7-4

文字数 1,028文字

ユーフェイが片手をほんの一振りしただけで、彼の身体にまとわりついていた雷が一瞬で掻き消えてしまう。

『効かぬな』

「おやおや、私なりのとっておきだったのですが…」

ちっとも残念そうではないジンフー。彼も神と刃を交えること自体が初めてなので、様子見のつもりで今の札を投げたのだろう。
彼は札を使った魔法も使えるのか、とナズナは頭に叩き込む。
呪文を唱えない分、魔法の発動が早い。ユーフェイが事前に言っていてように、ジンフーもかなりの手練れだ。

 もう一人誰かを召喚すべきか、と悩むが今の自分の力量を考えると、ユーフェイを先に召喚してしまったらもう一人召喚するのは厳しいという結論が出た。

 ユーフェイは水妖族の唯一神。
神威やメルセデスのような精霊や、エリゴスのような魔界の王よりも高位の者だ。
もしも彼を召喚したまま他の誰かを召喚すれば、先にナズナが倒れてしまう。
ならばナズナが今すべきことは集中してユーフェイの召喚を維持することだ。

 花嫁の想いに応えて、ユーフェイがジンフーに斬りかかる。
どうにか紫の短剣で受け止めた。しかし、もう一方の斬撃がジンフーに襲い掛かる。瞬時にジンフーは懐を探って先程とは別の紋様と文字が描かれた札を取り出し、魔法を発動させて攻撃をやり過ごした。
 こんなこともあろうかと、攻撃用の術とは別に守備用の術の札を事前に作っておいたのだ。
ただ、普通の攻撃なら一つの札で三回くらい耐えられるのだが、神の攻撃には耐えられないので一回きりだ。その分、多めに作っておいたので、使い切る前に何とかしてナズナを捕らえなければ。
短剣の持っていない方の手に、札を扇のように広げる。構え方が微妙にナズナと似ているが、やはり向こうの方は戦闘経験が豊富なので隙が感じられない。
再びジンフーがユーフェイに向かってくる。否、ユーフェイではなく、ナズナに。
ジンフーの狙いを読んでいたユーフェイは双剣を交差させて行く手を阻み、彼を押し戻した。

「うーん、いい線行ってたと思ったんですけどね」

 押し戻されたジンフーはどうしたものかと距離を取り、頭を掻く。
やはり神相手ではジンフー一人だと全く太刀打ち出来ない。早く同僚があの邪魔な獣人族を倒してこちらに合流してくれないものか。
ちらりと横目でリュウシンの方を見てみると、向こうの戦いはジンフーが思っている以上に白熱していた。

「オマエ、アイツの何なのだ?」

リュウシンという青年の唐突な質問に貴公子は眉を顰めた。何だと聞かれても、答えようがない。
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