけていた。
弱いんだから、仕方ないじゃん、と言われた気がしたのである。

ラファルドは()段通りの()まし顔で、(とど)めを()しに行った。

「そっちは、無傷の救出が絶対の前(てい)なんだけど……行ける? だったら、(まか)せるよ?」

条件(じょうけん)を提示された途端(とたん)、グラディルはため息をつく。

「……、しゃあねえ。こっちを任されてやらあ!」

「そ。じゃあ、よろしく」

「おう! 任せとけ!」

すれ(ちが)(ざま)、グラディルは(こぶし)でラファルドの(かた)(たた)いて行った。


俺に何か言うことは無いのか?! と言いたげな国王を無視して、

「世話の()ける方、というのは、一人で十分なんですけどね……」

と、愚痴(ぐち)る。

ちらりと国王を一(べつ)すれば、何も聞こえていなかったように、国王はそっぽを向いていた。

セレナスを()らえた黒い茨の柱の前に立つと。

「さて。それで? 今度は何処(どこ)のどちら様でしょう?」

泰然(たいぜん)と、会話の口火を切った。
相手は声しか聞かせない上、王女(セレナス)という人質を取られて、公国に(はなは)だ不利な状況である。

「む! 貴様……! 我が手に有る(しち)が見えぬと(もう)すか!?

「だったら、何です?」

冷たく()()ねたラファルド。
下手(したて)に出たところで調子づかせるだけだし、出方を(うかが)えば、足元を見て、つけ上がって来る。
自分のペースで押し切ってしまうことが、ラファルドには肝心(かんじん)だった。

声は数瞬、沈黙(ちんもく)する。

そして。

「良かろう。(しら)百合(ゆり)とやらの()(ざま)、とくと」

見事なまでの短気っぷりに、ラファルドは(きょう)中でため息をつきつつも、舌鋒(ぜっぽう)()え渡らせた。

「その程度で()王の(みょう)代を自称するとは――寝言(ねごと)ですね。次期魔王を僭称(せんしょう)するに(いた)っては、(まさ)に身の(ほど)知らず! (あき)れるしかありません」

「何だと?!

捕虜(ほりょ)(あつか)いも知らないと言明する馬鹿に、一(まい)岩では済まされない国家という組織(そしき)(たば)ねられるはずがない。音に聞く魔王ゼルガティスは、数十の国家に領邦(りょうほう)包囲(ほうい)されても戦争を継続(けいぞく)できるそうで? 次期魔王ならば、(だれ)よりも(げん)魔王の手(わん)如何(いか)なるものか(わきま)えているはず。捕虜は無(きず)であってこそ価値(かち)が高い、とね。――さっさと(しり)をまくりなさい。自称次期魔王風情(ふぜい)の茶番(げき)に付き合わされるほど、人間は(ひま)ではありません」

「貴様……っ!! 王女を人質に取られる程度の無能の分際で――!!

ラファルドは美しくも冷ややかな微笑(びしょう)()かべた。
現状は順調に(・・・)推移していると言える。

「……無能、ですか。役に立たない人質を後生(ごしょう)大事にして居る自称次期魔王に言える言葉だとも思いませんが」

「……。見えていないなら、(おし)えてやろう」

(げん)な声が居丈高(いたけだか)(ひび)くと、黒い茨が(うごめ)いた。

「……あ! ……ぅ、う、うう……!!

セレナスが(くる)しそうに(あえ)ぐ。

しかし、ラファルドの空気は冷たく()ぎ澄まされていく一方だった。

「……悪戯(いたずら)(もてあそ)ばなければ、楽に死ねたものを……!!

「何!?

初めから殺すつもりだった、と(だん)言されて、(おだ)やかでなかったのは魔族も人間も同じである。
ラファルドは居ると決めつけた方向に視線を向けたまま、()り返りもしない。

「通じの悪い頭ですね。いいですか? 王族の犠牲(ぎせい)とは、(すべか)らく、民の為に在るもの。(しょく)責を(まっとう)うせずして、権利を(むさぼ)ろうなど(しょう)千万(せんばん)。王族の風上にも置けません。まして、王族の身(がら)(かどわか)せば一生楽に食える、と(さっ)覚させるなど(こう)顔無()にも程が在りますね。人(じち)という不(かく)を食わされた時点で、死を覚()して当然。命()いなど――、(ろん)外」

最後の言葉を一番冷(てつ)(だん)言する。

流石(さすが)に、(かん)視の(しゅう)人にも本気で気色(けしき)ばむ気配が(いく)つもあった。

「王族をうまうまと人質に取ったつもりでしょうが、馬鹿の逆上(のぼ)せ上がりでしたね? 国(ぞく)として征伐(せいばつ)させて頂きます。どうぞ、お覚悟を。自称、次期魔王殿?」

「ふざけるな!!!」

姿(すがた)無き声は、当然のように激怒(げきど)した。

「貴様()は、()みにじるのか……! 我らがあれほど苦言を(てい)して、ついに血迷ったかと激怒(げきど)してまで諫めたかった我らが王の(ふみ)を――、一()希望(きぼう)(たく)した、最初で最後の(いの)りを――」

(あれ……!?

余りに真摯な(・・・・・・)激怒に、ラファルドは困惑(こんわく)を押し殺すのに(ひど)く苦(ろう)させられる破目になった。
想定は、親魔王()(よそお)ったとしても、魔王ゼルガティスに反する勢力、だからである。

(われ)らが王は、玉座と引き()えにしてでも――と、覚悟を(しめ)しされた――だからこそ、我らは知らねばならなかった。人の国にどれほどの価値(かち)が在るのか――と」

(ちょ、ちょっと――!! ここに来て、世間知らずの、(はた)迷惑(めいわく)援護(えんご)(げき)だとでも――?!

もし、セレナスを人質にしている誰かの正体がそうならば――(はず)れも外れ、(ちょう)貧乏(びんぼう)くじ!! を引いたことになりかねない。

「……。狼藉(ろうぜき)(ためし)()別もつかないなんて、どんな世迷(よまい)(ごと)ですか――!」

ラファルドは苦労して叩きつけたい内心を(かく)し、台詞(せりふ)を差し()える。

「あれは――!」

意外なくらい高く、男には無い愛らしさが(にお)う声が(こぼ)れた。

?! ……あれ? 今の声――、ということは……あの声は、偽装(ぎそう)――?)

声は一瞬で元通り、傲慢(ごうまん)な男の物に(もど)る。

「……っ、やかましいっ!!

(照れ隠しはさておき、意図は食い違っている、と見ていい? ならば、あの名乗りは――)

「元より、我らは貴様ら人間と解りあえるなどと期(たい)してもおらん!! ()らぬ質だというのならば、好きに扱わせてもらおうか!」

ラファルドはすかさず反応した。

「それは凄惨(せいさん)な死に(ざま)確約(かくやく)される血判(けっぱん)、だと()(しょう)知の上で、どうぞ、御自由に。王女殿下を人質にしたことは、最悪の選(たく)でしたね?」

「ふん。王女の死に様を見て、精々(せいぜい)(かい)するんだな! 世間知らずではあっても我らが王の真意に気づけず、()めもしなかった(おろ)かさを歯噛(はが)みするがいい!!

ラファルドは台詞を無視して、(ちゅう)のある一点――床から10mほどの高さに、素早く視線を移す。

「そこですか!」

槍の穂先を向けると、先端に丸い()のついた光の鎖が飛び出し、何も無いはずの空間に(から)まった。

「――んなっ!? 何故(なぜ)?!

姿を見せない声は(おどろ)くが、一連の会話には、最初から声の出所を探る意図も在ったのである。

ラファルドは呆れた。

「何故も何も――、……成程? 仕掛けが解られている、という訳ではないのですか(だったら、何故、あれは――)」

「だったら何だ!? こんな物、こんな物――!!

宙空で、光の鎖が(つな)引きのように()(ちぢ)みを()り返す。
誰もがあそこに誰かが居ると確信できる状況が出来上がっていた。

「……()げられるなどと思わないで下さいね? 傍迷惑な(そう)動の対価は高くつくと理解させて差し上げますので。そうですね――ゼルガティス陛下直々(じきじき)(きゅう)、などは如何です?」

「はあっ!? ゼルあ――、(じゃない!!)……ほう、の灸がなんだと」

「さぞかし、お(はら)立ちのことのでしょうねえ(『ゼルあ……にうえ、かな。ひょっとして)? 見(ごと)器量(きりょう)と自身で()められた方への、狼藉ですから。熱いだけで()めばよろしいですけれど」

ラファルドは二本、三本と絡まる鎖を増やしていった。

「……んもうっ、この――、!? ……ふん! 世迷言を――!! 小(ぞう)!! 王女という人質が見えないのか?!

声は(あせ)りを無理矢理隠して、(そん)大に(せま)る。

ラファルドにはもう、(せっ)得力も何も無かった。

生憎(あいにく)と」

「――――」

可愛気(かわいげ)のかの字も無い、あまりの()っ気無さに、国王が反射的にラファルドを一瞥していた。

偽者(にせもの)、」

意味(しん)に言葉を切ると。

「…………」

囚われの王女がぴくり、と反(のう)した。

「えっ!? 偽も――」

「が、出現した……という(うわさ)も立った方ですしね」

(もてあそ)ばれたと気づいた声が(げっ)高する。

「……、やかましいわっ!!!」

荒々(あらあら)しい感情の(あらわ)れのように、稲妻(いなづま)が広間を()(めぐ)った。

しかし、ラファルドは(えい)兵の装備(そうび)に身を(つつ)んだまま、(たい)然と、稲妻の(あらし)の中に(たたず)んでいる。

(いま)だ正体を見せない誰かを見据えるラファルドは、何処までも落ち着き(はら)っていた。

「感情と〈力〉の結びつきは見事、ですけれど……。未熟(みじゅく)ですね、(すべ)てにおいて。ドルゴラン=セグムノフ。その名は魔(どう)()量において鳴り響いたと聞き(およ)びます。この程度では名前負けも(はなは)だしい」

「――――!!

息を()む音が聞こえ。

「…………貴様、言うに、言うに事()いて――!!

今までにない、本気の激情が()き上がり始めていた。

(だま)!!!」

グラディルと(にら)み合っていた仮面の魔族が、突然の()声で()り込んで来る。

誰かはびくり、と(ふる)えた。

「殺していい質など、さっさと殺してしまえ!!!」

「――ふん。何が偽者だ!! 王に(つか)える者が、王に(あら)ざる者の為に命を()すなど――在るはずがないっ!!

息まく気配にも、ラファルドは冷徹なほど静謐(せいひつ)だった。

「馬鹿をおっしゃい。偽者だろうと、(まつ)り上げられたからには正(とう)なる王族。その命に軽(ちょう)など在りはしない。もし、それが表れ()でるとしたら、それは(おのれ)を己の手で(はずかし)めた時だけ」

「……ふっ、…………ぐっ!」

(……やれやれ。(ずい)分と(うじ)素性(すじょう)のいいことで。それとも……これもまた、(みちび)き――かな?)

(てき)対している立場にある人間の(たしな)めを()に受けることに内心で苦笑し、誰かが自身の生まれと育ちを(しょう)知していることを感じ取る。
確信めいた予感が胸中に在った。

「王統に(つら)なる自覚が在るのなら、(わきま)えなさい。今、名前負けだと言うのなら、何時(いつ)か見合う自分になればいいのですから」

「――なっ!?

絶句したのは、語り()けられた当人だけではなかった。
ラファルドの言動は、()る確信を受け取るべき人物に伝えていたのである。

「まさか、伯父(おじ)()の――!?

国王が(ぼう)然とラファルドを見つめてくる。

その驚愕(きょうがく)を、ラファルドはため息で(こう)定した。

「……とんだ(さと)帰りですね」

そして。

「女の子に、男名前もどうかと思いますけれど」

(さら)なる爆弾(ばくだん)もおまけする。

「なっ――!? (まこと)?!

「――っ、ち、違う! 私は……あたしは、出来(そこ)ないなんかじゃ――!!

悲鳴は逃避(とうひ)であり、しかし、その中に痛みを(ひそ)ませていた。

ラファルドは()えて気づかない振りをして、笑顔を作る。

「感動の御対面の前に。お姿(はい)見と行きましょうか?」

「っ!!

舌打ちする仮面の魔族をグラディルが(はば)み、ラファルドの(やり)の石()きが床を打つ。

すると、光の鎖が一(きわ)(まばゆ)く輝いて。

「――?! な、何これ――!? や、止めて――!! 力が、力が()われ、て――!!

光が(おさ)まると、宙空に、鎖に絡め捕られた十代の少女が居た。
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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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