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文字数 1,031文字

時々、ジェラルドと向き合っているナズナへ気遣わしげな視線を向けていた。それが余計にイリスの嫉妬心を煽っている。
 一方、ナズナはジェラルドと何を話せばいいのかを悩みながら黙々と料理を口に運んでいた。ちらりとジェラルドの様子を窺っていると、同じようにナズナの様子を気にしている彼の青い目と合った。気まずそうにジェラルドが声を掛ける。

「な、何だ…?」

「い、いえ…」

不躾な視線を送ってしまったことを恥じながら、ナズナは顔を真っ赤に染めて顔を伏せた。端から見たら初々しい恋人同士のように見える反応である。当然、本人達にそのような気持ちは芽生えていない。お互い理解しているが、ジェラルドの妹達はそうではなかった。
否、気づいていてもあえて無視をしてジェラルドとナズナを冷やかす。

「あらあらビスマルク嬢ってばお兄様を見て真っ赤になさって…もしかしてそういうことなのかしらねぇ、イリス?」

「そうだと思うわ!だとしたら私、断然応援しちゃうよー!」

 ミッターマイヤー姉妹のわざとらしい冷やかしにナズナの中にいるエリゴスが悪態を吐く。ジェラルドの眉間の皺もさらに深く刻まれていた。
空気が悪くなっては申し訳ないと思い、ナズナが軽く流して話題を切り替えた。

「あ、ありがとうございます。ところで閣下、このお城にはとても美しいと評判の庭園があると父から聞きました。
 もしよろしければこの後是非とも見せて頂けませんか?」

なおも冷やかしてこようとする姉妹を鋭い目つきで制し、ジェラルドは了承した。うまく城の中をうろつく口実を作ったナズナにソルーシュが心の中で拍手を送る。だが幼馴染のヴィルヘルムは複雑そうな表情でワインを飲み干している。
 姉妹達は姉妹達で邪魔者であるナズナと口うるさいジェラルドが席を外すことに喜びの表情を全く隠さない。機嫌を良くしたエッダがにこにこと美しい笑みを浮かべながら兄に言った。

「じゃあさっそくビスマルク嬢をエスコートして差し上げたら?」

妹の言葉にジェラルドは冷ややかな目を向ける。彼には妹の真意が見えていた。
だが不安そうに成り行きを見守っているナズナの手前、それを指摘することはない。ただ黙って二人の妹を睨み付けながら立ち上がり、ナズナを連れ出した。
彼らが部屋から出て行く時、ヴィルヘルムの厳しい声が追いかけてきた。

「ジェラルド」

呼ばれて振り向くと、無表情のヴィルヘルムがジェラルドを見ている。次に彼は従妹の方へ視線を移した。無表情が一転し、少々ぎこちない笑みに変わる。
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