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文字数 1,025文字

 何事かと振り返ると、ナズナの腰に太い触手のようなものが巻き付いている。
太い触手のようなものはナズナを捕らえているものだけではないようで、それはリュウシン達に狙いを定めていた。
ナズナの身体越しに触手の持ち主の目と思われる部位が見える。それは金に近い黄色で、この闇の中でかなり目立つ。触手の持ち主の身体は岩と岩の間にあるようで、全貌は窺い知れない。
 舌打ちしてリュウシンは水を蹴り、捕らえられたナズナの元へ泳ぐ。
捕らえた獲物を取り返されないよう狙いを定めていた触手達が動き出し、リュウシンの進行を阻む。
ナズナとユーフェイの同調に時間制限があるので、持久戦には持ち込めない。

 ジンフーも短剣を取り出して水を蹴った。それに合わせてリュウシンも再び動き出す。
捕らえられたナズナはというと、幸いなことに両腕は自由だったため神威の宿る短剣を引き抜き、腰に巻きついている触手に突き立てた。
思ったよりすんなり突き刺さったかと思えば、予想外に弾力がありただ押し込んだだけに過ぎなかった。突き立てたつもりの刃は弾き返され、己の非力さを痛感させられる。
 ならばメルセデスを召喚すべきかと考えたものの、今はユーフェイに魔力を同調させることが第一だ。彼と同調することは神威と同調する時以上に集中力を要する。
もしここで彼との同調が途切れたら一巻の終わりだ。
かといってこのまま指を咥えて見ているだけではいられない。自分に出来ることをしなければ。
ナズナは同じ個所に何度も短剣を突き立て、脱出を試みる。

 一方、リュウシンとジンフーもナズナを捕らえている得体の知れない相手に苦戦を強いられていた。
水の中での戦いはリュウシン達水妖族にとって有利ではあるが、それは相手にとっても同じこと。倒せずとも、せめてナズナを解放しなければ。

 リュウシンは二の腕辺りから覆っている長い袖を脱ぎ捨て、機械の両腕を露わにした。そして左手首の辺りから切れ味の鋭い刃を出すと、真っ直ぐナズナの元へ向かう。
ナズナの元へ泳いでいく途中、当然別の触手が襲い掛かってくるが持ち前の俊敏さで合間をうまくすり抜けやり過ごす。
一心不乱に短剣を触手に突き立てているナズナの元へ辿り着くと、リュウシンも左手首の刃を彼女の腰に巻きついている触手に斬り付けた。
非力なナズナの一撃とは違い、彼の斬撃は触手の一部を軽く抉り取る。彼の剛力に何故かナズナが戦慄した。
しかし彼のおかげで少し拘束が緩んだので、その隙を突いてどうにか脱出出来た。
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