男の別れ
文字数 313文字
はっとした僕たちが何も言えないでいるうちに、向坂さんは自分の恋にきっちりけじめをつけた。 僕も男として、最後の一言を受け止めた。
苦笑する向坂さんと僕とを見比べていた岬さんは、やがて、ほっとしたような、それでいて納得できていないような、曖昧な表情を浮かべた。
そこで口にしたのは、しどろもどろの一言だった。何かその場を取り繕うかのようで、岬さんらしくなかった。
向坂さんは思い切ったように、視線を交わす僕たちから、くるっと背を向けた。
さっと手を上げて挨拶しただけで、あっという間にその場から駆け去った。