10-7
文字数 1,041文字
一通りナズナを眺めると、ガイアは娘の小さな主に顔を上げるよう促した。
言われた通りに顔を上げると、メルセデスが音もなくナズナの側に立っている。彼女の白い手には、素朴な木彫りの腕輪が握られていた。装飾のアクセントに少し大きめの深緑色の鉱石がはめ込まれている。
これがこの部屋に入る前にリフィーが言っていた他の種族向けの装飾品なのだろうか。
しかし何故今それをここで見せるのだろう。それを見せるためだけに、ナズナを四大精霊の一人の元へ呼んだとは考えられない。
ナズナの考えを遮るように、ガイアが軽い調子で言った。
『契約者よ、その腕輪を自身の腕にはめよ』
「へ…?」
突然のことにナズナは目を丸くしてガイアとメルセデスを交互に見た。
嫌な予感がしたユーフェイが勝手に自身の判断でナズナの中から出てくる。そして花嫁を庇うように立ち塞がった。
彼はあの時メルセデスを取り逃がしてしまったことを心底後悔していた。
まさかあの政務補佐官は魔界に逃げ出したのではなく、彼女の母親の元へと逃がしていたのか。
過去の遺恨もあり、てっきりあの魔界の政務補佐官の向かう先は魔界だと思っていたのだが。
裏切られた予測にあの忌々しい政務補佐官とその上司である魔界の王がほくそ笑んでいるかと思うと心底腹が立つ。
彼女が余計なことを言ってナズナに知られる前に、さっさと消しておかねば。今花嫁にはめようとしているあの腕輪も、きっとろくでもない代物のはずである。
自身が呼んでもいないのに出てきたユーフェイに困惑し、ナズナは彼のマントの裾を掴む。
「ゆ、ユーフェイ?そんなに怖い顔をしてどうしたのですか?」
『下がっていろ』
有無を言わせないような声音にも関わらず、ナズナは珍しく退かなかった。
「嫌です!ただ腕輪をはめるだけでしょう?
確かにいきなりはおかしいかもしれないですけど…」
そこまで警戒する必要はない、と言い掛けてナズナは口を噤む。
睨み合う水妖族の神と大地の精霊の娘の間に流れる険悪過ぎる空気を嫌でも感じ取ったからだ。
自身の知る限りでは、ユーフェイとメルセデスに面識はなかったと記憶している。彼らが会話しているところも目にしたことがない。
なのに何故、お互いが敵意に満ちた視線で睨み合っているのだろう。
まさか、自分の知らない間に二人が敵対してしまうような出来事でもあったのだろうか。
ナズナにとって二人は大事な仲間といってもいい存在だ。そんな二人が敵対してしまうなど悲しすぎる。咄嗟に間に入り、ナズナは二人を落ち着かせようと奮闘する。
言われた通りに顔を上げると、メルセデスが音もなくナズナの側に立っている。彼女の白い手には、素朴な木彫りの腕輪が握られていた。装飾のアクセントに少し大きめの深緑色の鉱石がはめ込まれている。
これがこの部屋に入る前にリフィーが言っていた他の種族向けの装飾品なのだろうか。
しかし何故今それをここで見せるのだろう。それを見せるためだけに、ナズナを四大精霊の一人の元へ呼んだとは考えられない。
ナズナの考えを遮るように、ガイアが軽い調子で言った。
『契約者よ、その腕輪を自身の腕にはめよ』
「へ…?」
突然のことにナズナは目を丸くしてガイアとメルセデスを交互に見た。
嫌な予感がしたユーフェイが勝手に自身の判断でナズナの中から出てくる。そして花嫁を庇うように立ち塞がった。
彼はあの時メルセデスを取り逃がしてしまったことを心底後悔していた。
まさかあの政務補佐官は魔界に逃げ出したのではなく、彼女の母親の元へと逃がしていたのか。
過去の遺恨もあり、てっきりあの魔界の政務補佐官の向かう先は魔界だと思っていたのだが。
裏切られた予測にあの忌々しい政務補佐官とその上司である魔界の王がほくそ笑んでいるかと思うと心底腹が立つ。
彼女が余計なことを言ってナズナに知られる前に、さっさと消しておかねば。今花嫁にはめようとしているあの腕輪も、きっとろくでもない代物のはずである。
自身が呼んでもいないのに出てきたユーフェイに困惑し、ナズナは彼のマントの裾を掴む。
「ゆ、ユーフェイ?そんなに怖い顔をしてどうしたのですか?」
『下がっていろ』
有無を言わせないような声音にも関わらず、ナズナは珍しく退かなかった。
「嫌です!ただ腕輪をはめるだけでしょう?
確かにいきなりはおかしいかもしれないですけど…」
そこまで警戒する必要はない、と言い掛けてナズナは口を噤む。
睨み合う水妖族の神と大地の精霊の娘の間に流れる険悪過ぎる空気を嫌でも感じ取ったからだ。
自身の知る限りでは、ユーフェイとメルセデスに面識はなかったと記憶している。彼らが会話しているところも目にしたことがない。
なのに何故、お互いが敵意に満ちた視線で睨み合っているのだろう。
まさか、自分の知らない間に二人が敵対してしまうような出来事でもあったのだろうか。
ナズナにとって二人は大事な仲間といってもいい存在だ。そんな二人が敵対してしまうなど悲しすぎる。咄嗟に間に入り、ナズナは二人を落ち着かせようと奮闘する。