戦争が足下で牙を剥く

文字数 296文字

きゃ!
うお……。
 突然、ヨウコが僕の胸にすがりついてきた。慌てて抱え込んで、勢いよく開いた襖の前から隠した僕だったが、もう尻尾は見えなかった。うまく姿を消したらしい。
えらいことになったねえ、今日、学校休みでよかった。
な、何があったの?
 何があろうと、まず、この場から引っ込んでくれればそれでよかった。だが、それでは済まないことが起こっていたのだった。
学校の辺にミサイル基地あるだろ。
ああ、あるけど。
 だから、休校になったのだ。関係の車両で、道路はごった返しているだろう。今日は、出歩かないほうが無難なのだが、それはオフクロの報告で裏付けられた。
あの辺、その爆発で吹っ飛んだんだって。
え……?
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登場人物紹介

浅賀 才(あさが さい)

 立身出世のために田舎から出てきて下宿生活を送る高校2年生。上昇志向は強いが、出身地へのコンプレックスも比例して大きい。親には強気な態度で出るが、自分にも多大な負担を敢えて掛ける真摯な面がある。

由良 岬(ゆら みさき)

 家紋を頼りに自らのルーツを探す才色兼備の高校2年生女子。孤独を内に秘めた立ち居振る舞いには年上の男性を引きつける知的な大人の魅力があるが、本人は自覚していない。

妖狐のヨウコ

 100年を生きて人間に変身できるようになった狐。旺盛な好奇心に任せて出てきた都会で暮らすために、才の部屋で厄介になっている。自由に姿を消したり変身したりできるが、大好物の油揚げを目の前にすると、一切の自制心を失って術が使えなくなる。

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