15-5
文字数 1,095文字
「そうだね。君には些か刺激が強すぎるかな。流石にちょっとはしゃぎ過ぎたよ。
注意してくれてありがとう、アカツキ」
「いえ、分かって頂ければいいのです。
未来の妃を婚前から御身の側に置くことは構いませんが、寝首を掻かれぬよう…」
物騒な言葉を残し、アカツキは軽く一礼して去って行く。
別に彼の言う通りにするつもりはないが、王の元から逃げようとはしている。そっと竜人族の王の様子を窺う。柔和な表情を崩さないまま、彼は家臣が去って行った方を見ていた。
ナズナの窺うような視線に気づいたホムラは笑みを返し、彼女の背を優しく押しながら部屋への歩みを進める。
「大丈夫だよ。もうあの部屋には戻さないから」
では一体どこに連れ戻されるのか。
一瞬だけ王の言葉に微かな希望を抱いたものの、どうせすぐに無駄になるのだと悟る。
どうせならあの水妖族の青年が囚われている牢の方が幾分か気が楽だろう。
いっそのこと、王の不興でも買ってそうなるように仕向けてみようかと考えた。
だが、これといったいい方法が思いつかず、あれよあれよといううちに王の私室まで連れて行かれた。
ホムラが先程宣言した通り、ナズナはあの重い閂のある部屋の中へ戻されることはなかった。その代わり、彼の私室内に留め置かれる。自分がどこに立っていればいいのか分からず、入り口の近くで立ち尽くす。
初めてこの部屋へ連れて来られた時と同じだった。
途方に暮れて立ち尽くすナズナの手を、ホムラが優しく導く。
「おいで」
部屋の奥にある寝台に座ったホムラの膝の上に座らされた。
ナズナの左肩にホムラの顎が載せられ、逃げられないように彼女の腹の前に両手が回される。
幼い時、エリゴスによくされた格好だ。一人心細い時にされると安心したものだが、成長した今、されるととても恥ずかしい。しかも身内(に近い存在)ではなく、異性にされると特に。
ナズナの中に潜むユーフェイの静かな怒りを感じるものの、どうしようも出来ない。
恥ずかしさのあまり身じろぎするが、ホムラは意に介さずそのままでいた。
時折、自身の右目を気にして擦っている。いたたまれなくなったナズナが尋ねた。
「陛下、あまり擦っては目に傷がつきます…。何か入ったのですか?」
「うーん…特に何か入ったという感じはないのだけれど、痛痒い感じがする。
多分、“彼”の感情に共鳴しているのだろうね」
そう答えて彼はナズナの左肩に額を擦りつける。その様子が何となく猫を思わせるようで、可愛いと感じてしまった。
途端背筋に寒気が走る。ナズナの腹を拘束していたホムラの片手が、彼女の細い首筋に触れた。
次の瞬間、首輪の上から物凄い力で締め上げられる。
「?!」
注意してくれてありがとう、アカツキ」
「いえ、分かって頂ければいいのです。
未来の妃を婚前から御身の側に置くことは構いませんが、寝首を掻かれぬよう…」
物騒な言葉を残し、アカツキは軽く一礼して去って行く。
別に彼の言う通りにするつもりはないが、王の元から逃げようとはしている。そっと竜人族の王の様子を窺う。柔和な表情を崩さないまま、彼は家臣が去って行った方を見ていた。
ナズナの窺うような視線に気づいたホムラは笑みを返し、彼女の背を優しく押しながら部屋への歩みを進める。
「大丈夫だよ。もうあの部屋には戻さないから」
では一体どこに連れ戻されるのか。
一瞬だけ王の言葉に微かな希望を抱いたものの、どうせすぐに無駄になるのだと悟る。
どうせならあの水妖族の青年が囚われている牢の方が幾分か気が楽だろう。
いっそのこと、王の不興でも買ってそうなるように仕向けてみようかと考えた。
だが、これといったいい方法が思いつかず、あれよあれよといううちに王の私室まで連れて行かれた。
ホムラが先程宣言した通り、ナズナはあの重い閂のある部屋の中へ戻されることはなかった。その代わり、彼の私室内に留め置かれる。自分がどこに立っていればいいのか分からず、入り口の近くで立ち尽くす。
初めてこの部屋へ連れて来られた時と同じだった。
途方に暮れて立ち尽くすナズナの手を、ホムラが優しく導く。
「おいで」
部屋の奥にある寝台に座ったホムラの膝の上に座らされた。
ナズナの左肩にホムラの顎が載せられ、逃げられないように彼女の腹の前に両手が回される。
幼い時、エリゴスによくされた格好だ。一人心細い時にされると安心したものだが、成長した今、されるととても恥ずかしい。しかも身内(に近い存在)ではなく、異性にされると特に。
ナズナの中に潜むユーフェイの静かな怒りを感じるものの、どうしようも出来ない。
恥ずかしさのあまり身じろぎするが、ホムラは意に介さずそのままでいた。
時折、自身の右目を気にして擦っている。いたたまれなくなったナズナが尋ねた。
「陛下、あまり擦っては目に傷がつきます…。何か入ったのですか?」
「うーん…特に何か入ったという感じはないのだけれど、痛痒い感じがする。
多分、“彼”の感情に共鳴しているのだろうね」
そう答えて彼はナズナの左肩に額を擦りつける。その様子が何となく猫を思わせるようで、可愛いと感じてしまった。
途端背筋に寒気が走る。ナズナの腹を拘束していたホムラの片手が、彼女の細い首筋に触れた。
次の瞬間、首輪の上から物凄い力で締め上げられる。
「?!」