もう少し、僕に時間を
文字数 560文字
挫いた足を引きずって、僕は歩いた。西から指す日差しが、僕の身体を長い影にして歩道に映し出す。軍関係の車が何台も、そのそばを通り過ぎていった。
爆発事故の処理に向かう車両なのだろう。後を追えば、必ず岬さんのもとへたどりつけるはずだ。いや、ある意味では、たどりつけないほうがいい。
遠くに高く立ち上る煙が見える。そこには事故現場があるのだろう。どうか、別の場所に無事でいてほしい。
電話とメールを両方試してみる。
この電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が……。
Your Mails are Undelivered.
やっぱり、歩くしかない。だけど、そっちへ歩くにつれて、僕の影はだんだんと薄くなってくる。
先へ先へと気持ちは焦るが、足はちっとも前に進まない。
このままでは、岬さんに会えないままで僕は死んでしまう。昨日の言葉を取り消せないまま、本当の独りぼっちにしてしまう。
向坂は、思ったよりいいヤツだ。岬さんのことをよく分かっている。将来性もある。