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文字数 1,084文字

「…ああ、よく知ってる。ありがとう、タリアン教授」

『礼には及ばないよ。丁度講義の合間で退屈していたところだ。
 何なら久しぶりの再会に今から一杯やるかい?』

「悪いね。それはまた今度の機会に」

『そりゃ残念だ。ああ、宿を探すつもりなら東通り方面が空いてるよ。エリゴス陛下によろしく伝えてくれ』

 聞き覚えのある名前を呟いて肩を竦めるように首を動かし、水晶玉の中からタリアン教授の姿が消える。
完全に消えたのを見計らって恐る恐るパウラがソルーシュに尋ねた。

「ね、ねえ…今のは一体?」

「あれでも魔法歴史学の教授さ」

不思議そうな顔でヴィルヘルムがべたべたと遠慮なしに水晶玉を触る。

「どこか遠くから通信魔法でも使っていたのかな?」

『違うよ』

突然水晶玉に先程の男性…タリアン教授の顔が浮かび上がり、声が響く。

『こんなのでも立派な僕の身体なんでね。これ以上無遠慮に撫で回されたら、お触り料を取るけど?』

「!!し、失礼致しました!」

 慌ててヴィルヘルムが手を離すと、タリアン教授は苦笑いして再び姿を消す。
流石魔法学院。不思議がいっぱいである。
水晶玉が教官だなんて、ノイシュテルンでは考えられない。
 とりあえずソルーシュ達はタリアン教授の部屋から出て、彼が教えてくれた東通りへと向かう。
そこは魔法学院のすぐ近くにあり、学院の生徒達の姿もちらほら見えた。
手頃な値段の宿も見つかり、パウラはほっと一息つく。数時間身体を休めたら、再び学院内に戻ってあの魔法陣を使い、獣人族の集落へと向かうらしい。
久しぶりのふかふかのベッドで休めることにパウラは喜んだが、ソルーシュの表情を見てすぐに引っ込めた。
ジェラルドは元々渋い表情だから気にならないが、いつもへらへらしているソルーシュが思い詰めた表情のままなのは珍しい。
それに気づいたジェラルドが尋ねた。

「…どうした、ソルーシュ=クリシュナ?ナズナの居場所が分かったというのに、浮かない顔をして」

「いえ…何も」

どう見ても何もないというような表情ではない。
しかし本人が言いたくなさそうだったのでジェラルドとパウラはそれ以上何も聞かないでおこうとしたのだが、またしてもあの男が動いた。

「ねえ、前からソルに聞きたかったんだけどさ」

 空気が読めない男、ヴィルヘルムである。
また余計なことを言うのではないかとパウラの顔が青ざめた。
だがいつものことなのでソルーシュは表情を変えることなく応じる。

「何だよ」

「ソルってさ、女の子に対しては僕も引いちゃうほど優しいけど、ナズナに対してはそれ以上に過保護だし、今回の件についてもすごく必死だよね。
 もしかしてソルってナズナのこと…」
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