12-13
文字数 1,065文字
兵士達が檻を担いで王の元へ運び出す。
ナズナはどうにか逃げ出そうと彼らの名を呼ぶが、声が聞こえるだけで現れることはなかった。
『申し訳ありません、ナズナ様…。
外へ出ようにも何かに阻まれて出ることが出来ませんの…』
大地の精霊の娘の声にナズナははっとした。そしてそっと自身の首につけられた金属製の首輪に触れる。どう考えてもこれが原因だろう。
召喚魔法が使えないナズナなど、ただの小娘でしかない。ならばせめてと腰に差してある短剣に手を伸ばした。幸いなことに、短剣は奪われていなかった。
短剣を抜き、檻の格子に斬り付ける。竹で出来ているので、格子自体は脆かった。
必死で脱出を試みようとするナズナを、兵士達が嘲笑う。人間の小娘如きと、馬鹿にしているのだろう。そんな人間の小娘如きでも、ここから逃げ出すことぐらいは出来るはずだ。
どうにか抜け出せるくらいの穴を確保すると、ナズナは脇目も振らず勢いよく飛び出した。
転がるように床に着地し、出口に向かって一気に駆け出す。
人ごみを掻き分け、まもなく出口というところで突然竜人族の少年が舞い降りた。
「はい、残念でした」
少年の身長はナズナより少し上くらいだが、少年の背中から生えている竜の翼のせいで見た目以上に大きく感じる。
その涼やかな声音から、この少年が先程ナズナを買ったこの国の王…ホムラだと分かった。
こうして間近で見てみると、彼の髪は赤ではなく、赤黒い。まるで血のような色だ。
髪はかなり短く、額より少し上の辺りから一本の黒い角が生えている。
瞳の色は明るい紫で、夜から朝に移り変わろうとしている空の色を思わせた。
耳は当然竜人族の証である水かきのような耳で、服装は見慣れないものだ。布を幾重にも合わせたようなもので、一見動きにくそうでもある。色はやはり、この国の象徴である赤と黒が中心だ。
ナズナは彼が丸腰なのを確認して、短剣を構えた。
「そ、そこを通して下さい!」
意外な脅し方にホムラは少々面食らった。まるで警戒する子猫のようなナズナを見て楽しそうに笑う。
「通さなかったらどうするんだい?そんな短剣じゃ、私に傷一つつけることは出来ないよ?」
王の言葉に同調するかのように、周りがくすくすと笑い出す。
舐められているのだとさすがのナズナも理解した。羞恥と怒りで頭に血が昇ったナズナは、それを振り払うかのようにもう一度構え直す。
精霊達の力が借りられない今、自力で何とかするしかない。
「そんなの…やってみなければ分かりません」
お互いの目が細められる。
ナズナが一歩踏み出そうとしたところで、何かに足首を掴まれた。
ナズナはどうにか逃げ出そうと彼らの名を呼ぶが、声が聞こえるだけで現れることはなかった。
『申し訳ありません、ナズナ様…。
外へ出ようにも何かに阻まれて出ることが出来ませんの…』
大地の精霊の娘の声にナズナははっとした。そしてそっと自身の首につけられた金属製の首輪に触れる。どう考えてもこれが原因だろう。
召喚魔法が使えないナズナなど、ただの小娘でしかない。ならばせめてと腰に差してある短剣に手を伸ばした。幸いなことに、短剣は奪われていなかった。
短剣を抜き、檻の格子に斬り付ける。竹で出来ているので、格子自体は脆かった。
必死で脱出を試みようとするナズナを、兵士達が嘲笑う。人間の小娘如きと、馬鹿にしているのだろう。そんな人間の小娘如きでも、ここから逃げ出すことぐらいは出来るはずだ。
どうにか抜け出せるくらいの穴を確保すると、ナズナは脇目も振らず勢いよく飛び出した。
転がるように床に着地し、出口に向かって一気に駆け出す。
人ごみを掻き分け、まもなく出口というところで突然竜人族の少年が舞い降りた。
「はい、残念でした」
少年の身長はナズナより少し上くらいだが、少年の背中から生えている竜の翼のせいで見た目以上に大きく感じる。
その涼やかな声音から、この少年が先程ナズナを買ったこの国の王…ホムラだと分かった。
こうして間近で見てみると、彼の髪は赤ではなく、赤黒い。まるで血のような色だ。
髪はかなり短く、額より少し上の辺りから一本の黒い角が生えている。
瞳の色は明るい紫で、夜から朝に移り変わろうとしている空の色を思わせた。
耳は当然竜人族の証である水かきのような耳で、服装は見慣れないものだ。布を幾重にも合わせたようなもので、一見動きにくそうでもある。色はやはり、この国の象徴である赤と黒が中心だ。
ナズナは彼が丸腰なのを確認して、短剣を構えた。
「そ、そこを通して下さい!」
意外な脅し方にホムラは少々面食らった。まるで警戒する子猫のようなナズナを見て楽しそうに笑う。
「通さなかったらどうするんだい?そんな短剣じゃ、私に傷一つつけることは出来ないよ?」
王の言葉に同調するかのように、周りがくすくすと笑い出す。
舐められているのだとさすがのナズナも理解した。羞恥と怒りで頭に血が昇ったナズナは、それを振り払うかのようにもう一度構え直す。
精霊達の力が借りられない今、自力で何とかするしかない。
「そんなの…やってみなければ分かりません」
お互いの目が細められる。
ナズナが一歩踏み出そうとしたところで、何かに足首を掴まれた。