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文字数 1,010文字

挑発に乗るほど、ジェラルドは浅はかではないようだが、ジンフーの物言いには腹が立つ。ナズナを脅すような口ぶりも気に食わない。ああ言われてしまえば、ナズナの性格上従ってしまうかもしれない。
彼女がジンフーに従う前に、ジェラルドが牽制するように鋭く言った。

「ナズナ、聞く耳持つな。私は負けん。お前を絶対あの不届き者達には渡さん!」

 端から聞くと告白めいたもののように聞こえるが、当の本人は必死なので全く気付いていない。ナズナもそうだ。
ユーフェイだけは複雑そうに眉間に皺を寄せていたが、ジェラルドの言い分には同意なので何も言わない。双剣を構え、水妖族の青年達を迎え撃つ体勢に入る。

『そういう訳だ。お引き取り願おう』

「ユーフェイ様…!」

 神の乱心を目の当たりにして、ジンフーの緑の瞳が丸くなる。事前にリュウシンから聞いていたものの、こうして実際に目にすると改めて衝撃を受ける。

 ナズナも短剣を構え、相手の様子を窺う。リュウシンとは一度戦ったことがあるが、ジンフーと戦うのはこれが初めてだ。彼がどんな風に戦うのか、まずは様子を見なければ。
リュウシンと同じようにその手にある短剣のみで戦うのか、それとも魔法を使う戦い方をするのか。警戒しておくに越したことはない。
 最初にジェラルドが動き、そして静観していたリュウシンが動く。ジェラルドの槍をリュウシンの機械の両腕が受け止める。その横でジンフーが動き出した。
彼はナズナを狙わずにジェラルドの方へと走り出す。先にジェラルドを倒すつもりなのだろう。
流石のジェラルドと言えど、二人相手は厳しいはずだ。ナズナが呼び掛けるよりも先に、ユーフェイが目にも止まらぬ速さでジンフーの前に立ち塞がり、剣を一閃させて遠ざける。

「くっ…」

『ご令息には近づけさせんぞ』

「相手に不足はありませんが…いやはや、やりにくいですね」

 困ったように笑いながらジンフーは懐から札を取り出す。
ナズナの持つカードとは違い、ぺらぺらの薄い紙のようだが、こちらの大陸では見られない文字や紋様が描かれている。ジンフーがその札をユーフェイに向かって勢いよく投げた。
投げられた札はユーフェイに近づくにつれて雷を帯び、蛇のような軌道を描く。魔力を帯びた雷はやがて水妖族の神に命中した。
命中したことにより、ユーフェイの身体を雷が包み込んでダメージを与えようとする。普通の人間なら即死級の威力を誇る術だが、やはり相手は神。そう易々とはいかない。
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