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文字数 1,012文字

表情よりも尻尾の方が素直なジェラルドに、ナズナの中にいるエリゴスは魔界の部下達を思い出す。ナズナにジェラルドが内心喜んでいることを教えてやろうと思ったが、神威やメルセデスに止められて渋々心の中にしまっておくことに。
代わりにユーフェイの機嫌がめっきり悪くなっている。だが、主であるナズナは新たなお友達(予定)のジェラルドに意識が向けられているため、気づかなかった。

ナズナから了承を得たことにより、ジェラルドはぶんぶんと勢いよく尻尾を振ったまま彼女を伴い、庭園の方へと導く。外へ出てみると、雪は止んでいるが日はすでに沈んでいるため、肌を刺すような寒さが二人を襲う。
ジェラルドは着込んでいるためあまり寒さを感じないが、ドレスだけしか纏っていないナズナは違う。急な温度差により、小さなくしゃみが出た。彼女のくしゃみにジェラルドが慌てて自身の上着をナズナの細い肩に掛けてやる。

「あ、ありがとうございます、閣下。気を遣わせてしまって申し訳ないです…」

「いや、こちらこそすまなかった。その、お前の格好のことも考えずに外へ誘い出してしまって…やはり中へ戻るか…」

自分の不甲斐無さに先程まであんなに元気だった尻尾と耳がしゅんと力無く垂れている。何だか可愛いお人だな、とナズナのジェラルドに対する印象が変わった。

「閣下が貸して下さった上着がありますから、大丈夫です」

「…そ、そうか」

ナズナの言葉を受けて、ジェラルドの耳と尻尾が再び立つ。庭へと続く小道を歩く足取りも少々軽やかだ。そんな彼を微笑ましく思いながら、ナズナは獣人族の貴公子の後に続く。
やがて、ナズナとジェラルドの前に美しい庭園が現れた。隅々まで手入れが行き届いており、この寒さの中色鮮やかな花を咲かせている。この庭園内だけには何か特殊な仕掛けを施しているのか、雪が全く積もっていない。
月明かりに浮かぶ幻想的な風景にナズナはしばし目を奪われた。

「綺麗…」

ミッターマイヤー家自慢の庭園に魅了されているナズナを見て、ジェラルドは得意げに頷いた。
 ここはジェラルドのお気に入りの場所の一つである。彼が非番で家に戻った時の大半はここか自身のために造られた訓練場にいる。ジェラルドにとってここが最も心休まる場所なのだ。ただし、今のように誰もいない時に限るが。
とにかく、この令嬢が喜んでくれて何よりだ。本当ならばもう少しここにいたいところだが、いい加減彼女の従兄や幼馴染がやきもきしている頃だろう。
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