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文字数 1,037文字
穏やかではあるが、どこか底冷えするような声音でヴィルヘルムは従妹に問う。
「…どうして?まさか、こいつらに脅されているの?」
有り得ない話ではない。現にナズナはすごく怯えている。
彼は従妹の冷えた両頬から手を離すと、背中に背負っていた片手剣と盾を素早い動作で装備する。ナズナを自身の背に隠し、殺気の籠った目を水妖族の青年二人に向ける。
殺気立つ騎士に肩を竦め、ジンフーが困ったように言った。
「お言葉ですが勇敢な騎士殿。シェンジャ様は自らの意志で我々と共に在るのですよ」
「は?」
真意を窺うように視線を移すと、彼女はジンフーの言葉を肯定するよう小さく頷く。
彼女の肯定にヴィルヘルム達全員が目を剥いた。
ジェラルドがナズナの前に駆け寄り、彼女の両肩を掴み揺さぶる。
「一体どういうことだ?説明しろ!」
ナズナは答えない。そこでジェラルドがあることに気付いた。ナズナの両肩を掴んだまま、彼女の中にいる水妖族の神の名を呼ぶ。
「出て来い、ユーフェイシンジュン!貴様が一枚噛んでいるのだろう?!」
聞き慣れない名前にヴィルヘルムとパウラが首を傾げ、ソルーシュはまさか、と唾を飲み込んだ。
ユーフェイが出てくるよりも早く、ナズナがジェラルドの胸を自身の両手で押し出し、距離を取ろうとする。彼女の拒絶にジェラルドは少々面食らった。
獣人族の貴公子は逃げようとする令嬢の細腕を掴み、自分の方へと引き寄せる。
「記憶を取り戻して、何を知った?」
「わ、私…」
「まさか、本当にあの得体の知れない者の花嫁になるつもりでいるのか?!」
『そこまでにしてもらおう』
怯えるナズナと興奮するジェラルドの間に、件の水妖族の神が現れる。
初めて見る彼にヴィルヘルムとパウラは目を見張り、ソルーシュははっとした。
現れた水妖族の神は、ほんの一瞬だけであったがフェアデルプ灯台で見たことがある。ソルーシュの胸の内に、あの時抱いた不快感が蘇った。
そして理解した。フェアデルプ灯台でリュウシンを圧倒的な力で捻じ伏せたのは、ナズナの中にいた彼がしたことなのだと。
涼しい顔をしているユーフェイにジェラルドが噛みつく。
「ナズナに何をした」
貴公子の鋭い視線を真正面から受けて、水妖族は不敵に笑う。
『何も。ただ我が花嫁は選んだだけだ』
そう言ってユーフェイは半透明の姿から実体化すると、自分の花嫁からさりげなくジェラルドを遠ざける。自らの方にナズナの身体を引き寄せ、自身の腕の中へ導いた。
ナズナは大人しくされるがまま、彼の腕の中に納まって俯いている。
「…どうして?まさか、こいつらに脅されているの?」
有り得ない話ではない。現にナズナはすごく怯えている。
彼は従妹の冷えた両頬から手を離すと、背中に背負っていた片手剣と盾を素早い動作で装備する。ナズナを自身の背に隠し、殺気の籠った目を水妖族の青年二人に向ける。
殺気立つ騎士に肩を竦め、ジンフーが困ったように言った。
「お言葉ですが勇敢な騎士殿。シェンジャ様は自らの意志で我々と共に在るのですよ」
「は?」
真意を窺うように視線を移すと、彼女はジンフーの言葉を肯定するよう小さく頷く。
彼女の肯定にヴィルヘルム達全員が目を剥いた。
ジェラルドがナズナの前に駆け寄り、彼女の両肩を掴み揺さぶる。
「一体どういうことだ?説明しろ!」
ナズナは答えない。そこでジェラルドがあることに気付いた。ナズナの両肩を掴んだまま、彼女の中にいる水妖族の神の名を呼ぶ。
「出て来い、ユーフェイシンジュン!貴様が一枚噛んでいるのだろう?!」
聞き慣れない名前にヴィルヘルムとパウラが首を傾げ、ソルーシュはまさか、と唾を飲み込んだ。
ユーフェイが出てくるよりも早く、ナズナがジェラルドの胸を自身の両手で押し出し、距離を取ろうとする。彼女の拒絶にジェラルドは少々面食らった。
獣人族の貴公子は逃げようとする令嬢の細腕を掴み、自分の方へと引き寄せる。
「記憶を取り戻して、何を知った?」
「わ、私…」
「まさか、本当にあの得体の知れない者の花嫁になるつもりでいるのか?!」
『そこまでにしてもらおう』
怯えるナズナと興奮するジェラルドの間に、件の水妖族の神が現れる。
初めて見る彼にヴィルヘルムとパウラは目を見張り、ソルーシュははっとした。
現れた水妖族の神は、ほんの一瞬だけであったがフェアデルプ灯台で見たことがある。ソルーシュの胸の内に、あの時抱いた不快感が蘇った。
そして理解した。フェアデルプ灯台でリュウシンを圧倒的な力で捻じ伏せたのは、ナズナの中にいた彼がしたことなのだと。
涼しい顔をしているユーフェイにジェラルドが噛みつく。
「ナズナに何をした」
貴公子の鋭い視線を真正面から受けて、水妖族は不敵に笑う。
『何も。ただ我が花嫁は選んだだけだ』
そう言ってユーフェイは半透明の姿から実体化すると、自分の花嫁からさりげなくジェラルドを遠ざける。自らの方にナズナの身体を引き寄せ、自身の腕の中へ導いた。
ナズナは大人しくされるがまま、彼の腕の中に納まって俯いている。