15-11
文字数 1,047文字
ホムラの柔らかい声に家臣達の間に張り詰めていた緊張の糸が緩む。その様子をナズナは空虚な心で見ていた。
王はナズナの手を取り、一歩前へ出た。
「彼女が私の妃となるナズナだ。彼女は一見ただの人間に見えるけど、人間と妖精の血が混じっている。
また、彼女の中には我が宿敵である水妖族達の唯一神が封じられているんだ」
ホムラ自らの紹介に家臣達がどよめく。事前に知っていたアカツキを始めとする側近達だけが動じずナズナを注視している。王が軽く片手を上げ、家臣達のどよめきを制した。
「別に私の妃として彼女を迎えなくとも、人質としてこの国に留めておけばよいだろうと思う者もいるかもしれない。
だが私はどうしても彼女を妃として迎えたい。彼女の中にいる神は今、この首輪の力で表に出てくることはない。首輪の拘束力は、君達もよく知っているだろう?」
彼の言う通り、首輪の拘束力についてはどの家臣達も疑ってはいない。
ただほとんどの家臣達がナズナの身元について疑っている。何故なら彼らは彼女が王に買われ、そして刃を向けた瞬間を見ていたからだ。
恐れながら、とやはりアカツキが発言の場を求めてきた。竜人族の王は彼に発言を許可するかのように視線を投げる。その視線を受けてアカツキが王の方へ一歩進み出て先を続けた。
「彼女はタツミが連れてきた身元の知れないただのこ…いえ、少女です。いくら彼女の中に水妖族の神が宿っていようとも、陛下には不釣り合いです。
また、我々一部の者達は彼女が陛下に刃を向けた瞬間を見ていますし、先日彼女を取り戻そうと水妖族の者が襲撃したことを覚えています。
はっきり言って、彼女を妃として迎えることは陛下にとって、そしてこの国にとって災いを招く存在でしかありません」
一息吐き、そして彼は深呼吸する。
「家臣を代表して進言致します。彼女は貴方に相応しくない。故に人質として幽閉しておくことが望ましいかと存じます」
アカツキの進言を後押しするかのように、同意する声が続く。
ナズナにとっては追い風ではあるが、例えこうして面と向かって反対されても、ホムラの意志は変わらない。
おそらくナズナがここへ連れて来られる前に何度もされた問答だろう。ホムラは内心うんざりしていたが、その様子を表に出すことはなかった。
そのまま自分の意志を押し通すつもりかと思ったが、今回は違う。
「彼女の身元については、きちんとした身元だよ。本日、それを証明する客人をタツミがここに連れてきてくれたからね」
そう言って王が贔屓にしている商会の長の名を呼ぶ。
王はナズナの手を取り、一歩前へ出た。
「彼女が私の妃となるナズナだ。彼女は一見ただの人間に見えるけど、人間と妖精の血が混じっている。
また、彼女の中には我が宿敵である水妖族達の唯一神が封じられているんだ」
ホムラ自らの紹介に家臣達がどよめく。事前に知っていたアカツキを始めとする側近達だけが動じずナズナを注視している。王が軽く片手を上げ、家臣達のどよめきを制した。
「別に私の妃として彼女を迎えなくとも、人質としてこの国に留めておけばよいだろうと思う者もいるかもしれない。
だが私はどうしても彼女を妃として迎えたい。彼女の中にいる神は今、この首輪の力で表に出てくることはない。首輪の拘束力は、君達もよく知っているだろう?」
彼の言う通り、首輪の拘束力についてはどの家臣達も疑ってはいない。
ただほとんどの家臣達がナズナの身元について疑っている。何故なら彼らは彼女が王に買われ、そして刃を向けた瞬間を見ていたからだ。
恐れながら、とやはりアカツキが発言の場を求めてきた。竜人族の王は彼に発言を許可するかのように視線を投げる。その視線を受けてアカツキが王の方へ一歩進み出て先を続けた。
「彼女はタツミが連れてきた身元の知れないただのこ…いえ、少女です。いくら彼女の中に水妖族の神が宿っていようとも、陛下には不釣り合いです。
また、我々一部の者達は彼女が陛下に刃を向けた瞬間を見ていますし、先日彼女を取り戻そうと水妖族の者が襲撃したことを覚えています。
はっきり言って、彼女を妃として迎えることは陛下にとって、そしてこの国にとって災いを招く存在でしかありません」
一息吐き、そして彼は深呼吸する。
「家臣を代表して進言致します。彼女は貴方に相応しくない。故に人質として幽閉しておくことが望ましいかと存じます」
アカツキの進言を後押しするかのように、同意する声が続く。
ナズナにとっては追い風ではあるが、例えこうして面と向かって反対されても、ホムラの意志は変わらない。
おそらくナズナがここへ連れて来られる前に何度もされた問答だろう。ホムラは内心うんざりしていたが、その様子を表に出すことはなかった。
そのまま自分の意志を押し通すつもりかと思ったが、今回は違う。
「彼女の身元については、きちんとした身元だよ。本日、それを証明する客人をタツミがここに連れてきてくれたからね」
そう言って王が贔屓にしている商会の長の名を呼ぶ。