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文字数 1,024文字

否、彼女のことだから意図的に無視をしたのだろう。全く都合のいい面倒な話である。
ヴィルヘルムとはまた別の意味で面倒だ。どうせ好かれるならイリスのようなお子様体型ではなく、ソルーシュ好みのナイスバディなお嬢さんに好かれたいものである。
思考を飛ばすソルーシュに構わず、イリスは一人で喋り続けている。
 そこへ女神が現れた。(もちろん女神という言葉はソルーシュの大げさな表現に過ぎない)本来のこの席の主であるナズナである。
彼女は自分の席に無遠慮に座って入るエッダに戸惑い、おろおろとしていた。
イリスを物理的に横に退け、光の速さでソルーシュがナズナの元へ駆け寄って行く。

「ナズナ姫!如何致しましたか?!」

「あ…えっと…少し休憩に…」

駆け寄ってきたソルーシュの勢いに押され言い淀むナズナの背後からまた別の人物が現れる。
 ミッターマイヤー家の子息であり、ヴィルヘルムの同僚であるジェラルドだ。
基本的に愛想のない男だが面倒見はいい。おそらく疲れが見え始めたナズナを気遣ってここまで連れてきてやったのだろう。
ソルーシュは変人が多いミッターマイヤー家の中でも比較的まともなジェラルドを気に入っている。だが残念ながら向こうはそうでないようだが。
ソルーシュと会う度にジェラルドの眉間の皺が一本増えているので、おそらくあまり好かれていない。やはり今回もソルーシュの姿を認めると、眉間に皺が寄って苦い顔になった。
そんなジェラルドに苦笑しつつもソルーシュは彼に愛想良く挨拶をした。

「これは閣下、我が姫をここまでエスコートして下さりありがとうございます」

「…目付役ぐらいちゃんとこなせ」

「耳が痛いお言葉ですが、何分閣下の妹君が私めを解放して下さらなかったので」

ジェラルドの苦言にソルーシュはすかさず反論した。妹達の宮廷でしていることは嫌でもよく知っている為、ジェラルドは何も返せない。舌打ちをし、厳しい声で妹達に席をナズナに返すよう指示を出す。不満を露わにしつつも、妹達は従った。
すれ違い様にナズナを睨み付け、取り巻き達のいるテーブルの方へと歩いていく。
 ようやく解放されたか、と一安心してソルーシュはナズナを休ませるために座らせた。
あの妹達はジェラルドを敵に回すと厄介だということを知っているため、すんなり退いたのだろう。彼がナズナと共に来たことで、おそらくこの場ではナズナにちょっかいを掛けてくることはない。この舞踏会だけではあるが、ナズナは最恐の知り合いを手に入れてしまった。
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