10-4

文字数 1,034文字

「大地の精霊、ガイア様が…?」

「そう。このレガシリアを支える四大精霊のうちの一人がね。
 朝、妹から貴方の話を聞いたから」

 リフィーの言葉にナズナは安堵した。
メルセデスがここにいないのは自身の母を始めとする家族達に会いに行っていたからなのか。その代わり、ナズナの中にいるユーフェイの気が少しだけ乱れたような気がした。
やはりユーフェイも神といえど、四大精霊の一人に会うのは緊張するのだろうか。
 なお、彼が緊張しているのはもちろんナズナが考えているような理由ではない。
しかしこの花嫁は先程の一件を知らないので仕方がなかった。

 四大精霊を信仰していないリュウシンとしては、リフィーの申し出を撥ね退けてさっさと蒼湖帝国へ戻る旅を再開したいが、ナズナが何だか乗り気のため諦めかけている。
ならばさっさと済ませた方がいいだろう。

「…時間が惜しい。さっさと案内しろ」

 当然の如くついてくる気満々の水妖族の青年にリフィーが眉を顰める。
母に呼ばれているのは妹の契約主であるナズナだけで、この不遜な態度の水妖族の青年はお呼びでない。
ナズナの方もまさか彼がガイアに会うという寄り道を許可(?)してくれるとは思っていなかったので、少々驚きぽかんと口を開けている。てっきりいつもの調子でばっさりと斬り捨てられるかと思っていたからだ。
リュウシンがついてくることを快く思っていないリフィーがはっきりと拒否した。

「貴方はダメよ。呼ばれていないもの。ここで待っていてちょうだい」

「断る。ワタシはコイツの護衛役だから目を離す訳にはいかない」

強い調子で食い下がってくるリュウシンに内心うんざりしながら、妖精の少女は片手を振った。

「あのねぇ…ただ話をするだけだってば。何も危険なことなんてないわよ」

「しかし…」

「あーんまり聞き分けが無いようだと、お仕置きするから」

ずい、と水妖族の青年の顔に自身のそれを近づけ、笑顔で凄む。
彼女の表情こそ満面の笑みであったが、放たれている重圧感がとてつもないものだった。さすがは大地の精霊の娘といったところか。
 どうもリュウシンは、メルセデスといいその姉といい、大地の精霊の娘達に対してナズナに対する時のように強く出られない。
彼がリフィーの迫力に負けたところで、ナズナは彼女に手を引かれて大地の精霊ガイアの待つ神殿へと向かった。

 すでに時間は昼に近く、村では妖精や精霊達が楽しそうにのんびり過ごしている。
時折、ナズナの方をちらちら見ては何やら興味深そうにひそひそと囁き合っていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み