15-8
文字数 1,131文字
ふと、ナズナはユーフェイのこと、そして何も言わずに別れてきた幼馴染達や何も言わずに契約破棄してしまった魔界の王や大地の精霊の娘のことを思い描いていた。
水妖族の神は今、独り何を思っているのだろう。
魔界の王や大地の精霊の娘、幼馴染達は今、どうしているのだろう。
*
ナズナが目を覚ました頃には、すでに竜人族の王の姿はなく、代わりに鳥姿の神威が覗き込んでいた。
『お目覚めですか?王はすでに支度を整えて出て行かれましたよ』
そう言いながら神威は片翼である方向を示した。
示された方向には本日ナズナが纏う衣装がきちんと畳まれて置かれている。
今までは異境の者であるナズナに配慮して、ワンピースのような誰にでも着やすい衣装が用意されていた。しかし、本日は家臣達にナズナを紹介するという目的があるため、このコウヅキ国の民族衣装とも呼べる複雑な構造をした衣服が用意されている。
これは確実に自分一人だけでは着られない。
助けを求めるように神威の方を見た。神威なら今まさに東大陸…それもコウヅキ国の民族衣装に似た衣装を着ている訳だし、着方も知っているはずだ。
ナズナの意図を読んだ神威は浮かない顔で力なく首を振る。
『申し訳ありませんが、今の私の服装は魔法で生まれた時の服装を投影しているに過ぎないのです。
故に口頭で説明し、実際自分の手で着つけていくことは出来ません』
「え?そ、そうなのですか…」
誰かと契約する前の精霊というものはそのようにしているのかとナズナは納得する。
ましてや彼の場合、出身は東大陸といっても育ちは中央大陸。コウヅキ国の民族衣装の着方を知らなくても無理も無い。
ではその魔法でナズナを着替えさせることは出来るのか、というとそれはまた別の話らしい。もし彼がナズナに同じ魔法を掛けたとしたら、端から見たらコウヅキ国の民族衣装を纏っているように見えるが、実際は今着ている服のままという形になる。
もし魔力の強い者がその状態のナズナを見たらかなり滑稽な姿に映ってしまう。
とはいえ、このままずっと部屋にいる訳にはいかない。どうしようと思い悩んでいると、扉の方から控え目な女性の声が掛かる。
「あ、あのう…すみません…」
この国へ来てから、初めて女性と接する機会である。ナズナは慌てて返事をした。
それに伴い、神威も静かに目立たない位置へと移動する。
「は、はい。何でしょうか」
「王の命により、お着替えの手伝いに参りました」
まさに天の助けである。あまりのタイミングの良さに驚いたものの、ありがたいことに変わりはない。
声を聞くに、ナズナより少し年上の女性のものと思われる。今はいない大地の精霊の娘や竜人族の少女を思い出させる。
人見知りもあってか内心ドキドキしながらナズナは部屋へ入るよう促す。
水妖族の神は今、独り何を思っているのだろう。
魔界の王や大地の精霊の娘、幼馴染達は今、どうしているのだろう。
*
ナズナが目を覚ました頃には、すでに竜人族の王の姿はなく、代わりに鳥姿の神威が覗き込んでいた。
『お目覚めですか?王はすでに支度を整えて出て行かれましたよ』
そう言いながら神威は片翼である方向を示した。
示された方向には本日ナズナが纏う衣装がきちんと畳まれて置かれている。
今までは異境の者であるナズナに配慮して、ワンピースのような誰にでも着やすい衣装が用意されていた。しかし、本日は家臣達にナズナを紹介するという目的があるため、このコウヅキ国の民族衣装とも呼べる複雑な構造をした衣服が用意されている。
これは確実に自分一人だけでは着られない。
助けを求めるように神威の方を見た。神威なら今まさに東大陸…それもコウヅキ国の民族衣装に似た衣装を着ている訳だし、着方も知っているはずだ。
ナズナの意図を読んだ神威は浮かない顔で力なく首を振る。
『申し訳ありませんが、今の私の服装は魔法で生まれた時の服装を投影しているに過ぎないのです。
故に口頭で説明し、実際自分の手で着つけていくことは出来ません』
「え?そ、そうなのですか…」
誰かと契約する前の精霊というものはそのようにしているのかとナズナは納得する。
ましてや彼の場合、出身は東大陸といっても育ちは中央大陸。コウヅキ国の民族衣装の着方を知らなくても無理も無い。
ではその魔法でナズナを着替えさせることは出来るのか、というとそれはまた別の話らしい。もし彼がナズナに同じ魔法を掛けたとしたら、端から見たらコウヅキ国の民族衣装を纏っているように見えるが、実際は今着ている服のままという形になる。
もし魔力の強い者がその状態のナズナを見たらかなり滑稽な姿に映ってしまう。
とはいえ、このままずっと部屋にいる訳にはいかない。どうしようと思い悩んでいると、扉の方から控え目な女性の声が掛かる。
「あ、あのう…すみません…」
この国へ来てから、初めて女性と接する機会である。ナズナは慌てて返事をした。
それに伴い、神威も静かに目立たない位置へと移動する。
「は、はい。何でしょうか」
「王の命により、お着替えの手伝いに参りました」
まさに天の助けである。あまりのタイミングの良さに驚いたものの、ありがたいことに変わりはない。
声を聞くに、ナズナより少し年上の女性のものと思われる。今はいない大地の精霊の娘や竜人族の少女を思い出させる。
人見知りもあってか内心ドキドキしながらナズナは部屋へ入るよう促す。