8-13
文字数 1,032文字
食事する手を休めて、ナズナはメルセデスを見上げた。
「…ユーフェイのことですね?」
『はい…。私と神威さんはエリゴスさん程事情を知りません。
貴方が記憶をどれくらい取り戻して、またその取り戻した記憶がどういったものだったのかも。
そして何故、別の国の神であるユーフェイ様が貴方の身体に宿ったのかも』
メルセデスの話を聞いて、エリゴスはナズナの取り戻した記憶の内容やユーフェイの真意を彼女達に伝えていないのだと知った。
あくまで彼は見守る立場を貫くつもりなのだろう。エリゴスが何故部下に慕われているのか何となく分かる気がした。
何も答えようとしない主をメルセデスは心配そうに見守っている。その眼差しを感じつつ、もしも自分に姉がいたら、彼女のような感じなのだろうかと想像してみた。
ナズナは一度深呼吸をする。
「メルセデス、少し長くなるかもしれませんが…聞いてくれますか?」
主の言葉にメルセデスが表情をぱっと明るくし、大きく頷く。
『ええ!もちろんですわ!』
「ありがとうございます」
そしてナズナはゆっくりと話し始めた。
彼女が今まで取り戻した記憶の内容とユーフェイがナズナの身体に宿った経緯を。そして水妖族の者がナズナを執拗に狙う理由も。
しかしながら、ユーフェイの願いについてはまだ話さずにおいていた。
この件に関しては他の者に話してもよいか彼に許可を取った方がいいと判断したからだ。
ナズナの話を聞いていくうちに、メルセデスの表情が段々悲壮めいたものになっていく。
特にナズナが逃げ出す際に魔力を暴走させたところでは胸を痛めている様子だった。
きっと彼女はナズナに引いているに違いない。事情が事情とはいえ、ナズナが人を傷つけ、そして殺めたことに変わりはないのだから。
今の時点で話せる内容を全て告白し終えた時、ナズナは自虐的な笑みを浮かべて俯いた。
もしかしたらメルセデスは契約を破棄するよう要求してくるかもしれない。
仮にそうなってしまっても、ナズナはその要求を甘んじて受け入れ、彼女を解放するつもりだ。
まるで囚人が判決を待つような気持ちでナズナは大地の精霊の娘の次なる言葉を待つ。
ややあって、ナズナの予想に反することが起こった。
ふわり、と空気が揺れ動いたかと思えば、ナズナの身体はメルセデスに包まれていたのだ。
ナズナが目を丸くしていると、メルセデスは優しい声で囁いた。
『そのような辛い記憶を、ナズナ様は思い出されていたのですね。
思い出した時、その衝撃は計り知れなかったでしょう…』
「…ユーフェイのことですね?」
『はい…。私と神威さんはエリゴスさん程事情を知りません。
貴方が記憶をどれくらい取り戻して、またその取り戻した記憶がどういったものだったのかも。
そして何故、別の国の神であるユーフェイ様が貴方の身体に宿ったのかも』
メルセデスの話を聞いて、エリゴスはナズナの取り戻した記憶の内容やユーフェイの真意を彼女達に伝えていないのだと知った。
あくまで彼は見守る立場を貫くつもりなのだろう。エリゴスが何故部下に慕われているのか何となく分かる気がした。
何も答えようとしない主をメルセデスは心配そうに見守っている。その眼差しを感じつつ、もしも自分に姉がいたら、彼女のような感じなのだろうかと想像してみた。
ナズナは一度深呼吸をする。
「メルセデス、少し長くなるかもしれませんが…聞いてくれますか?」
主の言葉にメルセデスが表情をぱっと明るくし、大きく頷く。
『ええ!もちろんですわ!』
「ありがとうございます」
そしてナズナはゆっくりと話し始めた。
彼女が今まで取り戻した記憶の内容とユーフェイがナズナの身体に宿った経緯を。そして水妖族の者がナズナを執拗に狙う理由も。
しかしながら、ユーフェイの願いについてはまだ話さずにおいていた。
この件に関しては他の者に話してもよいか彼に許可を取った方がいいと判断したからだ。
ナズナの話を聞いていくうちに、メルセデスの表情が段々悲壮めいたものになっていく。
特にナズナが逃げ出す際に魔力を暴走させたところでは胸を痛めている様子だった。
きっと彼女はナズナに引いているに違いない。事情が事情とはいえ、ナズナが人を傷つけ、そして殺めたことに変わりはないのだから。
今の時点で話せる内容を全て告白し終えた時、ナズナは自虐的な笑みを浮かべて俯いた。
もしかしたらメルセデスは契約を破棄するよう要求してくるかもしれない。
仮にそうなってしまっても、ナズナはその要求を甘んじて受け入れ、彼女を解放するつもりだ。
まるで囚人が判決を待つような気持ちでナズナは大地の精霊の娘の次なる言葉を待つ。
ややあって、ナズナの予想に反することが起こった。
ふわり、と空気が揺れ動いたかと思えば、ナズナの身体はメルセデスに包まれていたのだ。
ナズナが目を丸くしていると、メルセデスは優しい声で囁いた。
『そのような辛い記憶を、ナズナ様は思い出されていたのですね。
思い出した時、その衝撃は計り知れなかったでしょう…』