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文字数 1,087文字

投げ飛ばされたリュウシンに近づき、そのまま馬乗りになると彼の機械の両腕を拳で叩き壊す。いきなり容赦のない攻撃に誰もが面食らう。
 叩き壊された機械の両腕は原型が分からないくらい無残な姿になってしまった。
それでもなお立ち上がろうとするリュウシンの腹を、ホムラの足が鋭く抑え込む。

「ぐっ…」

「衛兵。逃げ回っていたネズミを捕まえたよ。
 すぐに来て牢に入れておいてくれるかな」

王の良く通る声に応じ、少し遅れて衛兵達が部屋に入ってくる。リュウシンは抵抗する術を絶たれているため、何も出来ずに連れて行かれた。連れて行かれる直前、何か言いたげな視線をナズナに向けて何事かを囁いていたが、彼女の耳には届かなかった。
 水妖族の青年が連れて行かれ、衛兵達の姿がなくなったところでホムラが改めてナズナに向き直る。
彼女はその場に座り込み、恐怖のせいか意図的に視線を外していた。視線の先には、先程ホムラが粉々に破壊した彼の両腕の残骸がある。
それらを足で払い、彼女の目の届かないところへ飛ばし、目線を同じ位置まで落とした。
震えるナズナを落ち着かせるかのように手を握るものの、逆効果にしかならない。

「…本当にしょうがない子だね、君は」

 呆れたように溜息を吐きながら、ホムラはナズナの両脇に手を入れて立たせた。
思ったよりも優しい力に身構えていたナズナの身体の力が少し抜ける。恐る恐るホムラの顔を見て固まった。

 恐ろしいほど綺麗に、彼は笑っていた。
その笑みは全てを許すかのように、あるいは嘲るように。
何とも言えない美しい笑みにナズナの目が奪われる。
それに満足しながらも、ホムラは呑気に言葉を続けた。

「君がこれ以上おいたをしないように、鎖で繋いでもっと深く暗いところへ閉じ込めた方がいいかな?
 それとも、戒めのためにあの水妖族の者を君の目の前でじわじわといたぶる方がいい?」

とんでもない発言にナズナの顔色が蒼白になる。物凄い勢いで首を振り、先程感じていた恐怖も忘れて竜人族の王に縋りつく。

「い…嫌です…!どうか、彼にこれ以上ひどいことをしないで…!」

「だって、そうでもしないと君は何度でも私の元から逃げようとするでしょ?」

「…っ」

言葉を詰まらせ、ナズナは強く唇を噛み締める。
これ以上我慢出来ないと言わんばかりに、ユーフェイが無理矢理ナズナの中から出てきて怒鳴った。

『この…いい加減にしろ!!』

 まさか水妖族の神が出てくると思わなかったホムラが一瞬面食らう。
普通なら首輪に施された仕掛けによって押し込められて出て来られないはずなのに。その辺りは腐っても神なのだろう。否、今まで出てくる為の魔力を溜めていたのだろう。
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