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文字数 1,036文字

 エリゴスを筆頭に、魔族達は魔力や魔法の知識、そして扱いに関してこのレガシリアの四大精霊達よりも長けている。いわば魔法のエキスパートだ。
その点に関してはメルセデスも認めている。あの魔界の王ですらナズナからユーフェイを引き離せなかったとなると、彼に掛かっている呪いはかなり強力で複雑なものなのだろう。

 だからユーフェイは自身の魔力と魔界の王を従える程の魔力を持った自分と、その命が必要なのだとナズナは悟った。
それにしても、エリゴスがユーフェイの呪いを解こうとしたのはいつ頃の話なのだろうか。
緊迫しつつある空気の中、今の今まで静観していた大地の精霊ガイアがようやく口を挟む。

『とある図書館へ赴けば、解決する手立てがあるやもしれんぞ』

 まるで今日の夕飯について話すような、大変呑気なものだった。
そのおかげで三人は何だか拍子抜けする。
娘であるメルセデスだけは母のマイペースな性格をよく知っているので、そこまでではなかったが。
 ガイアとしては娘の意向を汲んでの発言だったのだが、毎回微妙なタイミングで飛び出してしまう。一応自覚はあるものの、直すに直せない。
何となく従兄の騎士を思い出し、ナズナは少し彼を懐かしく思った。
ガイアの発言に娘が物凄い勢いで食い付く。

『お母様、それ本当ですの?!』

娘の勢いに押されることなく、ガイアはずり落ちそうになる眼鏡を直しながらのんびりとした口調で答えた。

『ああ。確かエドニス大陸南東にあるホロウ島近海にあると、妖精達が噂していたよ』

 何でも、何百年か前にレイジリアの魔法学院を破門され、追放された魔法使いが建てたらしい。そこには人間の世界では扱いが禁止されている禁断魔法について記されている書物だけでなく、ありとあらゆる知識が眠っている。図書館として利用しただけでなく、そこで新たな魔法の研究も行われていたようだ。
そこでならユーフェイを引き離す魔法が見つかるかもしれない。
母の話にメルセデスの緑の瞳が希望の光を受けてきらきらと輝き、小さな主に向き直った。

『ナズナ様!さっそくそちらへ参りましょう!』

すかさずユーフェイが却下する。

『行かぬ!どうせ行ったところで無駄なことだ!
 その書庫に収まっている書物などどうせ役に立たぬ知識しかない!』

行く前から決めつけるユーフェイを無視し、大地の精霊は母に尋ねた。

『それでお母様、その知識が眠る図書館の詳しい場所を教えて下さる?』

『うむ。ホロウ島付近の海底だ』

事もなげに放たれた母の言葉にメルセデスの動きが止まる。
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