僕とヨウコの小さな闘い

文字数 427文字

代わりにバイトやるって言ったじゃない!
だからお前には無理だって言ってんだろ!

 張り切るヨウコをなだめながら、毎日のバイトに励んだ。

 何があろうと、僕の代わりをさせるわけにはいかない。やらせたら最後、何か起こらないわけがなかった。

 それは即、僕の高校生活に直結する。ひいては、人生まで左右してしまうのだ。

なんとか日曜日のシフト空けてもらえませんでしょうか?
 いつもよりせっせと働きながら店長や他の店員に働きかけたのだ。

 無理は承知の上だった。だが、ここで日曜を空けさせてもらえるのだったら、1ケ月タダ働きして、食事はまかないの油揚げ醤油混ぜご飯だけで凌いでもいいとさえ思っていたのだ。

 だが残念ながら、答えはみんな同じだった。

ダメ。
ダメ。
いかん。
 前日まで頑張ってみたが、努力は全て徒労に終わった。無念の思いを押し殺しながらの報告を聞いたヨウコが勝利の歓声を上げたのは言うまでもない。
ほ~っほっほっほ、じゃあ、お互い頑張ろうね、お兄ちゃん!
しかたない……。
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登場人物紹介

浅賀 才(あさが さい)

 立身出世のために田舎から出てきて下宿生活を送る高校2年生。上昇志向は強いが、出身地へのコンプレックスも比例して大きい。親には強気な態度で出るが、自分にも多大な負担を敢えて掛ける真摯な面がある。

由良 岬(ゆら みさき)

 家紋を頼りに自らのルーツを探す才色兼備の高校2年生女子。孤独を内に秘めた立ち居振る舞いには年上の男性を引きつける知的な大人の魅力があるが、本人は自覚していない。

妖狐のヨウコ

 100年を生きて人間に変身できるようになった狐。旺盛な好奇心に任せて出てきた都会で暮らすために、才の部屋で厄介になっている。自由に姿を消したり変身したりできるが、大好物の油揚げを目の前にすると、一切の自制心を失って術が使えなくなる。

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