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文字数 1,075文字

ヴィルヘルムも呆れ、何故そんなことをしたのかと彼女に問い詰める。

「パウラ、どうしてそんなことをしたんだい?それに騎士団…将軍の許可は?」

「…モニカ将軍の許可はもらってない。
 けど、あたしはヴィル達が心配で…」

「だからって何で密航なんて馬鹿なことを…!」

 今度はヴィルヘルムとパウラの口論が始まった。とにかく乗組員達の邪魔になるので、ソルーシュとジェラルドが二人の首根っこを掴んで船から引き摺り下ろす。
彼女の無茶な行動に呆れながらも、その真っ直ぐさが眩しくもあり、羨ましく感じる。
港に降り立ち、人の流れの邪魔にならない道の端に移動した。言い争うヴィルヘルムとパウラをよそに、ソルーシュとジェラルドは今後について話し合う。

「次にあいつらが向かう先の予想はつくのか?ソルーシュ=クリシュナ」

「最後の目的地は考えるまでもなく、水妖族の帝国がある東大陸ですね。
 仮にナズナ姫達がこの大陸にいるとするならば、この町の東にある国境の森を必ず通って獣人族の集落へ向かうでしょう。
 エドニス大陸から青藍大陸へ行くには、トリアの集落から出ている船で行くしか道がありませんから」

 ナズナがいるなら、余計にそうするだろう。ブリューテ大陸から出た時の行動は、船が使えなかったために強硬手段に出ただけだ。
転移魔法による手段もあるが、あの時ジンフーという青年が使用しなかったところを見ると、彼も使えないのだろう。それに、ナズナも転移魔法に関しては不得意だ。

ソルーシュの意見を聞いて、獣人族の貴公子はふむ、と顎に手を当てて考える。

「…ならば、国境の森の出口を張るべきか?」

それも悪くないが、如何せん月日がそれなりに経過している。また、ナズナの記憶の欠片は全て集まり切っていない。それを集めるために寄り道していることも考えられる。

 まずは彼女がどこにいるのかを正確に把握するところから始めなければならない。
幸い、レイジリアの町はそういった人探しの専門家もいる。いまだに言い争いを続けている二人の頭を軽く小突き、ソルーシュは彼らの意識を自分の方へと向けさせた。

「いつまでやってんだ。…とにかく、まずはナズナ姫の居場所を突き止めねえと。
 表通りの方に、人探し専門の魔法使いがいる。そこへ参りましょう」

「分かった」

「待ってよ、ソル。このままパウラも連れて行くのかい?」

幼馴染の騎士の言葉にソルーシュは振り向かずに答えた。

「どうせ帰る気ないだろ。諦めな」

パウラがついてくることは危険なため止めたいところだったが、ここまで来てしまった以上、彼女はノイシュテルンへ大人しく帰るつもりもないだろう。
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