7-14
文字数 1,033文字
だからユーフェイから感じられる魔力はどこか昏いものだったのか。
やり場のない怒りと憎悪を溜息に変えて、ユーフェイは白くなりつつある空を仰ぎ見る。それにつられてナズナもそれに倣った。
自身の身体が目覚めつつあるのか、自分の姿も、そして造られた神の姿も半透明になっていた。
『ナズナ…』
静かな声でユーフェイが呼び掛ける。首を傾げ、ナズナは彼の方に視線を移した。
『幼いお前の心につけこんであのような約束をしてしまい、申し訳ないと思っている。
だけど、俺の願いを叶えられることが出来るのはお前しかいない。それまでは俺が必ずお前を守る。だから…』
*
ナズナの目が覚めた時、最初に感じたのは潮の香りと穏やかな波の音。そして背中にごつごつとした感触の岩肌と遠くの方から聞こえてくる海鳥の声だ。
「気が付きましたか?」
突然掛けられた柔らかめの男性の声に、ナズナは目を開けた。
意識を失う前、ナズナに貼られていたユーフェイ封じの札はすでに剥がされていたが、代わりに両手を縄で拘束されている。その縄の上にユーフェイ封じの札が貼られていた。
仕方なしに声のした方を首だけ動かして見ると、相変わらず柔和な笑みを浮かべたジンフーの緑の目と合った。
「…ここは…」
小さな声を出したつもりだったが、しっかりと彼の耳に届いていたようだ。
「ここはこの大陸唯一の港町近くの洞穴ですよ。シェンジャ様を連れてどのように海を渡ろうか思案しているところです」
ナズナが水妖族の者ではないので、こちらへ来た時みたいに適当な場所から海へ飛び込む、という訳にも行かず、足止めを食らっているようだ。
ナズナの唯一の武器である神威の宿る短剣はおそらく、ジンフーかリュウシンによって捕られてしまっているだろう。だが神威、メルセデス、エリゴスのカードはまだ自身の懐奥底にあるはずだ。少々不安に思いながらも幼い頃からよく知っている魔界の王の名を呼ぶ。
「エリゴス!」
「おっと、他の方々を呼ぼうとしても無駄ですよ。召喚に必要な札はすでに没収してありますので」
「!!」
抜け目ないジンフーにナズナは戦慄した。これでは誰も召喚出来ない。
そこへ、町へ偵察に行っていたリュウシンが戻ってきた。水妖族の証である瑠璃色の髪と特徴的な耳を隠すため、マントをすっぽりと被っている。
彼は目覚めたナズナに一瞥をくれ、舌打ちした。先程見た記憶のせいか、ナズナは彼をまともに見返せずに俯いてしまう。
そんな彼女を気にすることなく、ジンフーは戻ってきた元同僚に話し掛けた。
やり場のない怒りと憎悪を溜息に変えて、ユーフェイは白くなりつつある空を仰ぎ見る。それにつられてナズナもそれに倣った。
自身の身体が目覚めつつあるのか、自分の姿も、そして造られた神の姿も半透明になっていた。
『ナズナ…』
静かな声でユーフェイが呼び掛ける。首を傾げ、ナズナは彼の方に視線を移した。
『幼いお前の心につけこんであのような約束をしてしまい、申し訳ないと思っている。
だけど、俺の願いを叶えられることが出来るのはお前しかいない。それまでは俺が必ずお前を守る。だから…』
*
ナズナの目が覚めた時、最初に感じたのは潮の香りと穏やかな波の音。そして背中にごつごつとした感触の岩肌と遠くの方から聞こえてくる海鳥の声だ。
「気が付きましたか?」
突然掛けられた柔らかめの男性の声に、ナズナは目を開けた。
意識を失う前、ナズナに貼られていたユーフェイ封じの札はすでに剥がされていたが、代わりに両手を縄で拘束されている。その縄の上にユーフェイ封じの札が貼られていた。
仕方なしに声のした方を首だけ動かして見ると、相変わらず柔和な笑みを浮かべたジンフーの緑の目と合った。
「…ここは…」
小さな声を出したつもりだったが、しっかりと彼の耳に届いていたようだ。
「ここはこの大陸唯一の港町近くの洞穴ですよ。シェンジャ様を連れてどのように海を渡ろうか思案しているところです」
ナズナが水妖族の者ではないので、こちらへ来た時みたいに適当な場所から海へ飛び込む、という訳にも行かず、足止めを食らっているようだ。
ナズナの唯一の武器である神威の宿る短剣はおそらく、ジンフーかリュウシンによって捕られてしまっているだろう。だが神威、メルセデス、エリゴスのカードはまだ自身の懐奥底にあるはずだ。少々不安に思いながらも幼い頃からよく知っている魔界の王の名を呼ぶ。
「エリゴス!」
「おっと、他の方々を呼ぼうとしても無駄ですよ。召喚に必要な札はすでに没収してありますので」
「!!」
抜け目ないジンフーにナズナは戦慄した。これでは誰も召喚出来ない。
そこへ、町へ偵察に行っていたリュウシンが戻ってきた。水妖族の証である瑠璃色の髪と特徴的な耳を隠すため、マントをすっぽりと被っている。
彼は目覚めたナズナに一瞥をくれ、舌打ちした。先程見た記憶のせいか、ナズナは彼をまともに見返せずに俯いてしまう。
そんな彼女を気にすることなく、ジンフーは戻ってきた元同僚に話し掛けた。