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文字数 1,030文字

「えーっと閣下、本日は閣下の姉君と妹君はご不在ですか?」

ソルーシュの質問にジェラルドが振り向くことなく不機嫌そうに答えた。

「いない。邪魔をされては面倒だから適当に理由をつけて追い払った。今頃は取り巻きの一人の屋敷にいるだろう。
 女好きな貴様としてはいた方がよかったか?」

「とんでもございません!むしろ私めとしては大変ありがたいことであります」

ソルーシュの正直な返答にジェラルドの機嫌がさらに悪くなるのではないかとナズナは心配になったが、杞憂だった。
とにかくあの三姉妹が不在ということでソルーシュとナズナはほっと胸を撫で下ろす。おかげで大分気が楽になった。

 晩餐会が行われる部屋に着いたところでその安心感は一気に崩れ去ることになるのだが。

入った瞬間、ジェラルドが固まった。続いて入ったヴィルヘルムとソルーシュもまた同様に固まる。何かあったのかとナズナも従兄と幼馴染の間から覗き込むと固まった。
いないと思っていたエッダとイリスがそこにいたからである。長女のクララの姿は無かったが。ジェラルドが頭を抱えながら妹達に尋ねた。

「何故お前達がここにいる?」

エッダは恥じらう乙女の仮面を被ってもじもじしているため、末の妹であるイリスが代わりに答えた。

「えー?ソルーシュが来るって話を聞いたからだよー」

そう言ってイリスはナズナを公然と無視し、お目当てのソルーシュの元へ駆け寄った。自分の家だからまるで遠慮が無い。イリスとは対照的にエッダは固まっているナズナの前に立つと、妖艶な笑みを浮かべて腰を折って挨拶した。

「ようこそ、ビスマルク嬢。よろしければ私と妹もこの晩餐会にご一緒してもよろしくて?」

彼女の声に控え目ながらも有無を言わせないものが含まれていたので、ナズナは頷かざるを得ない。客人の了承を得たエッダはさらに微笑み、素早い動きでヴィルヘルムの腕を捕まえて自分の前の席に座らせた。当然イリスもそれに倣い、ソルーシュを座らせる。
ジェラルドは呆れて物も言えずにナズナを自分の前の席に座らせるのだった。

 各々が席に着いたところで、晩餐会が始まり次々と料理が運ばれてくる。エッダとイリスはそれぞれの前の席に座るお気に入りの者達に矢継ぎ早に話し続けた。
興味の無い話でもヴィルヘルムは真面目に聞いては相槌を打ち、合間に出された料理を次々と平らげて行く。
律儀なヴィルヘルムに対してソルーシュの対応は真逆だった。彼の関心はイリスに向けられることなく部屋にある家具や絵画等に向けられている。
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