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文字数 1,039文字
「なるほどな…ジェラルド閣下辺りから一言あれば後押しになるし、いい口実にもなる。ヴィル、頼んだぜ。
必要ならナズナ姫の名前を出してみな。貴族達の噂で聞いたんだが、ミッターマイヤー将軍はどうやらジェラルド閣下とナズナ姫を婚約させたいらしい」
「え?!」
寝耳に水な話にその場にいた執事以外の面々が驚く。この執事が驚かないということは、それほど有名な噂なのだろう。
噂の中心人物であるナズナ本人よりも何故かヴィルヘルムが食い付いてきた。
「何なのその噂?大体ナズナにまだそういう話は早いよ。ミッターマイヤー将軍は何をお考えなのか…。
それにそんな話、叔父上が許すはずがないよ」
幼馴染の騎士の剣幕にソルーシュが引き気味になる。だが、この際使える手は使っておいた方がいいだろう。あのミッターマイヤー家なら尚更だ。
何故か熱くなっているヴィルヘルムを宥めようとソルーシュはどうにか説得を試みる。
「ヴィル、お前の気持ちはすげぇ分かるさ。オレもナズナ姫にはまだそういうのは早いと思う。だけどあくまでもただの噂だ。
それによーく考えろ。ナズナ姫が何故ミッターマイヤー家に行きたがっているかを、な」
「う…」
苦々しい表情のまま、ヴィルヘルムはマントを翻し外へ出て行く。パウラも困った顔をしながら彼の後に続こうとして一旦戻ってきた。
「ヴィルのフォローは任せといてよ。吉報を持ってくるから、二人はゆっくり休んでて」
「あ、ありがとうございます。どうかよろしくお願いしますね」
おずおずと見上げてくるナズナに笑顔を返し、パウラは小走りで後を追い掛けた。残されたナズナとソルーシュは客間に赴き、ソファに座って一息吐く。
「…何だかすごい噂ですね」
「ナズナ姫の舞踏会の話が出た時から貴族の間で広がっていましたよ。
前々からミッターマイヤー将軍はビスマルク公をご自身の傘下に引き入れたがっていましたからね」
自分の傘下に引き入れるためにミッターマイヤー将軍は実の息子すらも手駒として利用するのだ。ある意味貴族らしいといえば貴族らしいが。
ふと、ナズナはそのミッターマイヤー家の令息の一人であるジェラルドのことを思い返す。
彼と正式な場で会い、言葉を交わしたのはあの舞踏会の夜だった。
ダンスの時に相手が殺到し過ぎて困っていたナズナを仏頂面で助けてくれたのはジェラルドだ。その上さりげなくナズナを彼女の席まで送り届けてくれたのだ。口調こそはぶっきらぼうだったが。
ナズナにはそれが新鮮に感じられたし、不器用ながらも彼の優しさを感じた。
必要ならナズナ姫の名前を出してみな。貴族達の噂で聞いたんだが、ミッターマイヤー将軍はどうやらジェラルド閣下とナズナ姫を婚約させたいらしい」
「え?!」
寝耳に水な話にその場にいた執事以外の面々が驚く。この執事が驚かないということは、それほど有名な噂なのだろう。
噂の中心人物であるナズナ本人よりも何故かヴィルヘルムが食い付いてきた。
「何なのその噂?大体ナズナにまだそういう話は早いよ。ミッターマイヤー将軍は何をお考えなのか…。
それにそんな話、叔父上が許すはずがないよ」
幼馴染の騎士の剣幕にソルーシュが引き気味になる。だが、この際使える手は使っておいた方がいいだろう。あのミッターマイヤー家なら尚更だ。
何故か熱くなっているヴィルヘルムを宥めようとソルーシュはどうにか説得を試みる。
「ヴィル、お前の気持ちはすげぇ分かるさ。オレもナズナ姫にはまだそういうのは早いと思う。だけどあくまでもただの噂だ。
それによーく考えろ。ナズナ姫が何故ミッターマイヤー家に行きたがっているかを、な」
「う…」
苦々しい表情のまま、ヴィルヘルムはマントを翻し外へ出て行く。パウラも困った顔をしながら彼の後に続こうとして一旦戻ってきた。
「ヴィルのフォローは任せといてよ。吉報を持ってくるから、二人はゆっくり休んでて」
「あ、ありがとうございます。どうかよろしくお願いしますね」
おずおずと見上げてくるナズナに笑顔を返し、パウラは小走りで後を追い掛けた。残されたナズナとソルーシュは客間に赴き、ソファに座って一息吐く。
「…何だかすごい噂ですね」
「ナズナ姫の舞踏会の話が出た時から貴族の間で広がっていましたよ。
前々からミッターマイヤー将軍はビスマルク公をご自身の傘下に引き入れたがっていましたからね」
自分の傘下に引き入れるためにミッターマイヤー将軍は実の息子すらも手駒として利用するのだ。ある意味貴族らしいといえば貴族らしいが。
ふと、ナズナはそのミッターマイヤー家の令息の一人であるジェラルドのことを思い返す。
彼と正式な場で会い、言葉を交わしたのはあの舞踏会の夜だった。
ダンスの時に相手が殺到し過ぎて困っていたナズナを仏頂面で助けてくれたのはジェラルドだ。その上さりげなくナズナを彼女の席まで送り届けてくれたのだ。口調こそはぶっきらぼうだったが。
ナズナにはそれが新鮮に感じられたし、不器用ながらも彼の優しさを感じた。