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文字数 1,070文字

 ソルーシュはあまり魔法に詳しくない。自身が習得している炎の魔法も、知り合いの魔術師に分かりやすく解説してもらって何とか習得したものだ。
そういえば自身の魔力は皆無に等しかったのに、ここ最近やっと発動出来るようになったのは何故だろう。
魔法といえば、魔界の王であるエリゴスやここへ来る時に世話になったタリアン教授が詳しいはずだ。エリゴスはともかく、再びタリアン教授を尋ねるべきか。
もしかしたらナズナが飛んだ先は水妖族の国かもしれない。仮にそうだとしたら、あまり時間がないだろう。
迷う暇があったら、さっさと水妖族の国へ向かった方がいい。

「閣下!」

リュウシン達に喰ってかかる獣人族の貴公子が振り向かずに答えた。

「何だソルーシュ=クリシュナ!!今取り込み中だ、後にしろ!」

「そんなことより、ナズナ姫を探さねば…」

「しかし…居場所が分からんだろう?!」

 リュウシンの鼻で笑う声が聞こえた。
ぎろりと二人が睨み付けてみれば、彼はしたり顔で笑っている。どう見ても何かを知っているようだ。胸倉を掴むジェラルドの手を振り払い、リュウシンはジンフーを伴って海に面した崖の方へ悠然と歩いていく。

「…どこへ行く?」

ソルーシュの質問にジンフーが簡潔に答えた。

「神の花嫁の元へ」

それだけ答えるとリュウシン達は崖から海へと飛び込んだ。
水の中に逃げ込まれては追い掛けられない。深く潜ったのか、彼らの姿は見えなかった。
 だが向かった先は東大陸だということは、飛び込んだ地点から何となく想像がつく。

「閣下、我々も船に乗って東大陸へ向かいましょう。彼らは迷うことなく東大陸の方へ向かって飛び込みました。
 おそらく彼らには、ナズナ姫がどこにいるのか分かっているのでしょう」

ただ、あの青年達に追いつくことは出来ない。残念ながらこのメンバーの中に転移魔法を使える者はいないし、タリアン教授も専門ではないからだ。
 待ち伏せをするとなると、最終目的である水妖族の国のユーフェイが祀られている神殿だろう。
ジェラルドも幾分か冷静さを取り戻し、ソルーシュの考えに賛同するよう頷いた。

「ではさっそく向かうとするか」

「あ、その前に」

獣人族達に事情を説明し終えたヴィルヘルムがパウラと共に並び立つ。

「僕はパウラを送りがてら、叔父上に報告しに戻る。
 それに、ナズナからユーフェイを引き離す方法がないか知恵を借りに行ってくるよ」

 ヴィルヘルムが少し咎めるような視線をパウラに送ると、彼女は罰が悪そうに両肩を竦める。
確かに、彼女は何も言わずに騎士団を抜け出してきたので、今頃かなりの騒ぎになっているに違いない。
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