心の声の正体
文字数 423文字
この図書館で彼女と話ができるようになったこと自体が、僕の人生最大の飛躍だったと言っても過言ではない。
きっかけは、去年の秋頃だった。ちょうど、こんな閉館時間になって自動ドアから出ようとしたとき、何かに蹴っつまずいて、先に出ようとしていた岬の背中にぶつかったのである。
そのときに本を拾ったときも、聞こえたのだった。
あのとき、誰が言ったかは、もう分かっている。放課後になると必ず僕の隣に座っている、この辺ではみかけないセーラー服姿の、小柄な女の子だ。おまけに、首から絵馬を下げた異様な格好をしている。
初めて岬に声を掛けることができた僕を、こいつは上から目線でコキ下ろしたものだ。
どうも、あのとき僕が転んだのも、こいつのせいだったらしい。