コイツが引っ掻き回す彼女との語らい
文字数 442文字
花のすっかり散った桜の葉影が、机に長く伸びている。それがどこから来たのか探しているかのように、このおせっかいな娘は皮肉交じりに言った。
岬さんには聞こえないように囁いたつもりだったが、机の真向かいに座られていては無理だった。
そう言う顔は笑っている。冗談と取ってもらえたのは、僕が隣の小娘にそれほど腹を立てていたわけではないからだ。
こいつと一緒に暮らしはじめたのは、やっぱり去年の秋からだ。半年ほど何かにつけて僕を小バカにしてきたが、その物言いにもいい加減、慣れてきたのかもしれない。
その同居人の名は、ヨウコという。どんな漢字を当てるのかは知らない。もしかすると、そんなものはないのかもしれないが。
慌てて言い訳する僕を、岬さんはすんなり許してくれた。どうやら彼女は、僕を「ときどき異次元へトリップして独り言を口にする不思議少年」というキャラで捉えてくれているらしい。