9-16
文字数 1,008文字
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何かの気配を感じ、ナズナはゆっくりと意識を浮上させた。
目を開け、気配の確認をすると彼女の枕元に立っていた水妖族の神、ユーフェイ。てっきりメルセデスが傍についていてくれたのだろうと思っていたので、ナズナは少々驚いた。
「ゆ、ユーフェイ…」
『おはよう、ナズナ』
にこにこと上機嫌で挨拶してくるユーフェイに戸惑いつつも、挨拶を返す。
「お、おはようございます…。一体いつから?」
『つい今しがただ。お前の顔が見たくなってな』
最後の彼とのやり取りを思い出し、何となく気まずいナズナ。しばらくは彼を恐れて避けていた気がする。特に夢の中では。
だが水妖族の神は前回のことについて特に何も言ってこない。とりあえず起きようとナズナが身を起こすが、それよりも先にユーフェイが覆い被さってきた。
鼻先が触れ合いそうな距離で、二人はしばしお互いの瞳の中を探り合う。ややあって、照れが生じてきたナズナが口を開いた。
「え、えっと…どうなさったのですか?その、メルセデスは…」
後半の言葉を黙殺して、水妖族の神は目を細めて艶っぽく微笑む。
『どうすればお前を俺の元へ留めておけるのか、考えていた』
「…へ?」
突拍子もない神の言葉に思わず間抜けな声が飛び出した。そしてはたと思い返す。
彼はやはり不安なのだろう。ナズナがエリゴスに助けを求め、彼の元から逃げ出してしまうのではないかと。
そんなことは有り得ないのだが、今の様子では言葉だけで満足してくれなさそうなのが明らかである。何を持って証明すれば、彼は満足してくれるのだろう。
そっとナズナは両手をユーフェイの両頬に添え、彼の隻眼を真っ直ぐ見据えた。
「私は、貴方の元から逃げません。貴方との約束も、必ず果たします」
『…』
水妖族の神は答えない。やはり言葉だけでは満足してくれないようだ。
彼の刺すような視線に怯むことなくナズナが続ける。
「言葉で信じて下さらないのなら、教えて下さい。
どうすれば信じて頂けるのですか?」
『…それは…』
口ごもり、視線を泳がせるユーフェイ。彼自身ナズナにどう証明して欲しいのか、頭の中で描かれているものの、それを告げることに躊躇しているようだ。
そこへ、扉を叩く音が響く。
この部屋の主である大地の精霊の娘が戻ってきたのかと、ナズナは身を起こした。ユーフェイもナズナから離れ、彼女の中へと還って行く。
扉を開けてみると、ナズナの予想に反してそこに立っていたのは水妖族の青年リュウシンだった。
何かの気配を感じ、ナズナはゆっくりと意識を浮上させた。
目を開け、気配の確認をすると彼女の枕元に立っていた水妖族の神、ユーフェイ。てっきりメルセデスが傍についていてくれたのだろうと思っていたので、ナズナは少々驚いた。
「ゆ、ユーフェイ…」
『おはよう、ナズナ』
にこにこと上機嫌で挨拶してくるユーフェイに戸惑いつつも、挨拶を返す。
「お、おはようございます…。一体いつから?」
『つい今しがただ。お前の顔が見たくなってな』
最後の彼とのやり取りを思い出し、何となく気まずいナズナ。しばらくは彼を恐れて避けていた気がする。特に夢の中では。
だが水妖族の神は前回のことについて特に何も言ってこない。とりあえず起きようとナズナが身を起こすが、それよりも先にユーフェイが覆い被さってきた。
鼻先が触れ合いそうな距離で、二人はしばしお互いの瞳の中を探り合う。ややあって、照れが生じてきたナズナが口を開いた。
「え、えっと…どうなさったのですか?その、メルセデスは…」
後半の言葉を黙殺して、水妖族の神は目を細めて艶っぽく微笑む。
『どうすればお前を俺の元へ留めておけるのか、考えていた』
「…へ?」
突拍子もない神の言葉に思わず間抜けな声が飛び出した。そしてはたと思い返す。
彼はやはり不安なのだろう。ナズナがエリゴスに助けを求め、彼の元から逃げ出してしまうのではないかと。
そんなことは有り得ないのだが、今の様子では言葉だけで満足してくれなさそうなのが明らかである。何を持って証明すれば、彼は満足してくれるのだろう。
そっとナズナは両手をユーフェイの両頬に添え、彼の隻眼を真っ直ぐ見据えた。
「私は、貴方の元から逃げません。貴方との約束も、必ず果たします」
『…』
水妖族の神は答えない。やはり言葉だけでは満足してくれないようだ。
彼の刺すような視線に怯むことなくナズナが続ける。
「言葉で信じて下さらないのなら、教えて下さい。
どうすれば信じて頂けるのですか?」
『…それは…』
口ごもり、視線を泳がせるユーフェイ。彼自身ナズナにどう証明して欲しいのか、頭の中で描かれているものの、それを告げることに躊躇しているようだ。
そこへ、扉を叩く音が響く。
この部屋の主である大地の精霊の娘が戻ってきたのかと、ナズナは身を起こした。ユーフェイもナズナから離れ、彼女の中へと還って行く。
扉を開けてみると、ナズナの予想に反してそこに立っていたのは水妖族の青年リュウシンだった。