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文字数 1,030文字

樹の根と地面の間から覗く光る鉱石が灯りの役割を果たしているおかげで、歩くのに不自由しない。
鉱石の光によって、より一層神秘的な雰囲気を漂わせている。自分の住んでいたところではあまり見られない光景に、ナズナの口から感嘆の溜息が漏れた。

「綺麗…」

「ありがと。この鉱石は魔力と光を溜める性質があってね。
 最近はこの鉱石を使って、他の種族向けに装飾品を作ったりしているわ。後で見せてあげる」

 樹の内部を進みながらリフィーが得意げに言った。
階段を何度か昇っていることから察するに、上へと向かっているようだ。
大地の精霊というからにはてっきり地下にいることを好むかと思っていたのだが。

 それは置いといて、この樹の内部は外から見た以上に広く、通路が複雑に入り組んでいる。リフィーの案内が無ければ、方向音痴のナズナは数分も経たないうちに迷ってしまうだろう。
何度目かの階段を昇ったところで、ようやく大地の精霊ガイアがいると思われる部屋の前へと辿り着く。扉の向こうからは、ナズナのよく知る精霊の娘の魔力の気配と、それを上回る魔力の気配を感じた。
リフィーに促されて、ナズナも後に続き部屋に入る。

『よくぞ参ったな、我が娘の契約者よ』

 招かれた部屋は神殿の内部というよりも、少し広めの書斎のような部屋だった。
樫の木で出来た厳めしいデザインの机が部屋の中央に鎮座しており、部屋の壁はたくさんの書物が納められている本棚で埋まっている。
その机で書類にサインをしている女性が、来訪者であるナズナの姿を認め、手を止めて出迎えた。
女性の傍らにはメルセデスが神妙な表情をして佇んでいる。

 女性は机の上で手を組み、まじまじとナズナを観察していた。
慌ててナズナはワンピースの裾を摘まんで一礼する。そしてちらりと上目遣いでメルセデスとリフィーの母である大地の精霊ガイアの姿を盗み見る。

 人でないことを証明するかのような白すぎる肌を持ち、娘達と同じ茶色の長い髪がきっちりと固く結われている。横髪から覗く耳はメルセデスと同じで、ふさふさとした獣のそれを思わせるようなものだ。
丸いレンズの眼鏡を掛けており、レンズ越しに見える瞳の色は金に近い黄色で、この樹の葉の色を思い出させる。
年齢はおそらく永い時を生きているため相当なものだろうが、容姿はメルセデスと同じくらいの若い女性のものだ。姉妹と言っても十分通じる容姿である。
服装は座っているため詳細は分からないが、フード付きのローブを纏っていることだけは辛うじて分かった。
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