11-8
文字数 1,080文字
青年の意外な言葉にジェラルドの目が驚きで丸くなった。
そんな獣人族の貴公子から視線を逸らしながら、ソルーシュは宙を仰ぐ。
「正確に申し上げますと、記憶を取り戻して真実を知ったナズナ姫に会うのが怖い、ですかね」
「…何故だ?」
ジェラルドの質問にソルーシュは宙を仰ぐのを止め、焦点の合わない瞳に獣人族の貴公子の姿を映す。
いつも以上に険しい表情をしたジェラルドが見据えていた。その鋭い視線に喉元まで出ていた言葉が引っ込みそうになるが、全てを告白したいという気持ちが強かったために吐き出す。
「全部、オレのせいだから」
*
ジンフーがエリゴスのカードをすんなり返してくれたおかげで、久しぶりに堂々と彼を召喚することが出来た。
エリゴスは腕を組み、高い位置からナズナ達を見下ろしている。
『久しいな、ナズナ。この場で俺を呼んだということは、欠片の在り処が知りたいのだな?』
白々しい挨拶に苦笑いしながらナズナが頷く。
「はい。ここは複雑な場所のようで少々分かりにくいのです」
『だろうな。だからこそ隠すのに最適だと考えたのだが…』
特にここに隠した記憶の欠片は、と付け加えてのろのろと魔界の王が動き出す。
彼は魔法使いが使う鍋の前に立つと、鍋の中に手を突っ込みまさぐった。途中得体の知れない音が聞こえてきたが、その音はすぐに収まった。
振り返った彼の手の平には、淡い翡翠の光を放つ記憶の欠片が載せられている。
それを受け取ろうとしたところで、一旦エリゴスが手を引っ込めた。
彼の不可解な行動にナズナが首を傾げる。
「エリゴス…?」
『この中にある記憶は、ある意味全ての始まりと言ってもいい。
…心して見ろ。そして小娘、ユーフェイシンジュン』
魔界の王に呼び掛けられて、大地の精霊の娘と水妖族の神がナズナの中から現れる。
『な、何ですの…?』
警戒を露わにする彼女らを気にすることなく、魔界の王は自身の部下に命令するような口調で言った。
『ナズナがこの中にある記憶を取り戻す時、必ず側にいろ』
『…貴殿に言われなくとも』
水妖族の神の返事にエリゴスが苦笑を零す。そして彼はジンフーに向き直り、槍の切っ先を喉元に突き付けた。
咄嗟のことにジンフーが戸惑い、成り行きを見守っていたリュウシンが眉を吊り上げてナズナを睨み付ける。
「オマエ…まさか…!」
『違う。最後のカードを我が主に返してやってくれ。
あのカードは、我が主の家族みたいな存在が宿るものだからな』
ジンフーが断れば力ずくでも取り戻すつもりなのだろう。そこまでして取り戻したいカードにジンフーは興味を抱いたが、仕方なく懐を探り神威の宿るカードをナズナに手渡す。
そんな獣人族の貴公子から視線を逸らしながら、ソルーシュは宙を仰ぐ。
「正確に申し上げますと、記憶を取り戻して真実を知ったナズナ姫に会うのが怖い、ですかね」
「…何故だ?」
ジェラルドの質問にソルーシュは宙を仰ぐのを止め、焦点の合わない瞳に獣人族の貴公子の姿を映す。
いつも以上に険しい表情をしたジェラルドが見据えていた。その鋭い視線に喉元まで出ていた言葉が引っ込みそうになるが、全てを告白したいという気持ちが強かったために吐き出す。
「全部、オレのせいだから」
*
ジンフーがエリゴスのカードをすんなり返してくれたおかげで、久しぶりに堂々と彼を召喚することが出来た。
エリゴスは腕を組み、高い位置からナズナ達を見下ろしている。
『久しいな、ナズナ。この場で俺を呼んだということは、欠片の在り処が知りたいのだな?』
白々しい挨拶に苦笑いしながらナズナが頷く。
「はい。ここは複雑な場所のようで少々分かりにくいのです」
『だろうな。だからこそ隠すのに最適だと考えたのだが…』
特にここに隠した記憶の欠片は、と付け加えてのろのろと魔界の王が動き出す。
彼は魔法使いが使う鍋の前に立つと、鍋の中に手を突っ込みまさぐった。途中得体の知れない音が聞こえてきたが、その音はすぐに収まった。
振り返った彼の手の平には、淡い翡翠の光を放つ記憶の欠片が載せられている。
それを受け取ろうとしたところで、一旦エリゴスが手を引っ込めた。
彼の不可解な行動にナズナが首を傾げる。
「エリゴス…?」
『この中にある記憶は、ある意味全ての始まりと言ってもいい。
…心して見ろ。そして小娘、ユーフェイシンジュン』
魔界の王に呼び掛けられて、大地の精霊の娘と水妖族の神がナズナの中から現れる。
『な、何ですの…?』
警戒を露わにする彼女らを気にすることなく、魔界の王は自身の部下に命令するような口調で言った。
『ナズナがこの中にある記憶を取り戻す時、必ず側にいろ』
『…貴殿に言われなくとも』
水妖族の神の返事にエリゴスが苦笑を零す。そして彼はジンフーに向き直り、槍の切っ先を喉元に突き付けた。
咄嗟のことにジンフーが戸惑い、成り行きを見守っていたリュウシンが眉を吊り上げてナズナを睨み付ける。
「オマエ…まさか…!」
『違う。最後のカードを我が主に返してやってくれ。
あのカードは、我が主の家族みたいな存在が宿るものだからな』
ジンフーが断れば力ずくでも取り戻すつもりなのだろう。そこまでして取り戻したいカードにジンフーは興味を抱いたが、仕方なく懐を探り神威の宿るカードをナズナに手渡す。