学資が消えてなくなるとき
文字数 473文字
夕闇の中で聞こえたヨウコの声で、呼吸が落ち着いた。岬さんを終えなかった理由が「妹」だと気付いたとき、すすり泣きが聞こえた。
僕は黙って、だいたいの見当をつけた辺りにあった頭を撫でた。
わあっと泣き出したのを、俺はしゃがみ込んでなだめた。しゃくりあげるのを抑えようと、背中に手を回したところで、何かふさふさした温かいものに触った。
尻尾だったらしい。またかと思ったが、興奮していたヨウコは、それでかえって正気に戻った。泣きやんだのにほっとして、撫でるつもりだった背中を叩いた。
からかうような口調も元通りだ。僕は薄闇の中を歩きだした。
そう混ぜっ返すヨウコは嬉しそうだ。
岬さんにはまだ、肝心なことを言っていない。話をそらすために、僕は別の意味で肝心なことを聞いた。