土壇場の逆転
文字数 411文字
冷ややかな返事が聞こえたが、それっきり、僕はふて寝を邪魔されることはなかった。
だが、数時間後、僕は岬さんからのメールで叩き起こされることになる。
いつも丁寧な文法通りの、模範的な日本語で話す岬さんは、そんな言葉遣いをしない人である。世俗の言葉がもともと基本語彙の中にないのだろうと思っていたが、案外、そうでもないようだった。
僕の前では、言葉を選び選び話していたのだろう。向坂の前ではどうだか知らないが、とにかくそれだけに、慌てようが余計に感じられた。
僕が真っ先に考えたことを裏付けるかのように、ヨウコは文面を見もしないで意味深な発言をした。ところが、続くメールはすぐに届いて、100年生きた妖狐をうろたえさせた。
しばしの沈黙の後、ヨウコは呻くようにつぶやいた。