9-13
文字数 1,054文字
ナズナを奪われないように必死ではあるものの、メルセデス如きに全力を出す必要がないと思われているのだろう。
それは事実だ。現にメルセデスは攻めることが出来ずに防御に専念することしか出来ない。
ここまで粘ることが出来たのも、正直奇跡に近い。だが、その奇跡もまもなく終わりを迎えようとしている。
『!!』
メルセデスの剣が弾かれ、落とされる。主にユーフェイの剣を受け続けて手が痺れていたせいもあるが、冷や汗も一つの原因だ。
後の攻撃手段は魔法しかないのだが、それ以上にユーフェイの猛攻が激しく唱える隙が無い。万事休すか、とメルセデスが腹を括ったところで閃光が走る。
ユーフェイの魔力ではない魔法の風がメルセデスの身を守った。魔法を放った乱入者を見て、水妖族の神は怒りで顔を歪める。
『お前は…!』
黒い翼を広げ、小さな頭に銀の冠を載せた魔界のカラスが一鳴きし、電光石火の如くメルセデスの元へと舞い下りた。ユーフェイから守るようにメルセデスの前で滞空すると、カラスの姿から少年の姿へと変わる。
メルセデスとは初対面だが、ユーフェイとは二度目になる。魔界の王の政務補佐官ストラは水妖族の神から目を離さぬまま、大地の精霊の娘にいつもの軽い調子で挨拶した。
『どうもっス、メルセデスさん。僕の名前はストラ。エリゴス様の政務補佐官っス。
エリゴス様の気まぐれにより、加勢に来ちゃいました』
『え、エリゴス殿の…?』
予想外の援軍にメルセデスは目を丸くする。まさかあの魔界の王が。
しかし助かったのは事実。ストラはメルセデスと同じくらいの身長だが、何だかその背が頼もしく見えた。
エリゴス本人が来ず、その部下であるストラが来たということは彼もかなりの実力者なのだろう。ストラの力を借りれば、この苦境と水妖族の神の暴走を止められるかもしれない。
希望の光が見えてきたことにより、メルセデスは安堵する。
『何にせよ、助かりましたわ。だけどここからどう盛り返すおつもり?』
『うーん…ぶっちゃけ何も考えてないっス』
まさかの無策にメルセデスが固まった。
『…え…?』
『エリゴス様の考えとしては、ナズナちゃんを悲しませたくないからメルセデスさんを助けるっていうんで僕を寄越した訳で…』
主を気軽にちゃん付けで呼ぶことに少々引っ掛かったが、エリゴスがストラを加勢させた理由に納得した。したのはいいが、その理由ではメルセデスしか納得しない。
と思っていたのだが、意外にもユーフェイも納得しているようであった。
『…確かに、このままこの娘を消してしまえば我が花嫁が悲しむな』
それは事実だ。現にメルセデスは攻めることが出来ずに防御に専念することしか出来ない。
ここまで粘ることが出来たのも、正直奇跡に近い。だが、その奇跡もまもなく終わりを迎えようとしている。
『!!』
メルセデスの剣が弾かれ、落とされる。主にユーフェイの剣を受け続けて手が痺れていたせいもあるが、冷や汗も一つの原因だ。
後の攻撃手段は魔法しかないのだが、それ以上にユーフェイの猛攻が激しく唱える隙が無い。万事休すか、とメルセデスが腹を括ったところで閃光が走る。
ユーフェイの魔力ではない魔法の風がメルセデスの身を守った。魔法を放った乱入者を見て、水妖族の神は怒りで顔を歪める。
『お前は…!』
黒い翼を広げ、小さな頭に銀の冠を載せた魔界のカラスが一鳴きし、電光石火の如くメルセデスの元へと舞い下りた。ユーフェイから守るようにメルセデスの前で滞空すると、カラスの姿から少年の姿へと変わる。
メルセデスとは初対面だが、ユーフェイとは二度目になる。魔界の王の政務補佐官ストラは水妖族の神から目を離さぬまま、大地の精霊の娘にいつもの軽い調子で挨拶した。
『どうもっス、メルセデスさん。僕の名前はストラ。エリゴス様の政務補佐官っス。
エリゴス様の気まぐれにより、加勢に来ちゃいました』
『え、エリゴス殿の…?』
予想外の援軍にメルセデスは目を丸くする。まさかあの魔界の王が。
しかし助かったのは事実。ストラはメルセデスと同じくらいの身長だが、何だかその背が頼もしく見えた。
エリゴス本人が来ず、その部下であるストラが来たということは彼もかなりの実力者なのだろう。ストラの力を借りれば、この苦境と水妖族の神の暴走を止められるかもしれない。
希望の光が見えてきたことにより、メルセデスは安堵する。
『何にせよ、助かりましたわ。だけどここからどう盛り返すおつもり?』
『うーん…ぶっちゃけ何も考えてないっス』
まさかの無策にメルセデスが固まった。
『…え…?』
『エリゴス様の考えとしては、ナズナちゃんを悲しませたくないからメルセデスさんを助けるっていうんで僕を寄越した訳で…』
主を気軽にちゃん付けで呼ぶことに少々引っ掛かったが、エリゴスがストラを加勢させた理由に納得した。したのはいいが、その理由ではメルセデスしか納得しない。
と思っていたのだが、意外にもユーフェイも納得しているようであった。
『…確かに、このままこの娘を消してしまえば我が花嫁が悲しむな』