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文字数 1,019文字

 出来ればまた会って話したいと思うが、向こうはヴィルヘルム同様騎士団に身を置く者。非番でない限り容易に会えないだろう。
それを少し残念に思いながらナズナはソルーシュと共に父の帰還と従兄達の報せを待った。



 騎士団の詰所に着いたヴィルヘルムとパウラは久しぶりに会う同僚達に短く挨拶をしながらミッターマイヤー家の者達の姿を探す。
一番話しやすいのはジェラルドだが、この際ジェラルドの兄エミールでも構わない。パウラが掲示板に貼ってある割り当て表を確認し、ジェラルドの名前を探した。今月の彼の配置は新米騎士の武術指南役らしい。

「この時間は確か実技訓練だから、広場にいるんじゃない?」

パウラの言葉に頷き返し、ヴィルヘルム達は颯爽と広場に向かう。
 広場に着くと威勢のいい掛け声と武器を振るう音が聞こえてくる。パウラの言う通り実技訓練の真っ最中で、新米騎士対ジェラルドの模擬戦が行われている。
ジェラルドは自身の得意武器である槍を巧みに操り、次々と新米騎士達を負かしていく。

「次っ!」

「はい!」

このタイミングで声を掛けるのははばかれるため、少し待つ。やがて全ての新米騎士達が彼に打ち負かされ、休憩時間を知らせる鐘が鳴り響く。ジェラルドが休憩の号令を掛けると、新米騎士達は武器を片付けに倉庫へ戻っていく。
 一人になった頃を見計らって、ヴィルヘルムとパウラは彼の元へ歩み寄った。

「ジェラルド」

久しぶりに見た同僚と後輩に気づき、ジェラルドは微かに目を見開いた。

「お前ら…」

「久しぶり。いい鬼教官っぷりだね」

ヴィルヘルムのからかいにジェラルドは鼻を鳴らす。相変わらずな同僚の態度にヴィルヘルムは朗らかに笑った。水飲み場に移動しながら二人は話し続ける。

「いつ戻った?」

「ついさっき。パウラが叔父上の命を受けて迎えに来てくれたから、予想よりも早く帰ってこれたよ」

「なるほどな。それで、上司に報告せず真っ直ぐ私のところに来た理由は何だ?」

 勘のいいジェラルドに内心舌を巻きながらヴィルヘルムは一瞬だけパウラと視線を交わす。
彼の父や兄と違い、ジェラルドは厳格ではあるものの誠実な人となりだ。ごまかさずに正直に話せばきっと力になってくれるはずだ。
同じことをパウラも考えているのか、ヴィルヘルムに頷き返す。彼女の後押しを受けて、ヴィルヘルムは腕組みしているジェラルドに向き直った。

「実は君に頼みたいことがあるんだ。近いうちに僕の従妹であるナズナが君の城に訪問したいと言っている」
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