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文字数 1,038文字

いずれもナズナ達の元にはないものだ。一旦妖精と精霊の村へ戻って大地の精霊ガイアに知恵を借りるか悩んだところで、ナズナはふと閃く。

 フェアデルプ灯台で案内をしてくれた、エリゴスの配下である政務補佐官のことを。

大地の精霊の娘と短剣の精霊を還し、魔界の王を召喚する。
 魔界の王エリゴスは半分うとうとし片手に羽ペンを握ったままの姿で現れた。どうやら書類作成の途中だったらしい。
申し訳ないと思いながらも、ナズナがエリゴスに話し掛けた。

「あ、あの…エリゴス…」

『ああ…ナズナか。海中旅行は楽しかったか?』

海中旅行?と疑問に思いながらもナズナは頷く。

「はい、とても貴重な体験でした。
  海の中にあんな立派で不思議な施設があったなんて…エリゴスは一体どこであの施設の場所を知ったのですか?」

話が段々逸れて行きそうなことを危惧したリュウシンがナズナを押し退けて前へ進み出る。
主を押し退けて自分の前に立つ水妖族の青年に魔界の王はあからさまに顔を顰めた。

「どうでもいい話は後だ。コイツ…いや、シェンジャが何故今貴殿を呼んだのか分かっているだろう?」

個人的にあの施設の詳細が知りたかったジンフーとしては少々落胆した。
相変わらずこの元同僚は故郷のことしか頭に無い。
 魔界の王はしばらくリュウシンを睨み付けていたが、やがて溜息をついて指を鳴らした。
エリゴスの横に銀の冠を載せた鴉の姿が実体を伴って現れる。
 魔界の王の政務補佐官ストラだ。
以前現れた時とは違い、頭に載せられている銀の冠が少々煤けている上に傷がいくつかついている。
ストラはナズナの元へ降り立つと、挨拶するかのように目を細めた。

『僕を指名してくれて嬉しいっス!道案内なら僕にお任せを!』

 そう言って彼は元気良くナズナの周りを飛び回った。この政務補佐官はナズナを何となく気に入っている。自身の主であるエリゴスが気に掛けている存在だからというのも一つの理由だ。それに何より、彼女の持つ記憶の欠片の輝きが忘れられない。
 彼にとってキラキラ光るものや珍しい宝石と鉱石は正義なのだ。
はしゃぐ部下に苦笑いしながら、エリゴスは毅然とした態度で部下に命じる。

『ではストラ、ナズナを頼んだぞ』

『あれ?エリゴス様どっか行くんスか?』

エリゴスの部下を召喚し、そしてそのままの状態に留めておくには必ず魔界の王を召喚したままにしておかなければならないはずだ。
部下であるストラと直接契約を結んでいれば、エリゴスを介せずともよいのだが。
 政務補佐官の質問に魔界の王は頷いた。
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